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第三章:労働編
016:臍曲
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「……神様……?」
……不本意だが、遺憾だが、全く納得していないが。
ギルバートの思惑通りに購入する前に、本人達の意思を確認しておこうと思う。
一人、元乳でか女が変な事を呟いていた気がするが、取り敢えずは気にせずに三人の前に進み出て、しゃがんで視線を合わせる。
「あー、会話は聞こえていたと思うが……」
俺はまず、なるべく餓鬼共の怯えを誘わないようにしながら話しかけてみる。
向こうからしちゃ、俺は得体の知れない謎の男だしな。体を弄り直したとはいえ、俺に対する不信感は確実にある事だろう。
まずは落ち着かせようと思った……の、だが。
「だ…! 誰も、あんたに助けてほしいなんて思ってないんだからね!? お、お礼なんて言わないんだからね!!」
獣人擬きになっていた餓鬼が、目を吊り上げながら俺にそう吠えてくる。
目は潤み、我が身を抱いてぶるぶる震えて、俺から必死に距離を取ろうとする……まぁ、普通そうなるわな。
「べ、別にあんたに助けてもらわなくてもよかったんだから! あんたになんて……あんたになんて…!」
「…? おねえちゃん、なんでおこってるの?」
「お、怒ってないし! こ、こいつが助けたと思ってるのが癪なだけだし! 自分で何とか出来たんだから、余計なお世話だって言いたいだけだし!!」
興奮してきたのか、顔を真っ赤にしてまで怒鳴りつけてきやがる。
何か知らんが眼がぐるぐる渦を巻いてるように見えるし、若干呂律が回らなくなってきてるみたいだし。
……そこまで、俺に助けられたのが嫌だったって事なんだろうか。
「―――分かった、じゃあすぐに戻そう」
「…へ?」
そういう事なら仕方がない。
男嫌いなのか、俺自体が生理的に無理だったのか、どういう理由かは知らんがそこまで嫌なら全部なかった事にしよう。
俺は獣人もどきだった餓鬼の頭を掴み、顔に手を翳す。
そのまま呪ってやろうとしたのだが……この餓鬼、何故か抵抗しやがる。お前の手が邪魔で呪えないだろうが。
「へ!? いや、ちょっ……な、何すんのよ!?」
「自分で何とか出来たのなら、お節介な真似をして悪かった。今から殺気の獣人の顔に戻すから、そこから自分で元に戻し直してくれ。責任もって弄ってやる」
「は!? いや、やだっ……やめてぇえええ!!」
幸い、さっきの獣人の顔がどんな風だったかはよく覚えている。
何なら毛の本数が何本だったかもわかるし、完全に元に戻してやろう。趣味の悪い造形だったから正直言うと嫌だがな。
だというのにこいつ、必死の形相で抗ってくる……嫌だといったのは自分だろうに。
「ごめっ、ごめんなさい! ごめんなさい! 謝る、謝るから! 元に戻してくれて嬉しいです! もうあんな姿になるのは嫌です! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
……本気で弄られたくないようだな。
さっきと言っている事が真逆だな、面倒臭い餓鬼だ。
とか思っていたら、それまでぼーっと俺を見つめていた元乳でか女が俺の手にしがみついて……いや、止めようとしてきた。
「……おやめください、神様。この子は素直に言葉を発せない性分なのです。ご無礼は私が謝罪します。お許しくださいませ」
……さっき聞いたこいつの声は幻聴じゃなかったようだな。
こっちの煩い方は勿論、こいつも中々面倒臭そうだ。
「その神様というのをやめろ、寒気がする。……わかったからそんな目で見るな、鬱陶しい」
そんな潤んだ目で見られると、落ち着かなくなるんだよ……俺はこいつの要望通りにしようとしただけなのに、なんでそんな無言で咎められねばならんのだ。
なんかその……荒ぶる神を鎮める巫女みたいな態度を取るのはやめてくれんか。
向こうにいる幼女まで似たような視線を向けてきそうだろうが。
「……このままでいいならそう言え、わからん」
「っ…! わ、悪かったわよ……」
俺が手を離すと、獣人もどきだった餓鬼はそっぽを向きながら、元乳でか女の後ろに隠れる。
何だ、こいつの言動は。嫌なのか嫌じゃないのか、全くはっきりしないぞ。
元乳でか女は何だ、素直に言葉を発せないとか言っていたが、いまひとつ要領を得ない性格だな……【獣人化】の件がなくても、買い手には苦労したんじゃないのか?
