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第五章 コジローの恋

第93話 初心者向けダンジョンに潜る2

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ダンジョンに挑戦するパーティには、罠を発見し解除・回避するための盗賊(シーフ)や斥候(スカウト)と呼ばれる職種の者をメンバーに加えるのが定石である。(※盗賊といっても山中や森の中にいて人を襲って金品を奪う冒険者崩れの盗賊ではなく、職業・技能としての盗賊である。)だが、今回コジロー達のパーティには盗賊も斥候も居ない。

コジローもこれまで2~3ダンジョンに潜ったことがあるが、大抵は一人であった。たとえ罠にかかっても、コジローであれば転移やマジックシールドがあるので問題にならないのである。そのため、今回、盗賊を雇うことをコジローは失念してしまっていた。

そこでこの階はコジローが先頭を歩くことにした。

罠を発見する能力はコジローにはない、どちらかというと罠に気づかずどんどん嵌ってしまう間抜けなタイプであったが・・・。

だが、今回は初心者向けダンジョンで地図に罠の位置まで書いてある。もちろん、地図にない場所に罠が新たに造られている可能性はあるのだが、コジローにはマジックシールドがあるので、最悪そのような場合でも問題ないだろう。

階段を降りて少し進むと、両側の壁面にいくつか穴が開いている場所に来た。地図にあるとおり、矢が飛び出てくる罠である。床の一部がスイッチになっており、それを踏むと矢が飛び出てくる。穴の位置を見れば矢が出てくる場所が分かるので、それを避けながら、コジローはスイッチとなっている床を踏んでみせた。マルス達に罠がどういうものが教えるためである。

罠は他に、上から槍が降ってくるタイプや、落とし穴のタイプなどもある。高度なダンジョンになってくると、転移魔法陣が仕込まれていて、どこかに飛ばされてしまうという場合もあるが、今回のダンジョンにはそのような高度な罠は存在しないだろう。




途中、壁に扉がある場所に来た。

扉を開けると中は部屋になっており、宝箱が置いてある。実は宝箱に擬態したモンスター、ミミックであると地図に書いてある。ミミックは宝箱の他に、壺や本棚など、様々なモノに擬態するモンスターで、しかもかなり強力である。うかつに宝箱を開けようとした初心者冒険者が襲われて死んでしまうこともある。

今回は後学のため、コジローがわざと次元剣で突付いてみた。
途端に大口を開けて襲いかかってくるミミックであったが、瞬時に次元剣で真っ二つにされる。

ミミックは倒すと高確率でアイテムをドロップする。今回は薬草が手に入った。売れば金になるが、今回は薬師のミルがいるので、持ち帰ってポーションを作る材料にするとの事だった。

リリパットは矢で離れた場所から攻撃してくるので厄介である。コジローには遠隔攻撃の能力がない。手の届く場所に居るのであれば、加速を発動してコジローが斬ってしまう事ができるが、手が届かないところから攻撃してくる相手には手が出ない。いつもならマロが魔法を撃って倒してくれるのだが、そのマロも今は居ない。

そこで、ジョニーのゴーレムに前に立ってもらって盾代わりになってもらいながら、弓で応戦することにした。リリパットの使う弓矢はごく小さいものでそれほど破壊力はないため、ジョニーの石のゴーレムには刺さることはない。

練習を始めたばかりのコジローとマルスの弓では、小さなリリパットにはなかなか当たらないのであるが、モニカも弓で参戦した。モニカは弓が上手かった。実は弓の名手である母親のネリーの指導で子供の頃から弓を使っていたのだそうだ。

そのうちマルスの弓も命中度が上がってきた。やはりマルスは才能豊かである。コジローは少し悔しい。弓はマルスと一緒に始めたのであるが、コジローの腕はなかなか上がらないのであった。成長がないわけではないので、コツコツ努力を続ければ、いずれは上手くなるのだろうが・・・。


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