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第三章:労働編
017:交渉
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俺は思わず、元乳でか女を見下ろしながら顔中をくしゃくしゃにして黙り込んだ。
……いや、俺とギルバートの話を要約すりゃそういう事なんだろうけど、言い回しのせいでだいぶ内容が変わって聞こえるぞ。
何だ、俺は英雄か何かか?
旅路だの同行だの、大昔の勇者とその仲間じゃないんだから。
「……間違っちゃいないがその言い方はやめろ。吐き気がする」
「! ご気分が優れないのですか!? すぐにお休みください、私が看病をいたしますから!!」
「……腹が立つからやめろって言ってんだよ」
面倒臭い、本当に面倒臭い。
この手の重症患者の相手は本気で面倒臭い。
獣人もどきだった餓鬼も呆れてんじゃねぇか。
「あー、話が進まねぇからお前に代表して答えてもらうぞ。お前の方がましっぽいからな……お前ら、俺に買われる気はあるか」
「……さっき、あそこにいる人と話してた事と関係あるの?」
「聞こえてなかったのか? 結構でかい声で話してたはずなんだが……」
「……聞こえてても、私馬鹿になってたからわかんないわよ」
ああ……中途半端に獣にされてた所為で知能も下がってたのか。聞こえちゃいたが、理解はできなかったんだな。
「あそこにいる奴の差し金でな、新しい事業の為にお前らを目立たせて自分のところの商品を買わせようって魂胆なんだそうだ。そんで、お前らを連れ回す役として俺に頼んできたってわけ……どうする? 嫌なら断ってもいいし、頷くなら衣食住は保証するぞ」
「……そんなの」
俺が尋ねると、元獣人もどきの餓鬼は考え込み出した。
なるべく早く決めて欲しいんだが、無理強いは俺の性分じゃない……好きなだけ悩ませてやろう。
ただこいつ、何でか知らんがさっきからずっと顔が赤くなってるんだよな……俺の事をちらちら落ち着かない様子で見てるし。
年頃の餓鬼の考えはよくわからん。
なかなか口を開かない餓鬼の前で、俺が頬杖をつきながら待っていた時だった。
「わたし、かみさまといっしょにいたい」
幼女の餓鬼がそう言って、俺の手に縋り付いてきた。
真剣な眼差しを、じっと揺るがす事なく俺に向け、決して話すまいとするように俺の指を握りしめてくる。
それは別にいいんだが……早速変な奴の影響を受けちまってるな。
「その決断を拒絶する気はないが……神様と呼ぶのはやめろ。別の呼び方にしろ」
「えー? …じゃあ、にぃ」
……うん、神様よりはましか。
というか、奴隷に兄貴呼びされるのもどうなんだろうな。
反抗的なのは面倒だし、怯えられても鬱陶しいし、好意的な方が邪魔臭くなくていいとは思うが……馴れ馴れしすぎるのもどうかと思うしな。
まぁ、あとあと矯正できればそれでいいか。
「ーーーちょ、ちょっと待ちなさいよ! あ、あたしだって行くわよ! 行きます! 行かせてください!!」
俺が幼女と話していると、黙っていた獣人もどきの餓鬼が慌てた様子で俺の前に割り込んでくる。わざわざ幼女を押しのけてまで俺の顔を覗き込んでくるあたり、相当必死に見えた。
随分悩んでいたようだが、解決したのか?
どっちでもいいが、途中でやっぱり嫌だとか抜かしやがったら遠慮なく捨てていくからな。
「言っておくが、俺は神でもなきゃ偉い奴でもねぇ。不気味な〝天職〟持ちだと蔑まれ、嫌われている厄介者だ。そんな俺と一緒にいて幸福な人生が送れるとは思うなよ」
ここまで言っときゃ、気が変わる奴もいるか……と思ったんだが、全員目を逸らす事なく頷きやがった。
もうちょい考えろよ……と思ったが、考えてみりゃ奴隷が買われる事は本望か。最悪殺処分とかもありえるし、俺でも無意味に殺す事ぁねぇから、ましな主人にはなると判断したんだろう。
……しゃぁねぇ。
面倒だが、全員連れて行ってやるか。
「はぁ。んじゃ、契約成立だ……ところでお前ら、名は?」
「シェスカと申します、神様」
「……アリアよ」
「ルル! です!」
乳でか女がシェスカ、獣人もどきがアリア、幼女がルル。
なるほどね……いつまで覚えているかは知らんが、とりあえず頭に入れておいた。
「あの……神様のお名前は、何と仰るのでしょうか?」
すると、乳でか……じゃねぇや、シェスカが不思議そうに首を傾げながら尋ねてくる。
あぁ、そういや俺から名乗っていなかったか。
悪い悪い。人に名乗らせる前に自分が名乗れって餓鬼の頃から言われてんのにな、うっかりしていた。
「俺はラグナーーー〈呪法師〉だ。呼び方はお前らで勝手に決めろ」
こうして俺は、三人の奴隷を手に入れたのだった。
……いや、俺とギルバートの話を要約すりゃそういう事なんだろうけど、言い回しのせいでだいぶ内容が変わって聞こえるぞ。
何だ、俺は英雄か何かか?
