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第三章:労働編
019:裏町
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ギルバートの店兼屋敷を後にした俺……と不本意な同行人である三人娘は、そのまま街の南側へと向かっていた。
さっきも言ったように、痩せっぽちななこいつらには栄養を取らせておかなけりゃならんからだ。
年齢的には三人の中で一番年上で十五歳のシェスカでさえ、栄養不足で十歳程度にしか見えん。肉も足りていないから枝みたいな手足してるしな。
全員ばらばらの歳なのに、だいたい同じ体格ってどういう事だよ、まったく。
「ね、ねぇ。今からどこに行くの……ですか?」
「敬語はいらん。無理にへりくだった態度は苛立つだけだ、好きなように喋れ」
「え、あ、わ、わかりまし……じゃない。わかったわよ」
……アリアの奴、妙にびくびくしてるな。
最初のつんつんした刺々しい態度はどこへ行ったのやら……ちらちら俺を見上げて様子を伺っている。
あれか? さっきもう一度顔を弄ろうとした事で怯えてるのか?
面倒臭いな……餓鬼と接するのはこれだから嫌いなんだ。
「そ、それで、どこに行くの? ……も、もしかして宿? ま、まだ始めるには早いんじゃ……」
「あ? 始めるって何をだ?」
「こ、こんなところで言わせないでよ!!」
言わせないでよって……あぁ、そういう。
こいつら全員、もともとそういう目的で購入された上で、それぞれの主人の超個人的な趣味の産物に弄られていたんだったか。
……俺、そういう欲求は全部枯れちまってんだよなぁ。
「安心しろ、お前らを抱く気はさらさらねぇから。そういう目的があったとしても、今のお前らを抱く事はまずねぇよ」
「はぁ!? なんですって!?」
「アリアちゃん……落ち着いて」
俺がアリアの不安を否定すると、何故だか奴は目を吊り上げて声を荒げてきた。
シェスカに羽交い締めにされながら、ふーっ、と猫のように髪の毛を逆立てて……って、獣っぽさが抜けてないな。術が不完全だったか?
何だ、嫌だったからあらかじめ確認してきたわけじゃないのか? やはりわからん。
「……にい、わたし、おなかすいた」
アリアが騒ぎ、シェスカが困り顔になり、どうしたものかと内心で頭を抱えていた俺に、不意にルルが袖を引っ張って催促をしてくる。
図太い奴だな……まぁ思った事をはっきり言う奴は嫌いじゃない。元々の目的もそれだしな。
「わかった、飯だな。今から向かう場所にそれなりに美味い飯を出す店がある……さっさと行くぞ、ぐずぐずするなお前ら」
「!? 誰の所為で怒ってると……!」
「アリアちゃん、いい加減にしてください」
「ふぎゃっ!?」
未だ喚いてるアリアにそう告げると、シェスカが奴の首根っこを掴んで引き摺ってきた。
言動は厄介な奴だが、きちんと命令は聞くようならまぁ大丈夫か……後で性格を弄るかどうかは検討しておくが。
さて、そうこうしているうちに……俺にとって懐かしい街並みが見え始めた。
「っ……!?」
「ふぇ……」
「あ……あの、ここは……?」
さっきのギルバートの屋敷がある街よりも、ずっと歪な汚らしい家が立ち並ぶ地域。
辺りを歩くのは襤褸をまとった痩せた住人達。
風呂なんて贅沢品に入れるはずがないから、鼻に刺さる臭いがそこら中から漂ってくる、劣悪な環境。
他人の財を巡って、あちこちで喧嘩の声が絶えない人間の掃き溜め。
王都に住む人間からすれば汚点、三人娘にとっても眉をひそめる光景で……しかし俺からすれば居心地のいい場所。
ーーー『暗黒街』と呼ばれる地帯へと到着する。
「……ん? ラグナ?」
俺の背中に隠れる三人娘を鬱陶しく思いながら、俺が狭い街の道を進んでいた時。
道端で屯していたやちらが、俺を見て顔色を変えてくる。
「ラグナ!?」
「おい、ラグナだぞ!!」
「ラグナが帰ってきたってのは本当かい!?」
一人があげた声は波のように辺りの人間に広がり、あっという間に数十数百人の視線が俺に集中する。
ざっと向けられる目と声に、三人娘が怯えて俺の背にしがみついた瞬間。
街の連中は声をあげ、一気に俺の元に殺到してきてーーー。
「おかえり、ラグナ!」
「待ってたぞ!」
「裏町の王! 俺達の救世主!!」
そう、喝采をあげて俺の周りに集まってくる。
道端で寝ていた爺達も、路地裏で遊んでいた餓鬼共も、旦那をしばいていたおばちゃんも、喧嘩をしていた兄ちゃん達も、男を誘っていた姉ちゃん達も。
みんな一斉に、笑顔を浮かべて俺の周りに駆け寄ってくる。
「こいつめ! 全然帰ってこなくて心配したぞ!」
「アレスのバカはどうした!? お前がいなくて大丈夫なのか、あのひょろ助は!」
「にいちゃん、またあそんでくれよ!」
喧々囂々と騒がしい連中に、俺の陰に隠れていた連中はぽかんと呆けた顔になるのを他所に。
俺は溜息をこぼしてから、にやりと連中に笑い返してやった。
「……ただいま」
さっきも言ったように、痩せっぽちななこいつらには栄養を取らせておかなけりゃならんからだ。
年齢的には三人の中で一番年上で十五歳のシェスカでさえ、栄養不足で十歳程度にしか見えん。肉も足りていないから枝みたいな手足してるしな。
全員ばらばらの歳なのに、だいたい同じ体格ってどういう事だよ、まったく。
「ね、ねぇ。今からどこに行くの……ですか?」
「敬語はいらん。無理にへりくだった態度は苛立つだけだ、好きなように喋れ」
「え、あ、わ、わかりまし……じゃない。わかったわよ」
……アリアの奴、妙にびくびくしてるな。
最初のつんつんした刺々しい態度はどこへ行ったのやら……ちらちら俺を見上げて様子を伺っている。
あれか? さっきもう一度顔を弄ろうとした事で怯えてるのか?
