50 / 55
50.魔物掃討
ホールを出てすぐさまアメリアは杖をふるって魔法陣を空中に描き出す。空中飛行の魔法はかなり高度な魔法で、王国でも数えるほどの人間しか扱えない。
だがアメリアは軽々とその身を浮かせ魔法陣に着地すると、魔物の大群がいる高原の方に体を向ける。
マナを圧縮し、アメリアは杖を軽く振った。瞬間、アメリアは弾丸のように飛び出して一気に山の向こうへと姿を消してしまう。
その時のすさまじい衝撃と轟音に、庭にいたオリバー達が目を丸くして空を見上げた。
「な、なにか今飛んでいったような……!」
「お屋敷の玄関の方から大きな音も聞こえたけど……」
使用人達がざわめく中、オリバーは火の玉のように飛んでいった軌跡を見上げた。
「あれは……」
なんとなく、だが。オリバーはその正体がわかる気がした。
「側で支えてくれって言ったんだけどな……」
そんなぼやきも、聞くものはオリバー一人だ。
弾丸のように飛んでいったアメリアの眼下で、目まぐるしく景色が変わっていく。どんどん小さくなる建物や森の木々、コーネリアスといつか散策した高原を越え、さらに遠くに飛んでいく。と、高原の端に黒く蠢くものを見つける。
「見つけた……!」
アメリアは前方に魔法陣を展開し、ブレーキをかけて空中に留まった。黒く蠢くそれらは、紛れもなく魔物の群れだ。
悪魔のように恐ろしい姿に、普通の生き物をあべこべに混ぜて組み合わせたような見た目は見たものを恐れさせるには十分だろう。
マナの淀みから生まれ、生き物のマナを食らうため人や動物を見境なく襲う。魔物はこの国では自然災害のようなものだ。そして人の手で収めることのできる唯一の災害でもある。
「ざっと見たところで一万程度……リムネアの駐屯兵には確かに荷が重いわね……」
そしてアメリアは炎の杖を魔物の群れに向ける。
「それじゃあ、始めていくわよ。思いっきり、すっきりさせてよね」
杖の先端から深紅の炎が渦を巻く。神経を集中させ、アメリアはマナを取り込む。
「猛る炎よ、焼き尽くせ……フレイムバースト!」
アメリアの杖から魔法の炎が発射される。大きな石程度の大きさだったが、それが魔物の群れの真ん中に落とされた。
そこから、一気に炎が広がったかと思うと一瞬で魔物を焼き尽くしていく。ちり紙が一気に燃え尽きるような勢いで魔物たちが焼け落ちる中、アメリアめがけて魔物たちが魔力の弾を打ち出した。
淀んだマナでできたそれは、直撃すれば怪我はおろかこちらのマナだって削ぎかねない代物だ。だがアメリアはそんな攻撃に臆せずバリアのように魔法陣を描く。魔法陣はそのまま強固な防壁と化し、魔弾を次々と弾いては光を強めていく。
「反転せよ」
アメリアが短く呪文を唱え、魔弾を跳ね返していた魔法陣が一気に光を増した。吸収した攻撃を繰り返すように魔法陣から魔弾が魔物に降り注ぐ。次々と魔物が魔弾に貫かれる中、仕上げとばかりにアメリアは杖を振りかぶった。
「燃えよ、狂え、爆ぜよ――エクスプロージョン!」
アメリアが杖で指した地面にぷつ、と火の玉が生まれる。それはみるみるうちに周囲の魔物を飲み込み巨大な球体になったかと思うと、轟音と共に爆発四散した。
ほとんどの魔物が炎に巻き込まれ、逃げようとした魔物も巨大な火の粉に貫かれて燃え尽きる。
たった数発の魔法で一万もの魔物を殲滅したアメリアは、燃え尽きた魔物たちがマナに還っていく様を静かに見下ろしていた。
散り散りに逃げていく魔物がちらほら窺えるが、炎がじき燃やし尽くしてくれるだろう。
アメリアは杖を片手に大きく伸びをする。
「っぷはー! やっぱり攻撃魔法ってマナ使うわね~! おかげで鬱憤も発散できたし、いい感じにすっきりできたわ~」
一仕事終えた顔でアメリアが力を抜いたその時、目にも止まらぬスピードでアメリアの横を魔物が一匹飛び去っていった。
「っ?!」
アメリアが振り向いた時、魔物はもう遠く小さくなっていた。
「しまったっ……あっちはリムネアの街……!」
つい気を抜いてしまったために、最後の詰めが甘かったようだ。アメリアはくるりと空中で向きを変え、リムネアの街に戻るべく跳躍の魔法を唱えた。
だがアメリアは軽々とその身を浮かせ魔法陣に着地すると、魔物の大群がいる高原の方に体を向ける。
マナを圧縮し、アメリアは杖を軽く振った。瞬間、アメリアは弾丸のように飛び出して一気に山の向こうへと姿を消してしまう。
その時のすさまじい衝撃と轟音に、庭にいたオリバー達が目を丸くして空を見上げた。
「な、なにか今飛んでいったような……!」
「お屋敷の玄関の方から大きな音も聞こえたけど……」
使用人達がざわめく中、オリバーは火の玉のように飛んでいった軌跡を見上げた。
「あれは……」
なんとなく、だが。オリバーはその正体がわかる気がした。
「側で支えてくれって言ったんだけどな……」
そんなぼやきも、聞くものはオリバー一人だ。
弾丸のように飛んでいったアメリアの眼下で、目まぐるしく景色が変わっていく。どんどん小さくなる建物や森の木々、コーネリアスといつか散策した高原を越え、さらに遠くに飛んでいく。と、高原の端に黒く蠢くものを見つける。
