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45.コーネリアスの問い
「本当にそれだけなのですか、父上」
はっきり言おうとしたアメリアより先にコーネリアスが口を開く。
「何が言いたい」
エドモンドが問えば、コーネリアスは真っ直ぐにエドモンドを見つめたまま続ける。
「もっと、私について思ったことや、感じたことはないのですか。聞きたいことはないのですか」
コーネリアスは気丈な態度でいるが、声はかすかに震えている。きっと怖いのだ、エドモンドに話を拒まれることが。アメリアは助け舟を出したくてたまらなかった。ここでエドモンドに問いかけて畳み掛ければ、きっとエドモンドも自分のことを話すに違いない。だが、それは今勇気を出して立ち向かっているコーネリアスを侮っていることにもつながる。
いくら甘やかしたり、甘えさせたりしていても、コーネリアス自身の意思を踏み躙ることはアメリアはしたくない。だから、視線を送って応援するだけに留めている。
(がんばれ、コーネリアス様……!)
コーネリアスを思い、信じてアメリアは口を引き結ぶ。
「父上」
「……お前は」
コーネリアスに迫られ、エドモンドがやっと口を開く。
「お前は、似過ぎているのだ……あれに」
「あれ、とは母上のことですか」
「あの白い髪、青い瞳、眼差しの名残……なにもかも似ているのだ、ウィルマに」
エドモンドは絞り出すように口にする。だというのに、視線はコーネリアスに向けられず俯いている。
「私が母上似だったということは乳母から聞き及んでおります。ですが、それがなぜ関係あるのですか。父上にとって母上は大切な人であったことは窺えます。ですが、私は私です。コーネリアスという一人の人間です」
コーネリアスはぎゅっと拳を握りしめ訴える。だが、エドモンドの眼差しがコーネリアスを捉えることはなかった。
「父上……!」
「ええい、みなまで言うな!」
エドモンドは声を荒げると、そのまま席を立って御用邸に引き返してしまった。
その背を呆然と見つめるコーネリアスに、アメリアは我慢できずに駆け寄った。
「コーネリアス様!」
「アメリア……いや、私は大丈夫だ。それより、茶会を台無しにしてしまってすまない」
「そんなことありません、コーネリアス様は立派に頑張られました、どうか気を落とさないで……」
「だが、私は……」
うなだれるコーネリアスにアメリアが寄り添っていると、アレクシスが申し訳なさそうに頭を下げる。
「ごめん、コーネリアス、アメリアさん。僕が話を聞いてもらえるかもなんて言ったばっかりに」
「兄上のせいではありません。どうか顔をお上げください。私が答えを急ぎすたせいでもあるのです」
重苦しくなった場で、そっとアレクシスが言った。
「たぶん。たぶん父様は、迷っているのだと思う」
「どういうことでしょうか、殿下」
意味ありげな言葉にアメリアが尋ねてみると、アレクシスは弱々しく笑って話しだした。
「コーネリアスから、僕たちの母様のことは聞いてる?」
「ええ。コーネリアス様を産んで早くに亡くなったと」
「母は白い髪に美しい青色の瞳を持っていた。ちょうど、コーネリアスのようにね」
アメリアはコーネリアスを見やる。アレクシスが言うに、絹のように滑らかな触り心地の髪も、見つめられる時湖の底のように深い青の瞳も、コーネリアスのそれはみな母譲りなのだという。
「そして、母様は人一倍体が弱かった。僕一人を産んだだけでも医師からは驚かれたくらいにはね。でも母は、二人目を身籠った。一人産むだけで限界が来ていたのに、それでも母様は産もうとした」
コーネリアスの表情が暗くなる。暗に自分のせいで母が命を落としたと言われているような気になったのだろう。だが、きっとそんなことはないとアメリアはコーネリアスを励ますようにその手をぎゅっと握った。
「コーネリアスが生まれたことを、僕も、母様も、もちろん父様も喜んだ。みんなを喜ばせ、望まれて生まれてきたんだ。だから、コーネリアス。君が生まれたせいで、なんて決して考えないで。君は僕にとって大切な弟で、父様にとっても宝物なんだ」
「兄上……」
コーネリアスはアレクシスの訴えに、静かに頷いた。
はっきり言おうとしたアメリアより先にコーネリアスが口を開く。
「何が言いたい」
エドモンドが問えば、コーネリアスは真っ直ぐにエドモンドを見つめたまま続ける。
「もっと、私について思ったことや、感じたことはないのですか。聞きたいことはないのですか」
コーネリアスは気丈な態度でいるが、声はかすかに震えている。きっと怖いのだ、エドモンドに話を拒まれることが。アメリアは助け舟を出したくてたまらなかった。ここでエドモンドに問いかけて畳み掛ければ、きっとエドモンドも自分のことを話すに違いない。だが、それは今勇気を出して立ち向かっているコーネリアスを侮っていることにもつながる。
いくら甘やかしたり、甘えさせたりしていても、コーネリアス自身の意思を踏み躙ることはアメリアはしたくない。だから、視線を送って応援するだけに留めている。
(がんばれ、コーネリアス様……!)
