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8.治療初日
治療の初日、まずは現状の把握からアメリアは始めた。朝食を済ませた後、早速診療室代わりの医務室でコーネリアスの具合を確かめていく。
手足、と腹部にそれぞれ裂傷がある。幸い急所は外れており、いずれも傷の深さのわりにダメージは少ない。とはいえ体を裂かれているのである。安静は基本中の基本だろう。
「まずは、無理なく安静になさることが一番ですね。湯治は腹部の傷の状態を見て行っていきますが……」
「他には、どんなことを気を付ければよい? できうる限りそなたの言葉に従おう」
御用邸に着いてからというものの、妙にコーネリアスが馴れ馴れしい。アメリアは治療に支障が出ないのであればそれで構わなかったが、だとしても初対面の時とは正反対な態度を取られると戸惑ってしまう。
「ええと、安静にするほか過度な運動は控えていただければと」
「わかった。善処しよう」
妙に素直なコーネリアスを不可解に思いながらも、アメリアはコーネリアスに腕を出すよう言った。
「それと、治癒魔法の効き具合を確かめたいので傷を見せていただきたく」
「構わない」
そう言ってコーネリアスは自分の腕に巻かれた包帯をほどき始めた。傷は外科手術の跡が残っており、痛々しい赤い傷を閉じるように縫い目が続いている。
アメリアはこういった傷には慣れていたから特に臆することなく手の平を傷口にかざす。
精神を集中させ、呪文を唱える。
「母なる大地の恵みをここに……ヒール」
ふわ、と柔らかな空気が傷口を包み込み、温かく光る。それに合わせて傷口がほんの少し治癒され、傷の端がわずかに再生した。
「なるほど。確かに一般的な怪我人に比べて治癒量が少ないですね」
アメリアの魔力ならこの程度の傷であれば一度の魔法で完全に治癒することも可能だ。だがそれがままならないとなると、コーネリアスとの感応はかなり難航していると捉えていい。
「む……そうか」
言葉は淡々としているものの、コーネリアスはあからさまにがっかりしている。自分で効きにくいと宣っていたわりには効果に注目するあたり、アメリアはコーネリアスの考えが読めない。
「殿下。魔法の効きに興味があるようでしたが」
アメリアが聞いてみると、コーネリアスは少し視線を下げた後、何事もなかったかのように答える。
「そなたのような優秀なヒーラーにかかってもなお治らない傷に、苛立ってしまってな」
「傷は一日で治るものではありません」
傷の治りを急ぐコーネリアスにアメリアはきっぱりと言った。
「私の魔法で一気に傷が治ったところで、その状態を安定させるまでに静養するのはごく当たり前のこと。体の自然治癒力が全ての基盤になりますから、そこを蔑ろにしてはいけません」
コーネリアスは目を丸くしていたが、やがて青い瞳に深い色を湛えると、その通りだと言わんばかりに頷いた。
「そなたの言う通りだ。私はどうやら焦りすぎていたらしい。だが、できる限り早く復帰したいのも事実。どうか協力してはくれまいか」
「協力は惜しみません。ですが、治療は私の意見が主導となります。私の意見も十分お聞きになった上でご判断ください」
「わかった。そこははき違えないようにしよう」
コーネリアスはアメリアに頷いたあと、少し困ったように視線を泳がせた。
「早く治したいのはやまやまなのだが、どうすればいいだろうか」
自分の状態を上手く言葉にできないのだろう。コーネリアスが言いよどむ中でアメリアは人呼びのベルを鳴らしてオリバーを呼ぶ。
「アメリア嬢?」
コーネリアスが声を上げる中、オリバーが現れる。アメリアはお茶の用意を頼み、応接用のテーブルにコーネリアスを招いた。
「ちょっと、お茶にしましょうか」
手足、と腹部にそれぞれ裂傷がある。幸い急所は外れており、いずれも傷の深さのわりにダメージは少ない。とはいえ体を裂かれているのである。安静は基本中の基本だろう。
「まずは、無理なく安静になさることが一番ですね。湯治は腹部の傷の状態を見て行っていきますが……」
「他には、どんなことを気を付ければよい? できうる限りそなたの言葉に従おう」
御用邸に着いてからというものの、妙にコーネリアスが馴れ馴れしい。アメリアは治療に支障が出ないのであればそれで構わなかったが、だとしても初対面の時とは正反対な態度を取られると戸惑ってしまう。
「ええと、安静にするほか過度な運動は控えていただければと」
「わかった。善処しよう」
妙に素直なコーネリアスを不可解に思いながらも、アメリアはコーネリアスに腕を出すよう言った。
「それと、治癒魔法の効き具合を確かめたいので傷を見せていただきたく」
「構わない」
そう言ってコーネリアスは自分の腕に巻かれた包帯をほどき始めた。傷は外科手術の跡が残っており、痛々しい赤い傷を閉じるように縫い目が続いている。
アメリアはこういった傷には慣れていたから特に臆することなく手の平を傷口にかざす。
精神を集中させ、呪文を唱える。
「母なる大地の恵みをここに……ヒール」
ふわ、と柔らかな空気が傷口を包み込み、温かく光る。それに合わせて傷口がほんの少し治癒され、傷の端がわずかに再生した。
「なるほど。確かに一般的な怪我人に比べて治癒量が少ないですね」
アメリアの魔力ならこの程度の傷であれば一度の魔法で完全に治癒することも可能だ。だがそれがままならないとなると、コーネリアスとの感応はかなり難航していると捉えていい。
「む……そうか」
言葉は淡々としているものの、コーネリアスはあからさまにがっかりしている。自分で効きにくいと宣っていたわりには効果に注目するあたり、アメリアはコーネリアスの考えが読めない。
「殿下。魔法の効きに興味があるようでしたが」
アメリアが聞いてみると、コーネリアスは少し視線を下げた後、何事もなかったかのように答える。
「そなたのような優秀なヒーラーにかかってもなお治らない傷に、苛立ってしまってな」
「傷は一日で治るものではありません」
傷の治りを急ぐコーネリアスにアメリアはきっぱりと言った。
「私の魔法で一気に傷が治ったところで、その状態を安定させるまでに静養するのはごく当たり前のこと。体の自然治癒力が全ての基盤になりますから、そこを蔑ろにしてはいけません」
コーネリアスは目を丸くしていたが、やがて青い瞳に深い色を湛えると、その通りだと言わんばかりに頷いた。
「そなたの言う通りだ。私はどうやら焦りすぎていたらしい。だが、できる限り早く復帰したいのも事実。どうか協力してはくれまいか」
「協力は惜しみません。ですが、治療は私の意見が主導となります。私の意見も十分お聞きになった上でご判断ください」
「わかった。そこははき違えないようにしよう」
コーネリアスはアメリアに頷いたあと、少し困ったように視線を泳がせた。
「早く治したいのはやまやまなのだが、どうすればいいだろうか」
自分の状態を上手く言葉にできないのだろう。コーネリアスが言いよどむ中でアメリアは人呼びのベルを鳴らしてオリバーを呼ぶ。
「アメリア嬢?」
コーネリアスが声を上げる中、オリバーが現れる。アメリアはお茶の用意を頼み、応接用のテーブルにコーネリアスを招いた。
「ちょっと、お茶にしましょうか」
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