面倒臭いな……餓鬼と接するのはこれだから嫌いなんだ。
「そ、それで、どこに行くの? ……も、もしかして宿? ま、まだ始めるには早いんじゃ……」
「あ? 始めるって何をだ?」
「こ、こんなところで言わせないでよ!!」
言わせないでよって……あぁ、そういう。
こいつら全員、もともとそういう目的で購入された上で、それぞれの主人の超個人的な趣味の産物に弄られていたんだったか。
……俺、そういう欲求は全部枯れちまってんだよなぁ。
「安心しろ、お前らを抱く気はさらさらねぇから。そういう目的があったとしても、今のお前らを抱く事はまずねぇよ」
「はぁ!? なんですって!?」
「アリアちゃん……落ち着いて」
俺がアリアの不安を否定すると、何故だか奴は目を吊り上げて声を荒げてきた。
シェスカに羽交い締めにされながら、ふーっ、と猫のように髪の毛を逆立てて……って、獣っぽさが抜けてないな。術が不完全だったか?
何だ、嫌だったからあらかじめ確認してきたわけじゃないのか? やはりわからん。
「……にい、わたし、おなかすいた」
アリアが騒ぎ、シェスカが困り顔になり、どうしたものかと内心で頭を抱えていた俺に、不意にルルが袖を引っ張って催促をしてくる。
図太い奴だな……まぁ思った事をはっきり言う奴は嫌いじゃない。元々の目的もそれだしな。
「わかった、飯だな。今から向かう場所にそれなりに美味い飯を出す店がある……さっさと行くぞ、ぐずぐずするなお前ら」
「!? 誰の所為で怒ってると……!」
「アリアちゃん、いい加減にしてください」
「ふぎゃっ!?」
未だ喚いてるアリアにそう告げると、シェスカが奴の首根っこを掴んで引き摺ってきた。
言動は厄介な奴だが、きちんと命令は聞くようならまぁ大丈夫か……後で性格を弄るかどうかは検討しておくが。
さて、そうこうしているうちに……俺にとって懐かしい街並みが見え始めた。
「っ……!?」
「ふぇ……」
「あ……あの、ここは……?」
さっきのギルバートの屋敷がある街よりも、ずっと歪な汚らしい家が立ち並ぶ地域。
辺りを歩くのは襤褸をまとった痩せた住人達。
風呂なんて贅沢品に入れるはずがないから、鼻に刺さる臭いがそこら中から漂ってくる、劣悪な環境。
他人の財を巡って、あちこちで喧嘩の声が絶えない人間の掃き溜め。
王都に住む人間からすれば汚点、三人娘にとっても眉をひそめる光景で……しかし俺からすれば居心地のいい場所。
ーーー『暗黒街』と呼ばれる地帯へと到着する。
「……ん? ラグナ?」
俺の背中に隠れる三人娘を鬱陶しく思いながら、俺が狭い街の道を進んでいた時。
道端で屯していたやちらが、俺を見て顔色を変えてくる。
「ラグナ!?」
「おい、ラグナだぞ!!」
「ラグナが帰ってきたってのは本当かい!?」
一人があげた声は波のように辺りの人間に広がり、あっという間に数十数百人の視線が俺に集中する。
ざっと向けられる目と声に、三人娘が怯えて俺の背にしがみついた瞬間。
街の連中は声をあげ、一気に俺の元に殺到してきてーーー。
「おかえり、ラグナ!」
「待ってたぞ!」
「裏町の王! 俺達の救世主!!」
そう、喝采をあげて俺の周りに集まってくる。
道端で寝ていた爺達も、路地裏で遊んでいた餓鬼共も、旦那をしばいていたおばちゃんも、喧嘩をしていた兄ちゃん達も、男を誘っていた姉ちゃん達も。
みんな一斉に、笑顔を浮かべて俺の周りに駆け寄ってくる。
「こいつめ! 全然帰ってこなくて心配したぞ!」
「アレスのバカはどうした!? お前がいなくて大丈夫なのか、あのひょろ助は!」
「にいちゃん、またあそんでくれよ!」
喧々囂々と騒がしい連中に、俺の陰に隠れていた連中はぽかんと呆けた顔になるのを他所に。
俺は溜息をこぼしてから、にやりと連中に笑い返してやった。
「……ただいま」
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