俺が渋い顔になっていると、元乳でか女の奴、その場で深々と平伏し始めた。
「慈悲深きお言葉に感謝いたします、神様。この子は今や私の家族も同然、
「……なぁ、おい。こいつのこの喋り方はどうにかならんのか?」
「……あたしに言われても困るわよ、そんな事」
俺が扱いに困って、獣人もどきだった餓鬼に聞いてみるが、奴も困り顔で目を逸らしやがった。
放置するなよ、この手の輩は面倒臭ぇんだから。
……まぁ、いいか。
こいつの事は放っておこう。
「さて、本題に入ろうか。…まぁ、さっきもでかい声で話していたからわかるだろうが、あー―――」
「……そこから先は、必要ございません」
こいつらの処遇をどうしたものか、そんでそれをどう伝えたものか。
悩む俺に、元乳でか女が話しかけてくる。
……正直もう、こいつとあんまり関わりたくなくなってんだけどな。
そう思ってた俺に、奴は真剣な眼差しと共に切り出してきた。
「―――神様、どうか私達を貴方様の旅路に同行させていただけませんか」
……不本意だが、遺憾だが、全く納得していないが。
ギルバートの思惑通りに購入する前に、本人達の意思を確認しておこうと思う。
一人、元乳でか女が変な事を呟いていた気がするが、取り敢えずは気にせずに三人の前に進み出て、しゃがんで視線を合わせる。
「あー、会話は聞こえていたと思うが……」
俺はまず、なるべく餓鬼共の怯えを誘わないようにしながら話しかけてみる。
向こうからしちゃ、俺は得体の知れない謎の男だしな。体を弄り直したとはいえ、俺に対する不信感は確実にある事だろう。
まずは落ち着かせようと思った……の、だが。
「だ…! 誰も、あんたに助けてほしいなんて思ってないんだからね!? お、お礼なんて言わないんだからね!!」
獣人擬きになっていた餓鬼が、目を吊り上げながら俺にそう吠えてくる。
目は潤み、我が身を抱いてぶるぶる震えて、俺から必死に距離を取ろうとする……まぁ、普通そうなるわな。
「べ、別にあんたに助けてもらわなくてもよかったんだから! あんたになんて……あんたになんて…!」
「…? おねえちゃん、なんでおこってるの?」
「お、怒ってないし! こ、こいつが助けたと思ってるのが癪なだけだし! 自分で何とか出来たんだから、余計なお世話だって言いたいだけだし!!」
興奮してきたのか、顔を真っ赤にしてまで怒鳴りつけてきやがる。
何か知らんが眼がぐるぐる渦を巻いてるように見えるし、若干呂律が回らなくなってきてるみたいだし。
……そこまで、俺に助けられたのが嫌だったって事なんだろうか。
「―――分かった、じゃあすぐに戻そう」
「…へ?」
そういう事なら仕方がない。
男嫌いなのか、俺自体が生理的に無理だったのか、どういう理由かは知らんがそこまで嫌なら全部なかった事にしよう。
俺は獣人もどきだった餓鬼の頭を掴み、顔に手を翳す。
そのまま呪ってやろうとしたのだが……この餓鬼、何故か抵抗しやがる。お前の手が邪魔で呪えないだろうが。
「へ!? いや、ちょっ……な、何すんのよ!?」
「自分で何とか出来たのなら、お節介な真似をして悪かった。今から殺気の獣人の顔に戻すから、そこから自分で元に戻し直してくれ。責任もって弄ってやる」
「は!? いや、やだっ……やめてぇえええ!!」
幸い、さっきの獣人の顔がどんな風だったかはよく覚えている。
何なら毛の本数が何本だったかもわかるし、完全に元に戻してやろう。趣味の悪い造形だったから正直言うと嫌だがな。
だというのにこいつ、必死の形相で抗ってくる……嫌だといったのは自分だろうに。
「ごめっ、ごめんなさい! ごめんなさい! 謝る、謝るから! 元に戻してくれて嬉しいです! もうあんな姿になるのは嫌です! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
……本気で弄られたくないようだな。
さっきと言っている事が真逆だな、面倒臭い餓鬼だ。
とか思っていたら、それまでぼーっと俺を見つめていた元乳でか女が俺の手にしがみついて……いや、止めようとしてきた。
「……おやめください、神様。この子は素直に言葉を発せない性分なのです。ご無礼は私が謝罪します。お許しくださいませ」
……さっき聞いたこいつの声は幻聴じゃなかったようだな。
こっちの煩い方は勿論、こいつも中々面倒臭そうだ。
「その神様というのをやめろ、寒気がする。……わかったからそんな目で見るな、鬱陶しい」
そんな潤んだ目で見られると、落ち着かなくなるんだよ……俺はこいつの要望通りにしようとしただけなのに、なんでそんな無言で咎められねばならんのだ。
なんかその……荒ぶる神を鎮める巫女みたいな態度を取るのはやめてくれんか。
向こうにいる幼女まで似たような視線を向けてきそうだろうが。
「……このままでいいならそう言え、わからん」
「っ…! わ、悪かったわよ……」
俺が手を離すと、獣人もどきだった餓鬼はそっぽを向きながら、元乳でか女の後ろに隠れる。
何だ、こいつの言動は。嫌なのか嫌じゃないのか、全くはっきりしないぞ。
元乳でか女は何だ、素直に言葉を発せないとか言っていたが、いまひとつ要領を得ない性格だな……【獣人化】の件がなくても、買い手には苦労したんじゃないのか?
俺が渋い顔になっていると、元乳でか女の奴、その場で深々と平伏し始めた。
「慈悲深きお言葉に感謝いたします、神様。この子は今や私の家族も同然、
「……なぁ、おい。こいつのこの喋り方はどうにかならんのか?」
「……あたしに言われても困るわよ、そんな事」
俺が扱いに困って、獣人もどきだった餓鬼に聞いてみるが、奴も困り顔で目を逸らしやがった。
放置するなよ、この手の輩は面倒臭ぇんだから。
……まぁ、いいか。
こいつの事は放っておこう。
「さて、本題に入ろうか。…まぁ、さっきもでかい声で話していたからわかるだろうが、あー―――」
「……そこから先は、必要ございません」
こいつらの処遇をどうしたものか、そんでそれをどう伝えたものか。
悩む俺に、元乳でか女が話しかけてくる。
……正直もう、こいつとあんまり関わりたくなくなってんだけどな。
そう思ってた俺に、奴は真剣な眼差しと共に切り出してきた。
「―――神様、どうか私達を貴方様の旅路に同行させていただけませんか」
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