コーネリアスを思い、信じてアメリアは口を引き結ぶ。
「父上」
「……お前は」
コーネリアスに迫られ、エドモンドがやっと口を開く。
「お前は、似過ぎているのだ……あれに」
「あれ、とは母上のことですか」
「あの白い髪、青い瞳、眼差しの名残……なにもかも似ているのだ、ウィルマに」
エドモンドは絞り出すように口にする。だというのに、視線はコーネリアスに向けられず俯いている。
「私が母上似だったということは乳母から聞き及んでおります。ですが、それがなぜ関係あるのですか。父上にとって母上は大切な人であったことは窺えます。ですが、私は私です。コーネリアスという一人の人間です」
コーネリアスはぎゅっと拳を握りしめ訴える。だが、エドモンドの眼差しがコーネリアスを捉えることはなかった。
「父上……!」
「ええい、みなまで言うな!」
エドモンドは声を荒げると、そのまま席を立って御用邸に引き返してしまった。
その背を呆然と見つめるコーネリアスに、アメリアは我慢できずに駆け寄った。
「コーネリアス様!」
「アメリア……いや、私は大丈夫だ。それより、茶会を台無しにしてしまってすまない」
「そんなことありません、コーネリアス様は立派に頑張られました、どうか気を落とさないで……」
「だが、私は……」
うなだれるコーネリアスにアメリアが寄り添っていると、アレクシスが申し訳なさそうに頭を下げる。
「ごめん、コーネリアス、アメリアさん。僕が話を聞いてもらえるかもなんて言ったばっかりに」
「兄上のせいではありません。どうか顔をお上げください。私が答えを急ぎすたせいでもあるのです」
重苦しくなった場で、そっとアレクシスが言った。
「たぶん。たぶん父様は、迷っているのだと思う」
「どういうことでしょうか、殿下」
意味ありげな言葉にアメリアが尋ねてみると、アレクシスは弱々しく笑って話しだした。
「コーネリアスから、僕たちの母様のことは聞いてる?」
「ええ。コーネリアス様を産んで早くに亡くなったと」
「母は白い髪に美しい青色の瞳を持っていた。ちょうど、コーネリアスのようにね」
アメリアはコーネリアスを見やる。アレクシスが言うに、絹のように滑らかな触り心地の髪も、見つめられる時湖の底のように深い青の瞳も、コーネリアスのそれはみな母譲りなのだという。
「そして、母様は人一倍体が弱かった。僕一人を産んだだけでも医師からは驚かれたくらいにはね。でも母は、二人目を身籠った。一人産むだけで限界が来ていたのに、それでも母様は産もうとした」
コーネリアスの表情が暗くなる。暗に自分のせいで母が命を落としたと言われているような気になったのだろう。だが、きっとそんなことはないとアメリアはコーネリアスを励ますようにその手をぎゅっと握った。
「コーネリアスが生まれたことを、僕も、母様も、もちろん父様も喜んだ。みんなを喜ばせ、望まれて生まれてきたんだ。だから、コーネリアス。君が生まれたせいで、なんて決して考えないで。君は僕にとって大切な弟で、父様にとっても宝物なんだ」
「兄上……」
コーネリアスはアレクシスの訴えに、静かに頷いた。
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