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第三章 アルテミルの街とその領主
第43話 悪代官の処分1
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アルテミルの事態を収拾するため、領主のクリスはしばらくアルテミルに留まる事となった。
税率を元に戻し、悪事を働いた官僚を調べ上げ罰していく必要がある。
領主には権限として裁判権も与えられている。この世界には三権分立という考えはなく、領主に強大な権限が与えられているのである。それは逆に言えば、領主の仕事が膨大となって目が届かなくなる原因でもあったのだが・・・。
レメキについては、あまりに行状が酷かったため、単に処刑するだけでは、それこそトカゲの尻尾切りのような印象になり、人々の気持ちが収まらないと思われた。
公開斬首刑+晒し首という方法もこの国にはまだあったのだが、そのような野蛮な方法は、クリスはできればとりたくなかった。
そこで、レメキと加担した者たちは犯罪奴隷として街で使役させる事とした。
レメキ:犯罪奴隷として労役、刑期20年、恩赦なし。
恩赦なしとは、犯罪奴隷は真面目に働いていれば、領主や王族に慶事があった時などに「恩赦」が出て、刑罰が減免される事があるのだが、レメキに関しては対象から除外するということである。
本来なら処刑されてもおかしくはない罪状であったのだから、労役で済むなら温情のある処置であるように見えなくはない。しかし、奴隷として街の人に晒され、罵倒されながら過酷な労働を強いられる事になるわけで、プライドの高い人間にとっては死罪よりも厳しい処置と言えるのであった。
レメキは一応貴族である。モンデ子爵家の当主であった。
クリスがアルテミルの代官をモンデ子爵に命じたとき、レメキの父親であるバララ・モンデ子爵はまだ存命であり、信頼できる人物であったのだが、代官任命後すぐに事故で急逝してしまい、息子であるレメキが後を継いだのだった。
レメキが廃嫡となったモンデ子爵家では、次の当主として、レメキの遠縁のマットという人物が連れてこられた。
クーデターまで起きるほどの事態を引き起こした子爵家の罪は重く、取り潰しという処置になる可能性もあったのだが、先代のモンデ子爵の功績を慮り、クリスはマットを跡継ぎとして認め、しかし爵位は男爵に降格とした。
男爵という爵位は一代限りで世襲できない。そのままであれば、マットの代が終わればモンデ家は平民となる事になる。しかしクリスは、新たなに当主が問題を起こさず真面目に勤めるのであれば、いずれ子爵に戻す事を検討してもよいとマットと約束したのだ。逆に、少しでも問題を起こしたら即、爵位を剥奪するとも宣言した。
没落させたくなければ、マットは品行方正に努めるしかないであろう。
レメキの側近であったチリッソは、犯罪奴隷として労役15年(恩赦があれば刑期短縮可)という処分とした。
チリッソの父、ワサ・デーホカブゴ男爵は、自ら爵位を返上した。もともと畑仕事が好きで、男爵の位を貰ってからも、土地を買って畑仕事に精を出す日々を送っていたらしい。
デーホカブゴ男爵は息子が死刑を免れた事を伯爵に感謝しており、犯罪奴隷としての勤めを終えた後は、息子には農業を継がせるとの事だった。
この人物にとっては、爵位は少々荷が重く、なくなって肩の荷が降りたというところなのかも知れない。
レメキがアルテミルで溜め込んでいた個人資産は全額没収となった。人々に重税を課し、それを懐に入れていたのだから当然の事である。
住民に対しては、一度徴収した税金を、すべて調べあげて住民に返すというのは手間も時間もかかり現実的ではなかったため、クリスはアルテミルの税率を数年間、破格に下げる事とした。
街から出ていってしまった人間も多いが、税率が安いとなれば商人なども集まってきて、街の経済は活気づくであろう。街が栄えれば、将来的にはむしろ税収が増える結果になるかも知れない。
