呪法師のススメ 〜呪に偏見を抱くのは勝手だが、俺をそこらの素人と一緒にされては困る〜

春風駘蕩

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第一章:追放編

006-②:後悔(受付嬢視点)

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「間に合うか!? まだこの街にいるよな!? どこにいるか今すぐに特定しろ!!」
「は…? そ、そう言われましても……」
「やれ! 今すぐに! できないなんて聞きたかねぇ!!」


 困惑したままの部下達に命じ、組合の外に走らせてから、ガゼフはその場を頭を抱えながら行ったり来たりする。
 怒りを持て余し、獣のような唸り声を漏らしていた彼は、しばらくすると再びエリカを睨みつけ、歯を食い縛って怒号を発した。


「あの男がどれだけ重要な能力を持っているか、知らんとは言わせんぞ!! 追い出さなければ組合の汚点になる? 逆だ!! あいつが居なきゃどれだけの損害が出ると思ってんだ!!」
「……! 何を馬鹿な事を……〈呪術師〉などという汚らわしい〝異能〟持ち、どうして受け入れなければならないのですか!? あれはこの世の害悪! 排除すべき悪の化身なのですよ!?」


 エリカは自身が叱られている理由がまるでわからず、猛然と抗議の声をあげる。
 自分の昇進が第一の目的である事は確かだが、それは結果的に組合の益になる事であり、感謝されこそすれ、怒鳴られる謂れなどないはずだった。

 そんなエリカの反論に、ガゼフは顔をくしゃくしゃに歪めると、本気で頭が痛そうに嘆きをあらわにした。


「……お前みたいな馬鹿をどうして雇っちまったんだ」
「なっ…! 言わせておけば! 〝天職〟も持たない平民が偉そうに! 私を誰だと思っているのですか!!」


 頭に血が昇ったエリカは、明らかに自分を見下している上司に感情のままに言葉を吐き散らす。
 もはや自分が何を言っているのかもわからないほどに怒り狂った彼女は、神に愛されなかった者に対する侮蔑の視線を向け。


 直後、再び振るわれた上司の拳により、今度は顔面を凹まされながら勢いよく倒れ込んだのだった。



「屑だろうがよ……!!!」



 肩で息をし、目を血走らせてガゼフは目の前の女を……鼻血を吹いて気を失っている図に乗った愚者を見下ろす。

 能力は高かった、少なくとも今後の組合の運営に必要な人間ではあった。
 上昇志向、というか立場に対する欲が強い傾向にはあったが、それを有効活用すれば十分な戦力になると踏んでいた。

 自分を嫌っている事をわかっていたし、先輩の受付嬢達を目の敵にして、いつか蹴落としてやると目で語っていたのにも気付いていた。
 有能な冒険者や上司に媚びを売る態度から同僚達に嫌われていたが、業務自体に問題はない。力のある者を能力に関しては高い評価を下し、認めていた。

 舵取りさえすれば、大きく役に立つ駒になると考えていた。

 だが、蓋を開けてみればこれだ。
 高い能力を全て嫌いな人間を排除する事に使用し、己の欲のみを優先させる愚者。それがこの女だった。

 遅すぎた、最も重要な情報について教えるのが。
 測りかねた、己の欲を叶えるためにどこまで狂った行動を起こすか。


 沈黙し、ぴくぴくと痙攣するだけとなったエリカにぺっと唾を吐きかけてから、ガゼフは周りで怯えている別の部下達に振り向いた。


「おい!! 俺はこれからラグナを捜しに出る!! お前らはその糞餓鬼を縛ってどこかに捨てて来い!! 二度とうちの敷居を跨がせないよう痛めつけておけ!!」
「は……はい!!」


 言うが早いか、ガゼフは巨体に似合わぬ俊敏さで組合を飛び出し、走っていった。

 すれ違う通行人たちがぎょっと慄くほどに恐ろしい形相で街を睥睨し、しかし内心は必死に祈りながら、馬鹿な部下の勝手な思惑で追い出された男を探し続けていた。


「頼む……頼むよラグナ様よぉ…! お願いだからこの町を……この国を捨てるとか考えないでおくれよ…! あんたを怒らせたとあっちゃ、うちは終わりだ……全てがうちの、この国の敵になっちまう!!」


 脳裏に浮かぶ、最低最悪の未来。
 それを決して現実にしてなるものかと、ガゼフは歯茎から血が滲むほどに歯を食い縛り、街の中を駆け抜けていった。








 ―――この町を、国を、世界を、彼が呪わない事だけを請いながら。


ような男を、誰がブチ切れさせたいってんだよ、くそったれがぁ!!!」
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