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第四章 マドネリ村

第64話 転移ネットワーク完成1

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翌日、コジローは次の街まで移動、しかし近くの森まででとどめ街に入らず、すぐに次の街を目指すという事を繰り返した。

昼時だけは、ちょうど日中の良い時間に立ち寄った街に入り、その街の屋台や食堂で食事をしたが。

そして、一日の終わりにはアルテミルに戻る。既に行った事がある場所へは転移で移動できるので、コジローは毎日どこにいても帰れるのである。

帰る・・・?

しかしよく考えれば、コジローはアルテミルに家があるわけでもないのであった。

アルテミルの宿はある程度長期で泊まる契約をしていたが、それほどその宿にこだわる理由もなく、行った先々で宿をとればよいのでは?ともコジローは考えたのだが・・・

結局、アルテミルの宿はキープしたままとすることにした。別の街で宿を探した時に、必ずマロが一緒に泊まれる宿がある保証もない。マロは別に街の外に野宿でも問題ないというが、毎日枕になってくれるマロのモフモフ感は捨てがたいのであった。

それに、今はアルテミルを訪れえる客も多くはないが、次に戻ってきたときに部屋が空いている保証はない。

こだわりはそれほどないとはいえ、宿の女将も、付き合いが長くなった分だけ情もわくところもある。

そこで、アルテミルの宿には

「しばらく仕事であちこち出歩くことになったので、不在がちになる、出たり入ったりはするかもしれないのでよろしく」

と伝え、一か月分の宿代を前払いで払い出かけることにしたのだ。

ただ、コジローは、どこかにホームを持ってもよいかと、チラと考え始めた。アルテミルの街に部屋を借りてもよいだろう。あるいは、どこか気に入った街があればそちらにしばらく定住することも考えてもよいだろうか。

しかし、今のところ領主のクリスはアルテミルを拠点とするようなので、アルテミルを拠点としたほうがよいか?

だが、コジローは転移でいつでも移動できるのだから、どこにいようとも問題はない。

しかし、転移で移動しているところはなるべく人に見られないほうが良いだろう。そのためには、どこか転移用に部屋を借りたほうが良いだろうか・・・?

冒険者として活動を続けるのであれば、ギルドはどうする?基本的にギルドは、街単位で登録して活動する。複数の街で活動する冒険者であれば、当然複数の街に籍を置く者も多いが・・・

色々考えることはあるが、すぐどうこうする話でもない。

今は領主の転移ネットワークを早く完成させることに注力したほうがよいだろうとコジローは思い直した。領主の転移ネットワークを運用し始めてみれば、またいろいろ見えてくる者もあるだろう。



色々考えはしたが、結局、コジローはアルテミルの宿はキープしつつ、夕刻に訪れた街で宿に泊まる事にした。

行く先々で宿をとり、見知らぬ街の食堂や屋台で食事をするのは意外と楽しかったのである。

多少多めに領主から準備金ももらっているので問題ない。

マロは限界まで小さいサイズの子犬に変身させておけば、一緒に泊まれる宿を探すのはそれほど苦はなかった。

一日で回れる街は3~4ヶ所程度であった。そのため、のんびり観光しながら移動しても、一週間が過ぎる頃には領内十七箇所の街(の外)までの移動が完了した。

あとは、各街にアレキシを転移で連れて行く。こちらのほうが思いのほか時間がかかる作業となる。

アレキシは現地の代官所に出向き、領主からの命令を伝え、屋敷を整えさせる。また、その都度、街の財政チェック等を行う必要があったのである。せっかく抜き打ちで行ったのだから、隠し事をされないうちにチェックしてしまったほうがよい。

しかしつまり、アレキシの仕事が終わるまで、コジローは待たされる事となってしまうのである。夕刻にはアレキシをアルテミルに連れ帰る必要があるため、送り届けてさようならというわけにも行かない。

もちろん、転移があるのだから、送り迎えの時間以外はコジローが別の場所─別の街にいても問題はないのだが、結局朝夕の送迎の縛りがある以上、ギルドを覗いてみても、それだけ短時間で受けられるような依頼はなかなかないのであった。

しかも、アレキシの各街での仕事は、すぐに終わる事もあったが、何日かそのまま街に留まる事もあった。どうなるかはやってみないと分からないという。これにはコジローも困ってしまった。

待ち時間が長く、その間、観光や飲食だけで過ごすのにも飽きが来る。図書館があるような大きな街であれば、そこでこの世界の事を勉強してもよいかと思ったが、コジローには脳内百科事典があるので、知りたいことはどこにいてもたいてい分かる。わざわざ図書館という場所にこだわる必要がなかった。

コジローは、待ち時間に魔法や剣の修行などがしたいと思い、マドリーの家の庭を借りる事が多くなった。森の中でやってもよいのだが、マドリー&ネリーの家にはモニカが居る。モニカと話をすることも、コジローにとっては楽しみになりつつあったのである。地球の、日本からの転生者という共通の秘密があったため、急速に親密になれたように、コジローは思っていた。

モニカとしては、コジローはあくまでお友達でしかなかったのだが、とはいえ、モニカもコジローに対して特に悪い印象もなく、気持ちよく付き合える相手であるのは事実であった。


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