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第三章 アルテミルの街とその領主

第44話 悪代官の処分2

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結局、コジローは街を出なくて済むようになったので宿に戻った。

そして翌日からは森への探索に行く日々を送るようになった。

初心者向けクエストの薬草採集やゴブリン退治は常設依頼なので、森で見つければいつでも報酬が貰えるし、その他の魔物も素材を買い取ってもらえるので、金になる。

育ち盛りで意外と大食いのフェンリル・マロも居るし、食費と宿代を稼ぐために金を稼がなければならない。

高ランクの魔物は、討伐依頼が出ることもある。依頼をうけて討伐すれば、素材の買取のほかに依頼の成功報酬が貰えるのだが、冒険者ランクの低いコジローには、高ランクの魔物の討伐依頼は受けられないので、特に依頼は気にすることなく、遭遇したら倒して肉はマロに、素材は売って金にするのであった。

ランクが上がれば難度の高い討伐依頼も受けられるし、商人や貴族の護衛依頼も受けられるようになるが、今は自分の魔法の練度アップをすることが優先だと考えており、あまりランクアップや依頼には興味がなかった。

宿泊はずっと安ホテルであった。この街を拠点に長期滞在するのであれば、部屋を借りる事も考えたほうが良いのかも知れないが、この街に留まるかどうかもまだコジローは迷っているところがあったのである。

突然送り込まれた新しい世界を色々見てみたい気持ちもある。また、ゼフトに聞いたところ、魔法の成長にも、人間として様々な経験をする事も効果が高いとの事だったので、旅をしたほうがよいのだろう。

まぁ、今しばらくはこの街で冒険者として色々勉強するつもりではいたが。



コジローは森の中のとある渓谷に、少し広めの静かな場所をみつけ、そこで魔法と剣の修行を日課にするようになっていた。

相変わらず時空系以外の魔法はしょぼいままであったが、回数を熟すことで少しずつでも伸びていくとの事だったので、根気よく続けるしかない。

それから、新たにレベルアップした時空系魔法のテストや使い方の研究などもする必要がある。

最近のレベルアップでは、自分以外の人やモノだけを転移させる事ができるようになっていた。

ちなみに、遠方にある人やモノをこちらに転送させることはできず・・・試しにマロを転送したら戻すことができず、慌てて自分も転移して迎えに行く事になった。ゼフトは遠方の魔物を転移させる事もやっていたので、もっとレベルが上がればいずれできるようになるのだろう。



また、転移魔法陣は、1回のみ使い捨てではなく、長期間残すことができるようになった。これを使えば、遠方の土地との交易などで大きな利益を出せるようになるかも知れないが、戦略的な意味さえ持ちうるものなので、慎重に扱う必要があるだろう。

加速は12倍速までレベルアップ。

亜空間操作については、空間を複数分けて設置すること、また、袋や箱などの中に亜空間を設置しておくことができるようになった。これにより、マジックポーチやマジックバッグを作ることが可能になる。それを作って売れば、お金には困らないかも知れない。ただ、今は世界を見て回りたいという気持ちが強かったので、冒険者をやめる気にはならなかった。

冒険者の立場というのはかなり自由が保証されており、旅をするのには最適なのである。

ただ、当面の生活のために、マジックバッグをひとつふたつ作って売ってみようか、とは考えていた。


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