レメキによって家族を失った者達には、クリス自らが直接訪ねて誠心誠意謝罪し、多額の賠償金が支払われることとなった。
代官にサディスティックな趣味があるというのは本当だったようで、生き延びたものの、ムチで打たれたり体を切り刻まれたことで、身体に傷や障害が残っている者も居た。そのような者については、領内の最高の治癒魔術士を呼び寄せ治療に当たり、領主が治療代金を負担する事とした。
しかし、怪我や傷であれば治るが、この世界でも失われてしまった命は戻ってこない。そのような被害者の家族には、クリス自ら頭を下げ、賠償金を払うしかない。
貴族が平民に頭を下げるなどありえない事とされているこの世界で、クリスの直接謝罪は異例の事であったが、自らの失政であるという思いが強いクリスは自然に頭が下がるのであった。
自分がやった事でもないのに、真摯に謝罪する領主に対して、住民は信頼を少し回復するのであった。
サンテミルもまだまだ心配であるし、その他の領土のチェックも必要である。クリスの仕事は増える一方であったが、今では娘のリヴロットとアナスタシアが力になってくれるようになった。
リヴロットはオテンバで、幼い頃から剣の練習ばかりしていた。本人曰く頭はあまり良くないとの事であったが、腕が立ち人望もあるので、領主お抱えの騎士団と警備隊の指揮を任せられる存在になっていた。
妹のアナスタシアは、まだ子供で勉強中の身ではあるが、大変聡明で、また魔法の腕もかなりのモノであった。なにより、アナスタシアの持つ未来予知能力は、クリスにとって非常に価値のあるものだった。
リヴも予知能力を持つが、リヴがごく近い未来の自分に関わる事だけしか予知できないのに対し、アナはもっと長期間の未来を予知することが可能であったのだ。
いずれアナスタシアが成長すれば、立派な領主として伯爵家を継いでくれるだろうと期待が大きかった。後継者としてはリヴロットが順位としては上だが、リヴは頭の悪い自分はその器ではないと公言していたのであるが、クリスとしては、姉妹が力を合わせて治めてくれるようになれば良いと願っていた。
税率を元に戻し、悪事を働いた官僚を調べ上げ罰していく必要がある。
領主には権限として裁判権も与えられている。この世界には三権分立という考えはなく、領主に強大な権限が与えられているのである。それは逆に言えば、領主の仕事が膨大となって目が届かなくなる原因でもあったのだが・・・。
レメキについては、あまりに行状が酷かったため、単に処刑するだけでは、それこそトカゲの尻尾切りのような印象になり、人々の気持ちが収まらないと思われた。
公開斬首刑+晒し首という方法もこの国にはまだあったのだが、そのような野蛮な方法は、クリスはできればとりたくなかった。
そこで、レメキと加担した者たちは犯罪奴隷として街で使役させる事とした。
レメキ:犯罪奴隷として労役、刑期20年、恩赦なし。
恩赦なしとは、犯罪奴隷は真面目に働いていれば、領主や王族に慶事があった時などに「恩赦」が出て、刑罰が減免される事があるのだが、レメキに関しては対象から除外するということである。
本来なら処刑されてもおかしくはない罪状であったのだから、労役で済むなら温情のある処置であるように見えなくはない。しかし、奴隷として街の人に晒され、罵倒されながら過酷な労働を強いられる事になるわけで、プライドの高い人間にとっては死罪よりも厳しい処置と言えるのであった。
レメキは一応貴族である。モンデ子爵家の当主であった。
クリスがアルテミルの代官をモンデ子爵に命じたとき、レメキの父親であるバララ・モンデ子爵はまだ存命であり、信頼できる人物であったのだが、代官任命後すぐに事故で急逝してしまい、息子であるレメキが後を継いだのだった。
レメキが廃嫡となったモンデ子爵家では、次の当主として、レメキの遠縁のマットという人物が連れてこられた。
