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4.療養地リムネア
フローリア王国の西、山岳地帯に位置する療養地リムネアは国内でも有名な温泉地でもある。その温泉はマナを多量に含み、魔法の威力を上げるほか傷の治りが早くなる効能もある。兵士達の湯治に使われる他、一般の観光客に向けても温泉を開放しており、山間のあちこちに温泉宿が建ち並んでいる。
リムネアまでは馬車に揺られること三日。王子の馬車の後について行く形で荷物と一緒にアメリアは馬車に揺られてきた。いくらなんでもヒーラーも荷物扱いするなんて、とルルは憤慨したが、アメリアは治療で見返すべくずっと王子の健康状態や体質についての資料を読み込んでいた。
リムネアに到着したのはそろそろ日も暮れ始める夕刻。春風が少し肌寒く感じる頃である。
アメリアは西方山岳地帯に行くのは初めてだったが、山の麓に立ち並ぶ温泉街は中々に壮観だった。
あちこち看板が立ち、行き交う人々も賑やかだ。体を休めに来る人が多いせいか賑やかであってもやかましくはなく、落ち着いた雰囲気さえ感じさせる。
一際大きな山を背後にずらりと宿がひしめくように並んでいる様は、王都のように整然とした町並とは違いずっと血の通った人間を感じさせる。
「コーネリアス様が滞在なさる屋敷は温泉街の一番奥、でしたよね」
「いかにも。王族の御用邸がございますので、そちらまで同伴いただきたく」
ともすれば荷物ごと転がり出そうなところをなんとか体を引っ張ってアメリアは馬車から出てくると、侍従のオリバーに目的地の確認をする。
「それにしてもアメリア様。窮屈な思いをさせ申し訳ありません」
ずっと荷物と同席していたアメリアに、オリバーが謝罪する。だが、アメリアは不満どころか得意げな表情すら浮かべてかぶりを振った。
「いえ、一人でいる間王子のケガの具合や体質についていろいろ調べたり思案したりできましたから。むしろじっくり考える時間をくださってありがたいですよ」
「であればよろしいのですが……ここからは大型の馬車が通れませんので、小型の馬車で御用邸まで参ります。アメリア様には大変御心苦しいのですが」
「いや、私の馬車に乗せる」
凛とした声にアメリアとオリバーが振り返ると、旅装姿のコーネリアスがケガをしているとは思えないほどしっかりした足取りで歩いてきた。
「殿下、傷に障ります」
「御用邸までの道、私はこのヒーラーを供とする」
「恐れ多くも殿下、先に話した際は殿下お一人が馬車に乗ると」
「道中難儀を強いたのだ、せめて御用邸に着くまで程度はまともな座席に座らせた方がよかろう」
よいか? と聞かれアメリアは返答に困ってしまう。馬車はコーネリアスとオリバーで使ってアメリアだけ後から追いかける形になるはずと踏んでいたから、突然の方針変更にアメリアは戸惑うばかりである。
(気まぐれってやつかしら。馬車の自慢でもしたいわけ? めんどくさいなあ)
「私にはお構いなく」
「いや、乗せていく」
強情なコーネリアスの態度にアメリアも面倒くささを感じてしまう。それでも表に出さないのが社会人の技量というものである。
(ここで乗る乗らないで揉めるのもまた面倒になるだけだし、ここは乗ってあげましょうか。なんて強情な王子なんだ、ったく)
「殿下が強くそう仰るのであれば、私は謹んでお受けいたします」
感づかれない程度にイントネーションを強めてアメリアはお辞儀をする。
「アメリア嬢が承諾したのだ。オリバー、異論はないな」
「殿下がそう仰るのであれば、このオリバー、荷物の間に縮こまって行くことにいたしましょう」
オリバーには悪いが、不毛なやりとりをするよりはマシだ。アメリアはオリバーにお辞儀をすると用意されていた小型の馬車に向かう。
コーネリアスは王子なのだから先に乗るべきなのに、レディファーストの精神なのかアメリアに手を差し出して先に乗らせた。
アメリアは愛想笑いを浮かべて馬車に乗り込むが、乗る場所はきちんと下座である。
