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第二章 街へ

第27話 絶対防御アイテムを貰う

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ゼフトが作ってきたのは、腕輪(ブレスレット)と首輪(チョーカー)だった。

ブレスレットは地球の腕時計のような感じで、時計部分が宝石になっている。

首輪も同様に宝石がついているが、装飾品という感じはないシンプルなデザインであり、付けていてもあまり目立つことはなさそうである。

この世界には、宝石の中に魔法を封じ込める技術がある。それは、封じ込められた魔法を一回(または数回)使うと使えなくなってしまうという、使い捨てのモノが一般的である。

しかしゼフトはそれを独自改良し、ほぼ永久に使え、しかもかなり複雑な術式も封じ込める事が可能な魔道具とすることに成功していたのであった。

ブレスレットには、索敵と警報の魔法が組み込まれており、チョーカーには防御用シールドを組み込んであるとの事。

身につけている限り、常時発動し続けてくれるので、不意打ちを受けても防いでくれる。魔力は空間から常時補い蓄積していく方式のため、半永久的に稼働することが可能である。

さらに、どちらも、害がないものには反応しないという、賢い動作をする術式となっているとか。ちょっとした知性を持っているようなもので、設定の調整も多少は自分で可能らしい。

地球で言うAIみたいなものかとコジローは思った。

「師匠、ありがとうございます!」

少々わざとらしくではあるが、素直に謝意を示すコジロー。

『何、構わんよ。可愛い弟子のためじゃての。ふぉふぉふぉふぉ・・・』

笑いながらゼフトは消えていった。骸骨なので分からないが、もしかして、照れているのかもしれない・・・

コジローはゼフトが作った人間である。ゼフトは子供を持ったことはないのだが、子供が居たらこんな感じだったかと実は思い始めているのであった。



『ところで、コジロー』

「はい?!」

フェードアウトして消えたと思ったゼフトだったが、すぐに戻ってきた。

『お主をそんな目にあわせた、ドジルとか言ったか?どうする?ちょうど実験体がほしかったところじゃ、使ってしまってよいか?』

「実験とは・・・?殺してしまうと言う事ですか?」

『殺しはしないが、まぁ、似たような事になるかの。。。』

ゼフトが手をかざすと、床に転移魔法陣が浮かびあがり、ドジルと手下A・手下Bが現れた。

「いや!大丈夫です、自分でケリをつけさせてもらえますか?!」

コジローは慌てて答えた。

『そうか?』

ドジル達は再び消えていった・・・



ドジル達はゴブリンの討伐依頼を遂行中だった。ギルドマスターのリエに睨まれ、借金を返すために依頼をこなさざるを得ないのだったが。

森の中を歩いている途中、突然転移させられ、またすぐ戻されたのである。

ドジル:「い、今のは何だ?!急に、違う景色が見えた気がしたんだが・・・」
手下A:「なんか、骸骨が見えましたが・・・」
手下B:「コジローも居た・・・」
ドジル:「まさか、死んだコジローがあの世から化けてでてきたんじゃ?!」

恐ろしくなったドジル達は、依頼も放り出して、慌てて森から逃げ出すのであった。。。



『コジローよ、最初から少し気になっておったのじゃが、もしかして、なるべく殺したくないなどと思っていないか?』

ゼフトが問いかける。

『生きていれば恨みも買う。恨みを買えば、どこかで仕返しをされ、足を引っ張られるという事が起きる。今回の事がまさにそれじゃろう?」

「それは、たしかに・・・」

『殺せる時に殺さないのは、わざわざ遺恨を増やす事にもなる。可能ならば速やかに排除してしまったほうが効率が良い場合もあるぞ?』

「しかし、そんなに簡単に殺すなんて・・・」

『モンスターは簡単に殺すのに?人間は殺したくないなどと思っているとしたら、それはただの思い込みじゃよ。

コジローが居た平和な世界とは違うのじゃ。この世界は厳しく、命は軽い。

今、生き延びている者というのは、他者を殺して生き延びているのじゃ。当然、恨みは買う、遺恨は生きるほどに増え続ける。

人間の命だけが尊いわけでもない。むしろ、人間のほうにこそクズみたいな魂が多いのが現実じゃ。そんなクズ魂とは、関わるだけ時間と労力の無駄じゃと思うがの?』

コジローは何も言い返せなかった。

しかし、平和な日本で生まれ育ったコジローには「殺せる時に殺しておけ」と言われて、はいそうですねと割り切ることもなかなかできないのであった。。。

『まぁ良い。どんどん殺しまくれば良い、などと言ってるわけでもない。ただ、必要な時もあるということじゃ。

あの者達は、生かしておけば間違いなく、また問題を起こすじゃろう。その時、始末を付ける判断が必要になるかもしれん、それは覚えておくが良い。』

ゼフトは消えて行き、今度は戻ってこなかった。

確かに、このまま街に戻れば、再びドジル達と相対する事になる。
黙って無視していれば、これ以上関わらないでいてくれるだろうか?

いや、殺されかけて、そのまま黙って済ますなどという事は、コジローとしてもできはしない。。。

とりあえず、ギルドマスターのリエに相談してみるか?

いや、ギルドとしても、冒険者を減らすような事はしたくないというのが本音だろう。もしかしたら、冒険者としてそれなりに実績のあるドジル達三人を残して、初心者である自分のほうを切るという判断をする可能性すらある。

どうしたものか・・・

考え込んでいるのを見て、話を聞いていたマドリーが声を掛けた。

「どっちにしても、やられっぱなしで済ませる気はないんだろ?」

それはそうだ。

「何らかの落とし前はつけさせる。」

とコジロー。

「物事ってのは、大抵、考えたようには進まないもんだ。出たとこ勝負でいいんじゃないか?」

確かに・・・「臨機応変が大事」と、"コジローが行く" にも書いてあった。

コジローは考えるのをやめ、街へ戻る決心をしたのだった。



コジローはブレスレットとチョーカーを腕と首に嵌めてみた。どちらもちょうどよい大きさに自動的に収縮する。つけ心地は悪くない。

すぐに、ブレスレットの索敵機能を起動させてみる。

コジローの視覚に重なるように、レーダーのような画面が見える。その中で、青い光が3つ。これはマドリーとネリー、それにマロか。マロのは特に大きい、これは持っている魔力量によるようだ。

さらに遠く、広く、意識を広げるとともに索敵範囲が広がっていく・・・

数キロ先に、いくつかの反応、魔獣が何匹か、森の中を移動しているようだ。光も小さく距離も遠いので問題ないだろう。



次に、チョーカーの防御シールドのテストをしてみる。マドリーに強力してもらい、剣で攻撃してもらった。

最初は軽く、コジローに向かって恐る恐る剣を振り下ろすマドリー。剣は、コジローの体の当たる直前、薄っすらと光る小さな正方形の板状のシールド=マジックシールドに阻まれた。

別の場所に切りつけても同じ。

少し強めに、さらに強めに。何度斬りつけてもマジックシールドに阻まれ、コジローに剣が届くことはなかった。

背後からネリーがクルミを投げつけてきたが、それも同様にマジックシールドにブロックされる。

確かにこれなら、不意打ちで矢が飛んできても防げそうである。


更に今度は、マロに魔法を撃ってもらった。ごく弱めのサンダーブラスト・・・しかし、マジックシールドはこれも完全に防いでくれた。

かなり強力な防御シールドのようだ、"師匠" に、感謝である。

マドリーとネリーにも礼を言って、コジローとマロは街へ戻る事にした。


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