クーデターまで起きるほどの事態を引き起こした子爵家の罪は重く、取り潰しという処置になる可能性もあったのだが、先代のモンデ子爵の功績を慮り、クリスはマットを跡継ぎとして認め、しかし爵位は男爵に降格とした。
男爵という爵位は一代限りで世襲できない。そのままであれば、マットの代が終わればモンデ家は平民となる事になる。しかしクリスは、新たなに当主が問題を起こさず真面目に勤めるのであれば、いずれ子爵に戻す事を検討してもよいとマットと約束したのだ。逆に、少しでも問題を起こしたら即、爵位を剥奪するとも宣言した。
没落させたくなければ、マットは品行方正に努めるしかないであろう。
レメキの側近であったチリッソは、犯罪奴隷として労役15年(恩赦があれば刑期短縮可)という処分とした。
チリッソの父、ワサ・デーホカブゴ男爵は、自ら爵位を返上した。もともと畑仕事が好きで、男爵の位を貰ってからも、土地を買って畑仕事に精を出す日々を送っていたらしい。
デーホカブゴ男爵は息子が死刑を免れた事を伯爵に感謝しており、犯罪奴隷としての勤めを終えた後は、息子には農業を継がせるとの事だった。
この人物にとっては、爵位は少々荷が重く、なくなって肩の荷が降りたというところなのかも知れない。
レメキがアルテミルで溜め込んでいた個人資産は全額没収となった。人々に重税を課し、それを懐に入れていたのだから当然の事である。
住民に対しては、一度徴収した税金を、すべて調べあげて住民に返すというのは手間も時間もかかり現実的ではなかったため、クリスはアルテミルの税率を数年間、破格に下げる事とした。
街から出ていってしまった人間も多いが、税率が安いとなれば商人なども集まってきて、街の経済は活気づくであろう。街が栄えれば、将来的にはむしろ税収が増える結果になるかも知れない。
レメキによって家族を失った者達には、クリス自らが直接訪ねて誠心誠意謝罪し、多額の賠償金が支払われることとなった。
代官にサディスティックな趣味があるというのは本当だったようで、生き延びたものの、ムチで打たれたり体を切り刻まれたことで、身体に傷や障害が残っている者も居た。そのような者については、領内の最高の治癒魔術士を呼び寄せ治療に当たり、領主が治療代金を負担する事とした。
しかし、怪我や傷であれば治るが、この世界でも失われてしまった命は戻ってこない。そのような被害者の家族には、クリス自ら頭を下げ、賠償金を払うしかない。
貴族が平民に頭を下げるなどありえない事とされているこの世界で、クリスの直接謝罪は異例の事であったが、自らの失政であるという思いが強いクリスは自然に頭が下がるのであった。
自分がやった事でもないのに、真摯に謝罪する領主に対して、住民は信頼を少し回復するのであった。
サンテミルもまだまだ心配であるし、その他の領土のチェックも必要である。クリスの仕事は増える一方であったが、今では娘のリヴロットとアナスタシアが力になってくれるようになった。
リヴロットはオテンバで、幼い頃から剣の練習ばかりしていた。本人曰く頭はあまり良くないとの事であったが、腕が立ち人望もあるので、領主お抱えの騎士団と警備隊の指揮を任せられる存在になっていた。
妹のアナスタシアは、まだ子供で勉強中の身ではあるが、大変聡明で、また魔法の腕もかなりのモノであった。なにより、アナスタシアの持つ未来予知能力は、クリスにとって非常に価値のあるものだった。
リヴも予知能力を持つが、リヴがごく近い未来の自分に関わる事だけしか予知できないのに対し、アナはもっと長期間の未来を予知することが可能であったのだ。
いずれアナスタシアが成長すれば、立派な領主として伯爵家を継いでくれるだろうと期待が大きかった。後継者としてはリヴロットが順位としては上だが、リヴは頭の悪い自分はその器ではないと公言していたのであるが、クリスとしては、姉妹が力を合わせて治めてくれるようになれば良いと願っていた。
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