呪法師のススメ 〜呪に偏見を抱くのは勝手だが、俺をそこらの素人と一緒にされては困る〜

春風駘蕩

文字の大きさ
20 / 49
第三章:労働編

018:契約

しおりを挟む
 じゃらじゃらじゃら、と。
 俺は手持ちの銀貨を取り出して、ギルバートの差し出した掌の上に乗せる。

 今更ながら頼まれてものを買うってのはどうかと思うが……本来の相場より遥かに安いし、まぁ気にしなくてもだろう。


「銀貨三枚……確かに受け取りました。では、どうぞよろしくお願いいたします」
「……ちゃんと売り上げの一部は還元しろよ」
「勿論でございます。あなた様を敵に回すほど、私は愚かではございませんから」


 ……どうだかな。
 こいつ、その気になればっていうか、条件さえ揃えばごく普通に俺を裏切りそうな雰囲気があるんだよな。

 俺にはその辺の思惑を察する能力とかねぇから、気付かずに騙されたままでいそうだ……まぁ、死ぬまで真実を知らないままなら騙しも裏切りも関係ないだろうけど。


 俺は俺を自分で納得させると、改めて購入した餓鬼共の方を見やる。

 ……外に出たらまず格好をどうにかするか。いや、痩せてるのが目立つから飯を先にするべきか?
 どっちでもいいが、先に確認するべきだな。


「んじゃ、契約内容について確認してもらおうか」

 一つ、主人の命令は絶対のものとする。
 二つ、主人に対する嘘の発言を禁ずる。
 三つ、主人の許可なく一定範囲から離れる事を禁ずる。
 四つ、主人の許可なく契約破棄、もしくはそれに関わる行為を行う事を禁ずる。
 五つ、主人の収入品に許可なく触れる事を禁ずる。
 六つ、主人が許可なく奴隷のものに触れる事を禁ずる。
 七つ、主人は奴隷の衣食住を最低限保証する事を約束する。

 ……この中の一つでも破ったら、罰則が下るからな」


 一応、さっき考えた七つの制約を教えて餓鬼共に確認する。
 ぶっちゃけ俺もここまで決めるの面倒臭いんだが、きちんと誓わせておかないと人間はすぐに裏切るからな……用心するに越した事はない。


「はい、承知しました神様」
「……わ、わかったわよ」
「わかった!」


 ……大丈夫だよな、破らないよな、特に最後の幼女。
 年齢相応に阿呆っぽいから忘れそうなんだが、大丈夫だよな。

 いろいろ不安だが、契約は契約だ。破ったら容赦無く罰を下すぞ。
 ……一応、死なない程度に抑えてはおくが。全身が痺れて動けなくなるか、痛みが走る程度て勘弁しておくか。

 餓鬼が泣き叫ぶ様とか、見てて胸糞が悪くなるし。


「はぁ……じゃあ、契約を結ぶぞ。ーーー************」


 それぞれ餓鬼共の胸に手を当てて、俺は祝詞を唱えて力を発揮する。

 まずは元乳でか女ことシェスカ。襤褸布の隙間の胸の谷間、素肌に手を当てて、【呪術】を刻み込む。
 俺の力の色である青紫色の光が迸り、骨が浮き出た薄い肌に幾何学的な模様を描いていく。……痛々しいから後でたらふく食わせておこう。

 刻まれた模様は、十字に細かな植物のような模様が施された、刺青のような紋だ。
 皮膚を変色させているだけではなく、魂魄にまで力を浸透させ存在の全てに楔を打ち込む枷……俺が人間相手によく使う術だ。


 そういや、これを前に施していたアレスの阿呆は何やってんだろうな……野垂れ死んでいてもおかしくはないな、あいつの実力なら。
 俺に逆恨みしていなきゃいいが……どうするかね。


 ……さて、今回は三秒で終わったか。久々だからか、ちょいと腕が鈍ったかな。
 我ながら醜悪な模様ができたものだ。

 シェスカも呆然と、自分に刻まれた奴隷の証を見下ろして……ん? 絶望してる風……には見えないな?


「ふわぁ……綺麗な模様」
「あ? 何言ってんだお前は、馬鹿か」


 奴隷紋が綺麗って……本気か、この餓鬼は。
 ある意味、人間以下の存在である事を示す忌まわしい印だぞ。それを綺麗って……何言ってんだよ本当に。


「こんな素敵な証をくださって、ありがとうございます……大切にいたしますね、神様」
「……何を言うとるんだ、お前は」


 本当に面倒臭い奴……よし、後で矯正しよう。
 他二人は絶対違うぞ。面倒だから一斉にかけるが、どうせ同時に泣き喚くに決まってらぁ。

 面倒なものを引き受けちまったなぁ……と思うつつ、アリアとルルにも術を施す。


「へ、へぇ~……も、もっとおどろおどろしいものかと思ってたのに、綺麗な模様じゃない。まぁ……悪くないんじゃない?」
「わたし、これすき~」


 感性のおかしい奴、他にも二人いやがった。
 何だこいつら、どういう頭の構造をしてるんだ?

 ……まぁ、いい。
 ここで泣かれたり喚かれたりしないなら、楽でいい。欲しくもなかった奴隷が従順じゃないとか、鬱陶しいにもほどがあるからな。


「さすがラグナ様ですな。ものの数秒で誓約させてしまうとは」
「そのお世辞は聞き飽きた……見慣れてんだろ、お前なら」
「何度見ても素晴らしい出来だという意味です。このような事ができる方は、ラグナ様の他にはおりますまい」


 ……まぁ、そんな奴がいたら俺の面目は丸潰れだから、いないと信じたいがね。

 とにかくこれで契約は完了した。
 もうしばらくここに用はあるまい……さっさと行こう。


「それじゃあ、俺はこれで。次は来月あたりに来る」
「ーーーまたのご利用をお待ちしております、ラグナ様」
「……行くぞ、お前ら」


 丁寧に頭を下げるギルバートの姿を横目に、俺は出口に向かって歩き出す。すると、三人娘も俺の後についてくる。




 はぁ……仕事とはいえ、他人と一緒に暮らさにゃならんというのは、心底億劫だな。
 こちとら人の何倍の時間も一人でいるんだ。今更連れが増えても後で悲しくな……じゃねぇや、面倒臭いだけだ。


 今回の連れは何日何ヶ月……何年続くかねぇ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...