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第二章 街へ

第15話 実技試験

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コジローが木剣を構える。剣道の中段の構え。

「ビビってはいないようね。いくわよ。」

リエはそう言うと構えもせずに片手でいきなり打ち掛かってきた。

コジローは既に構えているのだから「不意打ち」とは言えないが、突然の高速の打ち込みにコジローは反応できなかった。

リエは木刀を「寸止め」して言った。

「ぼーっとしてると怪我するわよ?」

反応できないのを見越しての挨拶代わりということなのか。

コジローは、リエの打ち込みの予想外の速さに驚いた。試験だから「素の実力」で、と思ったのだが、そんな事言ってられない。コジローは魔法を発動する。加速(2倍速)。

「少しは本気になったようね」

加速魔法の発動で雰囲気が変わったのを感じ取ったのか、リエが言った。

試合再開・・・しかし、加速を発動しているのにも関わらず、リエの打ち込みを、コジローはかろうじて受け止めるのが精一杯だった。

コジローはさらに加速魔法をさらに強化・増速させる。
実は、コジローの加速の魔法はマドリー&ネリーの家での魔獣との戦いやその後の自主練でレベルアップしていた。それでも3倍速が今の上限であったが。

リエの動きの見え方がコジローからは通常の三分の一になる・・・しかし、それでもリエの攻撃は速かった。

予想外の軌道で、かつ恐ろしい速さで繰り出される攻撃に、コジローは三倍速でも防戦一方になってしまうのであった。



だが、しばらく攻撃を凌き続けていれる内、さすがにコジローも、少しはリエの動きに慣れてきた。やがてついに、コジローはリエの剣を払い、反撃することができたのであった。

コジローが放ったのは喉を狙っての突き。コジローは当然寸止めするつもりであったが・・・

しかしそんな必要もなく、リエは上半身を僅かに捻って躱してしまう。

なんて反応力なのか?!

咄嗟にコジローは剣を横に向けリエの首に突きつけるが・・・

「相打ちね」

リエの剣がコジローの脇腹に押し付けられていた。

「あなた、魔法使いじゃなくて剣士だったのね!!」

リエが言う。

魔法使いの弟子なのに魔法が苦手なのか、それで追い出されたとか?なるほどねぇ~

何かおかしな納得のされ方をしているような気がするが、まぁいいかとコジローは流した。。。

「試験は合格よ、だけど・・・面白いからもう少し本気で試させて!」

再びリエが打ち込んでくる。

焦るコジロー

ちょまって、え、今までのはまだ本気じゃなかったんですか・・・?!

リエの攻撃の速度がさらに上がる。

繰り返される高速の打ち込み。

防戦一方になったコジローは、ついにリエの剣撃をしのぎきれなくなってしまう。

リエの剣がコジローの頭に振り下ろされる。

コジローからは、ハイになって攻撃してくるリエは、手加減なし・寸止めなし、どう見ても本気で打ち込む気であるように思えた・・・

木刀であっても、本気で殴られれば骨は確実に折れると、コジローの愛読マンガ『小次郎が行く』にも書いてあった。当然、頭を木剣で本気で殴られたら頭蓋骨骨折は免れないだろう。大怪我で済めば運が良いほう、リエの打ち込みの鋭さからすれば、おそらく・・・死ぬ!

追い詰められたコジローは・・・



次の瞬間、リエの剣は空を切り、コジローの剣がリエの腹部に食い込んでいた。



リエの剣がコジローの頭に振り下ろされた。

回避は不可能と思われた次の瞬間、リエの剣は空を切り、コジローの剣がリエの胴に食い込んでいた・・・

コジローは、身の危険を感じて思わず咄嗟に転移を発動してしまったのだった。

50cmほど横に瞬間移動し、同時にコジローの木剣がリエの胴を薙いでいた。

これは、ここ数日、ずっとトレーニングを繰り返していた転移斬の練習の成果であるのだが。



腹部に剣を受け、リエが一歩下がる。

リエ:「ぐ・・・今のは・・・何?!」

コジロー:「いや、参りました。」

慌ててコジローは負けを認めた。

コジロー:「大丈夫ですか?」

寸止めできる余裕はなく、リエの体に打ち込んでしまった。

しかし・・・もし転移を発動しなければ、リエの攻撃で頭を砕かれていたような気がするのですが・・・?!

そう言えば、この世界はポーションや治癒魔法で簡単に怪我は治るのだった

怪我程度であれば、あまり躊躇はないのかもしれない・・・?!

そう気がついて、コジローは冷や汗をかいた。


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