呪法師のススメ 〜呪に偏見を抱くのは勝手だが、俺をそこらの素人と一緒にされては困る〜

春風駘蕩

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第三章:労働編

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「は?」


 ギルバートに告げられた言葉に、思わずそんな声を出してしまったが……おかしくはないはずだ。ないよな?

 俺、今まで一遍たりとも奴隷を欲しがった事なんかないぞ?
 今までず~っと一人で生きてきた男だぞ?
 何なら大勢の人間に疎まれ嫌われ憎まれ続けてきた男だぞ?


 それを今更……何で赤の他人を『買って』まで一緒にいなきゃならんのだ?


「何の理由があって……」
「無論、打算ありきです。彼女達は我が紹介の宣伝に使わせていただくつもりです」


 ……宣伝?


「どういう事だ」
「彼女達は知っての通り、異形に変じてしまっていた為、長らく買い手がつかない商品でした。特異な性癖の持ち主ならともかく、ごく普通の人間に求められる事はありません」


 まぁ、そうだろうな。
 あんな狂的マニアック な趣味の産物、誰が買いたいと思うよ。

 ……で?


「我々商人の間では、彼女達の事は結構な噂になっておりまして……容姿を持ち主の好みに弄った奴隷として、です」


 ……なるほど、わかってきたぞ、お前の狙い。


「派手に弄ってから戻したこいつらを他の商人やら買い手の前に晒して、興味を持たせようってんだな? ーーーそんでついでに俺を紹介して、奴隷の特注カスタマイズを売り出す気だな?」
「ご明察です」


 なるほど、なるほどなるほど。

 奴隷の容姿はそれぞれ。見目のいい奴もいれば不細工もいる。肉付きのいい奴もいれば貧相な奴もいる。そんで女もいれば男もいる。……さらには大人しい奴もいれば気の強い奴もいる。

 売りに出された商品に好みの奴がいる可能性は高くはなく、何度も足を運ぶ必要がある。そこまでしても手に入らない事もありえる。
 さらには購入希望者が被った場合、競りになって掻っ攫われる可能性もある。

 巡り合いというものは時の運に頼るしかなく、毎回悔しがる客は一定数存在していると、以前ギルバートに教えられた事がある。


 だが……俺の〝力〟ならある程度、客の希望に融通を効かせられる。
 好みの顔がないなら弄り、身体つきも弄り、何ならその気になれば性格も性別も弄れる。完全な特注品オーダーメイドを提供できる。

 今の所、そこまでできる人間は俺以外に存在しないから大した数を扱えない……だが、容姿も性格も希望通りの奴隷が手に入るのなら、欲しがる奴は確実に現れるだろう。

 ギルバートの考えは、そういう事なんだろう。




 ……いや、引くわ。どん引きだわ。
 なんつー悍ましい商売に手ぇ出そうとしてんだこいつは。

 流石の俺も言葉を無くすわ、そんな商売。別にやれと言われりゃやるけど、誰が好き好んで人体改造なんかするか。


「あんまり派手にやると、国が五月蝿いんじゃねぇの?」
「問題ありません。奴隷の扱いにおいて国は介入出来ませんから……犯罪奴隷に対しては特に」
「……そういやそうか」


 ーーーこの国の法律では、奴隷は奴隷になった時点であらゆる人権を剥奪され、物と同じ扱いになる。
 犯罪奴隷に対しては非常に顕著で、事故で死のうが殺されようが、持ち主が責められる事はない。

 この辺りにお国の仄暗さを感じるが、ぶっちゃけ言って関わると無茶苦茶面倒臭そうだから何も言わない。言いたくない。
 別に敵に回しても困りはしないが、面倒な事態はなるべく避けたいからな。


 そのうち革命でも起きて変わりそうだがな。
 犯罪奴隷って言ったって、真っ当な裁判で地位を剥奪された奴もいるけど、冤罪で捕まってそのまま堕ちてきた奴もいる。
 国の目が届かない場所で、悪人の契約によって何もかもを奪われた奴だっているのだ。

 そんな理不尽な目に遭わされた奴が、ずっと黙ったままとは限らない。いつか溜め込んだ怒りと憎しみが爆発する可能性もある。
 まぁ、俺には関係ないがな。


 ただ、この国にいる他の奴隷商人に比べて、ギルバートの店の商品の扱いはだいぶ優しいんだよな……奴隷によっちゃ、こいつを神様みたいに見てる奴もいるくらいだし。
 よほどの馬鹿じゃない限り、俺やこいつが被害を被る事態にはならんだろう……多分。


「まぁ、やってやってもいいけどさ……とりあえず連中と交渉だけさせてくれるか。反抗的な奴を連れてっても不快なだけだから」
「どうぞ、お好きなだけ」


 ギルバートに許しを得てから、俺は檻を開けて貰って中に入る。
 すると中にいる三人娘、元乳でか女が他の二人を抱き寄せながら、俺に怯えを孕む潤んだ瞳を向けてくる。


 ……駄目だな、話しかける前から面倒になってきた。
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