24 / 55
24.アメリアの迷い
しおりを挟む
御用邸に戻った後も、アメリアはコーネリアスの好意に迷っていた。考える時間をくれとはいったがコーネリアスの好意にどう答えればいいのかわからない。そもそも、自分は本当にコーネリアスを好いているのかだって、アメリアにはわからない。
自室にこもり、ライティングテーブルに突っ伏したままアメリアは唸る。
治療をする上でコーネリアスのことを知って、親しみがわかなかったわけではない。だが、それはよくある患者と仲良くなる上で感じる気持ちの一環だと思っていた。
だが、コーネリアスの涙をなぐさめた時から変わっていってしまったようにアメリアは感じる。普通ならしないような膝枕を許したこと、そうやってコーネリアスを甘えさせていたことは、ただの治療以外の意味も持っている気がしたのだ。
世話焼きだから、という生来の資質があったとしても、自分の懐に入れるまでコーネリアスを許していた。そうさせた気持ちを、アメリアはまだうまく飲み込めない。
「どうしたらいいんだろ……」
呟くも答えるものはいない。こういうときルルは話し相手になるより一人で過ごすよう距離をとることが多い。それがルルなりの優しさだし、接し方でもあった。
大事なことはまず自分で納得いくまで考えてから、そうルルに教えたのはアメリアだ。それが今自分に返ってきていることに苦笑しアメリアはため息をつく。
こういうとは一人で考えるより、誰かと話せたのなら幾分か気持ちも落ち着くだろう。でも、それができない今はただただ気持ちを抱えることが重く感じられて窮屈だった。
息が苦しくなるような気持ちなのに、コーネリアスのことを考えると嬉しくなって、口元が綻んでしまう。相反する体と気持ちの反応にアメリアはいつになく不安になっていた。
「好きって言われたってさ……勘違いだったら損なだけじゃない」
コーネリアスに対しても、自分に対しても。
――いいよな魔女様は。自分のいいように好き勝手できるんだから。
ずっと昔に言われた言葉が、ちくりとアメリアを刺す。
「力があったって好き勝手できるわけじゃないわよ」
そう呟いて、アメリアはため息をつく。自分の感情に振り回されるのはこれで二度目だ。
一度目は十年前、二度目は今回のコーネリアスの告白。
一度目はあまりいい気分にはならなかったが、今度は嬉しく感じる自分がいるだけに質が悪い。国王たちはどうだか知らないが、少なくともオリバーやコーネリアスの周りの人間はこれを微笑ましく思っている。だから余計に居心地が悪い。
だってそうだろう、まるで自分の力で王子をたぶらかしたように捉えられるのだから。似たようなことで十年前に苦い思いをしたアメリアは、またそう勘違いされるのも恐れていた。
目立って槍玉にあげられると、義憤の拳で散々殴られる。自分が正しいと思っている人間ほど、その暴力に気づかないものだ。間違っているのならたとえ骨を砕いて二度と歩けなくしたとしても悪びれない。
人間のそういう性を知っているから、アメリアはコーネリアスの好意を受け入れた後が怖くて仕方がない。
逃げていると言うのならそれもそうだろう。自分の気持ちを飲み下したとして、その後を考えると足がすくんでしまう。
「怖いだけなのかな、私……」
かつて紅の魔女として活躍したとは思えないほど、今のアメリアは弱気になっていた。自分の気持ちの整理に少し時間はかかるが、おそらく自分なりに答えが出せるだろう。それでも、一歩を踏み出せない。
きっと自分はコーネリアスが好きだ。心をまさぐっていた指先が本音に引っかかる。本音の糸を指に引っかけたまま、アメリアはそれをたぐりよせられない。あと一歩、勇気を振り絞れない。
「ほんっと、めんどくさい……」
テーブルに突っ伏したまま、アメリアは悩む。
自室にこもり、ライティングテーブルに突っ伏したままアメリアは唸る。
治療をする上でコーネリアスのことを知って、親しみがわかなかったわけではない。だが、それはよくある患者と仲良くなる上で感じる気持ちの一環だと思っていた。
だが、コーネリアスの涙をなぐさめた時から変わっていってしまったようにアメリアは感じる。普通ならしないような膝枕を許したこと、そうやってコーネリアスを甘えさせていたことは、ただの治療以外の意味も持っている気がしたのだ。
世話焼きだから、という生来の資質があったとしても、自分の懐に入れるまでコーネリアスを許していた。そうさせた気持ちを、アメリアはまだうまく飲み込めない。
「どうしたらいいんだろ……」