(こういう所作は本物の王子らしく優雅なんだからなぁ。悔しくなるようなならないような……)
むすっとしたままのアメリアとコーネリアスを乗せ、馬車は御用邸へと走っていく。
リムネアまでは馬車に揺られること三日。王子の馬車の後について行く形で荷物と一緒にアメリアは馬車に揺られてきた。いくらなんでもヒーラーも荷物扱いするなんて、とルルは憤慨したが、アメリアは治療で見返すべくずっと王子の健康状態や体質についての資料を読み込んでいた。
リムネアに到着したのはそろそろ日も暮れ始める夕刻。春風が少し肌寒く感じる頃である。
アメリアは西方山岳地帯に行くのは初めてだったが、山の麓に立ち並ぶ温泉街は中々に壮観だった。
あちこち看板が立ち、行き交う人々も賑やかだ。体を休めに来る人が多いせいか賑やかであってもやかましくはなく、落ち着いた雰囲気さえ感じさせる。
一際大きな山を背後にずらりと宿がひしめくように並んでいる様は、王都のように整然とした町並とは違いずっと血の通った人間を感じさせる。
「コーネリアス様が滞在なさる屋敷は温泉街の一番奥、でしたよね」
「いかにも。王族の御用邸がございますので、そちらまで同伴いただきたく」
ともすれば荷物ごと転がり出そうなところをなんとか体を引っ張ってアメリアは馬車から出てくると、侍従のオリバーに目的地の確認をする。
「それにしてもアメリア様。窮屈な思いをさせ申し訳ありません」
ずっと荷物と同席していたアメリアに、オリバーが謝罪する。だが、アメリアは不満どころか得意げな表情すら浮かべてかぶりを振った。
「いえ、一人でいる間王子のケガの具合や体質についていろいろ調べたり思案したりできましたから。むしろじっくり考える時間をくださってありがたいですよ」
「であればよろしいのですが……ここからは大型の馬車が通れませんので、小型の馬車で御用邸まで参ります。アメリア様には大変御心苦しいのですが」
「いや、私の馬車に乗せる」
凛とした声にアメリアとオリバーが振り返ると、旅装姿のコーネリアスがケガをしているとは思えないほどしっかりした足取りで歩いてきた。
「殿下、傷に障ります」
「御用邸までの道、私はこのヒーラーを供とする」
「恐れ多くも殿下、先に話した際は殿下お一人が馬車に乗ると」
「道中難儀を強いたのだ、せめて御用邸に着くまで程度はまともな座席に座らせた方がよかろう」
よいか? と聞かれアメリアは返答に困ってしまう。馬車はコーネリアスとオリバーで使ってアメリアだけ後から追いかける形になるはずと踏んでいたから、突然の方針変更にアメリアは戸惑うばかりである。
(気まぐれってやつかしら。馬車の自慢でもしたいわけ? めんどくさいなあ)
「私にはお構いなく」
「いや、乗せていく」
強情なコーネリアスの態度にアメリアも面倒くささを感じてしまう。それでも表に出さないのが社会人の技量というものである。
(ここで乗る乗らないで揉めるのもまた面倒になるだけだし、ここは乗ってあげましょうか。なんて強情な王子なんだ、ったく)
「殿下が強くそう仰るのであれば、私は謹んでお受けいたします」
感づかれない程度にイントネーションを強めてアメリアはお辞儀をする。
「アメリア嬢が承諾したのだ。オリバー、異論はないな」
「殿下がそう仰るのであれば、このオリバー、荷物の間に縮こまって行くことにいたしましょう」
オリバーには悪いが、不毛なやりとりをするよりはマシだ。アメリアはオリバーにお辞儀をすると用意されていた小型の馬車に向かう。
コーネリアスは王子なのだから先に乗るべきなのに、レディファーストの精神なのかアメリアに手を差し出して先に乗らせた。
アメリアは愛想笑いを浮かべて馬車に乗り込むが、乗る場所はきちんと下座である。
(こういう所作は本物の王子らしく優雅なんだからなぁ。悔しくなるようなならないような……)
むすっとしたままのアメリアとコーネリアスを乗せ、馬車は御用邸へと走っていく。
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