「見つけた……!」
アメリアは前方に魔法陣を展開し、ブレーキをかけて空中に留まった。黒く蠢くそれらは、紛れもなく魔物の群れだ。
悪魔のように恐ろしい姿に、普通の生き物をあべこべに混ぜて組み合わせたような見た目は見たものを恐れさせるには十分だろう。
マナの淀みから生まれ、生き物のマナを食らうため人や動物を見境なく襲う。魔物はこの国では自然災害のようなものだ。そして人の手で収めることのできる唯一の災害でもある。
「ざっと見たところで一万程度……リムネアの駐屯兵には確かに荷が重いわね……」
そしてアメリアは炎の杖を魔物の群れに向ける。
「それじゃあ、始めていくわよ。思いっきり、すっきりさせてよね」
杖の先端から深紅の炎が渦を巻く。神経を集中させ、アメリアはマナを取り込む。
「猛る炎よ、焼き尽くせ……フレイムバースト!」
アメリアの杖から魔法の炎が発射される。大きな石程度の大きさだったが、それが魔物の群れの真ん中に落とされた。
そこから、一気に炎が広がったかと思うと一瞬で魔物を焼き尽くしていく。ちり紙が一気に燃え尽きるような勢いで魔物たちが焼け落ちる中、アメリアめがけて魔物たちが魔力の弾を打ち出した。
淀んだマナでできたそれは、直撃すれば怪我はおろかこちらのマナだって削ぎかねない代物だ。だがアメリアはそんな攻撃に臆せずバリアのように魔法陣を描く。魔法陣はそのまま強固な防壁と化し、魔弾を次々と弾いては光を強めていく。
「反転せよ」
アメリアが短く呪文を唱え、魔弾を跳ね返していた魔法陣が一気に光を増した。吸収した攻撃を繰り返すように魔法陣から魔弾が魔物に降り注ぐ。次々と魔物が魔弾に貫かれる中、仕上げとばかりにアメリアは杖を振りかぶった。
「燃えよ、狂え、爆ぜよ――エクスプロージョン!」
アメリアが杖で指した地面にぷつ、と火の玉が生まれる。それはみるみるうちに周囲の魔物を飲み込み巨大な球体になったかと思うと、轟音と共に爆発四散した。
ほとんどの魔物が炎に巻き込まれ、逃げようとした魔物も巨大な火の粉に貫かれて燃え尽きる。
たった数発の魔法で一万もの魔物を殲滅したアメリアは、燃え尽きた魔物たちがマナに還っていく様を静かに見下ろしていた。
散り散りに逃げていく魔物がちらほら窺えるが、炎がじき燃やし尽くしてくれるだろう。
アメリアは杖を片手に大きく伸びをする。
「っぷはー! やっぱり攻撃魔法ってマナ使うわね~! おかげで鬱憤も発散できたし、いい感じにすっきりできたわ~」
一仕事終えた顔でアメリアが力を抜いたその時、目にも止まらぬスピードでアメリアの横を魔物が一匹飛び去っていった。
「っ?!」
アメリアが振り向いた時、魔物はもう遠く小さくなっていた。
「しまったっ……あっちはリムネアの街……!」
つい気を抜いてしまったために、最後の詰めが甘かったようだ。アメリアはくるりと空中で向きを変え、リムネアの街に戻るべく跳躍の魔法を唱えた。
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームは見守るだけで良かったのに
冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した私。
ゲームにはほとんど出ないモブ。
でもモブだから、純粋に楽しめる。
リアルに推しを拝める喜びを噛みしめながら、目の前で繰り広げられている悪役令嬢の断罪劇を観客として見守っていたのに。
———どうして『彼』はこちらへ向かってくるの?!
全三話。
「小説家になろう」にも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
帰ってきた兄の結婚、そして私、の話
鳴哉
恋愛
侯爵家の養女である妹 と
侯爵家の跡継ぎの兄 の話
短いのでサクッと読んでいただけると思います。
読みやすいように、5話に分けました。
毎日2回、予約投稿します。
2025.12.24
誤字修正いたしました。
ご指摘いただき、ありがとうございました。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
公爵家の次女ですが、静かに学園生活を送るつもりでした
佐伯かなた
恋愛
王国でも屈指の名門、公爵アルヴィス家。
その家には、誰もが称賛する完璧な令嬢がいた。
長女ソフィア。
美貌、知性、礼儀、すべてを備えた理想の公爵令嬢。
そして──もう一人。
妹、レーネ・アルヴィス。
社交界ではほとんど名前も出ない、影の薄い次女。
姉ほど目立つわけでもなく、社交の中心にいるわけでもない。
だが彼女は知っている。
貴族社会では、
誰が本当に優れているのかは、静かな場面でこそ分かるということを。
王立学園に入学したレーネは、
礼儀作法、社交、そして人間関係の中で、静かに周囲を観察していく。
やがて──
軽んじていた者たちは気づく。
「公爵家の妹」が、本当はどんな令嬢だったのかを。
これは、
静かな公爵令嬢が学園と貴族社会で評価を覆していく物語。