旅路だの同行だの、大昔の勇者とその仲間じゃないんだから。
「……間違っちゃいないがその言い方はやめろ。吐き気がする」
「! ご気分が優れないのですか!? すぐにお休みください、私が看病をいたしますから!!」
「……腹が立つからやめろって言ってんだよ」
面倒臭い、本当に面倒臭い。
この手の重症患者の相手は本気で面倒臭い。
獣人もどきだった餓鬼も呆れてんじゃねぇか。
「あー、話が進まねぇからお前に代表して答えてもらうぞ。お前の方がましっぽいからな……お前ら、俺に買われる気はあるか」
「……さっき、あそこにいる人と話してた事と関係あるの?」
「聞こえてなかったのか? 結構でかい声で話してたはずなんだが……」
「……聞こえてても、私馬鹿になってたからわかんないわよ」
ああ……中途半端に獣にされてた所為で知能も下がってたのか。聞こえちゃいたが、理解はできなかったんだな。
「あそこにいる奴の差し金でな、新しい事業の為にお前らを目立たせて自分のところの商品を買わせようって魂胆なんだそうだ。そんで、お前らを連れ回す役として俺に頼んできたってわけ……どうする? 嫌なら断ってもいいし、頷くなら衣食住は保証するぞ」
「……そんなの」
俺が尋ねると、元獣人もどきの餓鬼は考え込み出した。
なるべく早く決めて欲しいんだが、無理強いは俺の性分じゃない……好きなだけ悩ませてやろう。
ただこいつ、何でか知らんがさっきからずっと顔が赤くなってるんだよな……俺の事をちらちら落ち着かない様子で見てるし。
年頃の餓鬼の考えはよくわからん。
なかなか口を開かない餓鬼の前で、俺が頬杖をつきながら待っていた時だった。
「わたし、かみさまといっしょにいたい」
幼女の餓鬼がそう言って、俺の手に縋り付いてきた。
真剣な眼差しを、じっと揺るがす事なく俺に向け、決して話すまいとするように俺の指を握りしめてくる。
それは別にいいんだが……早速変な奴の影響を受けちまってるな。
「その決断を拒絶する気はないが……神様と呼ぶのはやめろ。別の呼び方にしろ」
「えー? …じゃあ、にぃ」
……うん、神様よりはましか。
というか、奴隷に兄貴呼びされるのもどうなんだろうな。
反抗的なのは面倒だし、怯えられても鬱陶しいし、好意的な方が邪魔臭くなくていいとは思うが……馴れ馴れしすぎるのもどうかと思うしな。
まぁ、あとあと矯正できればそれでいいか。
「ーーーちょ、ちょっと待ちなさいよ! あ、あたしだって行くわよ! 行きます! 行かせてください!!」
俺が幼女と話していると、黙っていた獣人もどきの餓鬼が慌てた様子で俺の前に割り込んでくる。わざわざ幼女を押しのけてまで俺の顔を覗き込んでくるあたり、相当必死に見えた。
随分悩んでいたようだが、解決したのか?
どっちでもいいが、途中でやっぱり嫌だとか抜かしやがったら遠慮なく捨てていくからな。
「言っておくが、俺は神でもなきゃ偉い奴でもねぇ。不気味な〝天職〟持ちだと蔑まれ、嫌われている厄介者だ。そんな俺と一緒にいて幸福な人生が送れるとは思うなよ」
ここまで言っときゃ、気が変わる奴もいるか……と思ったんだが、全員目を逸らす事なく頷きやがった。
もうちょい考えろよ……と思ったが、考えてみりゃ奴隷が買われる事は本望か。最悪殺処分とかもありえるし、俺でも無意味に殺す事ぁねぇから、ましな主人にはなると判断したんだろう。
……しゃぁねぇ。
面倒だが、全員連れて行ってやるか。
「はぁ。んじゃ、契約成立だ……ところでお前ら、名は?」
「シェスカと申します、神様」
「……アリアよ」
「ルル! です!」
乳でか女がシェスカ、獣人もどきがアリア、幼女がルル。
なるほどね……いつまで覚えているかは知らんが、とりあえず頭に入れておいた。
「あの……神様のお名前は、何と仰るのでしょうか?」
すると、乳でか……じゃねぇや、シェスカが不思議そうに首を傾げながら尋ねてくる。
あぁ、そういや俺から名乗っていなかったか。
悪い悪い。人に名乗らせる前に自分が名乗れって餓鬼の頃から言われてんのにな、うっかりしていた。
「俺はラグナーーー〈呪法師〉だ。呼び方はお前らで勝手に決めろ」
こうして俺は、三人の奴隷を手に入れたのだった。
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