呟くも答えるものはいない。こういうときルルは話し相手になるより一人で過ごすよう距離をとることが多い。それがルルなりの優しさだし、接し方でもあった。
大事なことはまず自分で納得いくまで考えてから、そうルルに教えたのはアメリアだ。それが今自分に返ってきていることに苦笑しアメリアはため息をつく。
こういうとは一人で考えるより、誰かと話せたのなら幾分か気持ちも落ち着くだろう。でも、それができない今はただただ気持ちを抱えることが重く感じられて窮屈だった。
息が苦しくなるような気持ちなのに、コーネリアスのことを考えると嬉しくなって、口元が綻んでしまう。相反する体と気持ちの反応にアメリアはいつになく不安になっていた。
「好きって言われたってさ……勘違いだったら損なだけじゃない」
コーネリアスに対しても、自分に対しても。
――いいよな魔女様は。自分のいいように好き勝手できるんだから。
ずっと昔に言われた言葉が、ちくりとアメリアを刺す。
「力があったって好き勝手できるわけじゃないわよ」
そう呟いて、アメリアはため息をつく。自分の感情に振り回されるのはこれで二度目だ。
一度目は十年前、二度目は今回のコーネリアスの告白。
一度目はあまりいい気分にはならなかったが、今度は嬉しく感じる自分がいるだけに質が悪い。国王たちはどうだか知らないが、少なくともオリバーやコーネリアスの周りの人間はこれを微笑ましく思っている。だから余計に居心地が悪い。
だってそうだろう、まるで自分の力で王子をたぶらかしたように捉えられるのだから。似たようなことで十年前に苦い思いをしたアメリアは、またそう勘違いされるのも恐れていた。
目立って槍玉にあげられると、義憤の拳で散々殴られる。自分が正しいと思っている人間ほど、その暴力に気づかないものだ。間違っているのならたとえ骨を砕いて二度と歩けなくしたとしても悪びれない。
人間のそういう性を知っているから、アメリアはコーネリアスの好意を受け入れた後が怖くて仕方がない。
逃げていると言うのならそれもそうだろう。自分の気持ちを飲み下したとして、その後を考えると足がすくんでしまう。
「怖いだけなのかな、私……」
かつて紅の魔女として活躍したとは思えないほど、今のアメリアは弱気になっていた。自分の気持ちの整理に少し時間はかかるが、おそらく自分なりに答えが出せるだろう。それでも、一歩を踏み出せない。
きっと自分はコーネリアスが好きだ。心をまさぐっていた指先が本音に引っかかる。本音の糸を指に引っかけたまま、アメリアはそれをたぐりよせられない。あと一歩、勇気を振り絞れない。
「ほんっと、めんどくさい……」
テーブルに突っ伏したまま、アメリアは悩む。
0
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺迷音
恋愛
分厚い眼鏡と、ひっつめた髪を毛糸帽で覆う女性・カレン。
彼女はとある想いを胸に北へ向かう蒸気機関車に乗っていた。
王都から離れてゆく車窓を眺めながら、カレンは振り返る。
夫と婚姻してから三年という長い時間。
その間に夫が帰宅したのは数えるほどだった。
※ご覧いただけましたらとても嬉しいです。よろしくお願いいたします。
妻が通う邸の中に
月山 歩
恋愛
最近妻の様子がおかしい。昼間一人で出掛けているようだ。二人に子供はできなかったけれども、妻と愛し合っていると思っている。僕は妻を誰にも奪われたくない。だから僕は、妻の向かう先を調べることににした。
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
男爵令嬢なのにくじ引きで王子のいる生徒会の役員になりました!
らな
恋愛
男爵令嬢のリアはアルノー王国の貴族の子女が通う王立学院の1年生だ。
高位貴族しか入れない生徒会に、なぜかくじ引きで役員になることになってしまい、慌てふためいた。今年の生徒会にはアルノーの第2王子クリスだけではなく、大国リンドブルムの第2王子ジークフェルドまで在籍しているのだ。
冷徹な公爵令息のルーファスと、リアと同じくくじ引きで選ばれた優しい子爵令息のヘンドリックの5人の生徒会メンバーで繰り広げる学園ラブコメ開演!
リアには本人の知らない大きな秘密があります。
リアを取り巻く男性陣のやり取りや友情も楽しんでいただけたら嬉しいです。
ひみつの姫君からタイトルを変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる