162 / 184
第三部 暗殺者編
第162話 褒美は…
しおりを挟む
宰相 「金額でないなら爵位が不服か? 平民の冒険者からの取り立てであれば、本来なら准騎士爵当たりから始めるのが普通だ。それをいきなり男爵位を与えられるのは破格の扱いなのだぞ?」
クレイ 「いえ、そうではなくて……逆です。いささか失礼ではございますが、爵位についてははっきりと辞退させて頂きます」
宰相 「なんと、王命を断るのか」
クレイ 「先程、『私さえ良ければ…』と王はおっしゃっていましたよね…?」
王 「ふっふっふっ、左様。お主さえ良ければ、じゃ。強制ではない…」
ブランドはほっとした表情をし、宰相はがっくりと項垂れた。
王 「良かろう。褒美は何か別のものを考えよう」
こうして王との謁見は終了したのだが、そのままクレイ達は王の執務室へ呼ばれた。
今度は非公式、国王の個人的な会合ということであった。
部屋に入ると、クレイの叔母ジャクリンも居た。いや、ジャクリンは王宮騎士団長なので、護衛として居てもおかしくはないのだが……
王 「王家の盾、ヴァレット家集合じゃな」
クレイ 「……?!」
宰相 「隠さなくとも良いぞ。クレイ、お主がヴァレット卿の実の息子である事は知っておる」
クレイはブランドの顔を見た。
王 「別にブランドが漏らしたわけではない。王家は各貴族家の家督争いなどについてもすべて調査し、把握しておるのじゃよ」
宰相 「お主が叔母ジャクリンに殺されそうになった事も知っておるぞ」
クレイ 「そうだったんですか…」
バツの悪そうな顔をするジャクリン。
王 「ところでクレイ…、男爵位は断られたが、貴族に戻る気はないか? ヴァレット家の一員として貴族に復帰する事も可能じゃぞ?」
クレイ 「いえ……私は自由な冒険者が好きですから、貴族の立場は窮屈なのです」
宰相 「ヴァレット子爵の言った通りだな」
王 「ヴァレット子爵は、クレイは爵位は断るであろうと言っておった。無理強いすれば国外に逃げてしまうかも知れん、とな」(笑)
宰相 「多少強引に事を運べば、勢いで(爵位を)受け入れるかと思ったのだが。王を前に萎縮せずにはっきり自分の意見を言うとは、なかなかの胆力だな」
王 「宰相、クレイはダンジョン踏破者であるぞ。おそらく、ダンジョン深層の魔物に比べれば、王族貴族など怖くはないのだろうて」
宰相は何か酸っぱいものでも口にしたような表情で残念そうに首を振った。
王 「できれば貴族となって仕えて欲しかったが、望まないとあれば無理強いはせぬ。だが、そうなると、褒美をどうするか…。金も地位もいらぬと言われると…」
クレイ 「…それでは、二人が望めばですが、もし爵位を下さるというのであれば、私ではなくこの二人(ルルとリリ)に…」
ルル・リリ 「いらないにゃ!」
クレイ 「(即答かっ)…では、ヴァレット子爵を陞爵させて頂く事は可能でしょうか?」
王 「ほう? 苦労してダンジョンを踏破したのに、その褒美をヴァレット子爵に譲ると申すか? …ヴァレット子爵とお主にどんな関係があるのやら…?」
クレイ 「そ、それは…ヴァレット子爵にはダンジョン攻略に当たって色々と支援して頂きましたので…」
王 「ふっ、まぁ良かろう。と言っても褒美の陞爵を人に譲る事などできないのだが…実はな。もともとヴァレット子爵は伯爵に陞爵する予定であったのだ。なかなか口実が見つからなかったのだが、今回の件はちょうど良い。
だが、それはこちらの事情。お主への褒美とは関係ない話だ。それでは国として、お前に対しての義務を果たせん。他に何か欲しいものや、してほしい事はないか?」
クレイ 「……
……では、奴隷解放の許可を頂けますか?」
王 「…どういう事だ?」
クレイ 「実は……こちらの二人、ルルとリリは奴隷から解放する事ができましたが、まだ、十七人の奴隷を所有した状態でして。できればその者達も解放してやりたいのですが、その者達は戦争で捕虜になり、奴隷として払い下げられた者なのです。戦争奴隷であるため、売却はできても解放は禁じるという契約の縛りがつけられておりまして。その縛りを解除し、解放する許可を頂きたいのです」
宰相 「……
……アダモか!」
ガルム小隊の隊長アダモは、クレイの叔母ジャクリンの働きかけで宰相が奴隷として払い下げる事を許可したのだ。そう言えば、ジャクリンがどこぞの冒険者にアダモを引き渡したという報告書も見た記憶がある…。
クレイ 「……確かに、アダモは私の奴隷達のリーダーを任せております」
だが、確かアダモは重篤な身体欠損状態であったはず。そんな状態では何もできないだろうと払い下げを許可したのである。だが…
宰相はヴァレット子爵をちらりと見た。確かヴァレット子爵も大怪我をして再起不能に近い状態であったと報告を受けている。だが、今のヴァレット子爵の五体はすべて揃っており、特に健康に問題があるようには見えない。
つまり、アダモも……。
王 「…そうか。宰相、構わぬか?」
宰相 「いいえ、それはできません。その者達は戦争で負け、国を失った者達。いわばこの国に恨みを持つ者達です。特にアダモは高いカリスマ性と優れた戦のセンスを持っており、敵に回せば国にとっては脅威となりかねません」
クレイ 「それは、敵に回る事はないと思います…。…が、どうしても心配であるなら、魔法契約を交わすという事ではどうでしょうか? 解放はするが、この国に対して敵対行動は取れない成約は残す」
王 「なるほど、それなら問題なさそうだな。宰相?」
宰相 「……良いでしょう。ただし、魔法契約は王城で行います。その上でなら解放してもよいでしょう」
クレイは黙って頭を下げた。
クレイ 「いえ、そうではなくて……逆です。いささか失礼ではございますが、爵位についてははっきりと辞退させて頂きます」
宰相 「なんと、王命を断るのか」
クレイ 「先程、『私さえ良ければ…』と王はおっしゃっていましたよね…?」
王 「ふっふっふっ、左様。お主さえ良ければ、じゃ。強制ではない…」
ブランドはほっとした表情をし、宰相はがっくりと項垂れた。
王 「良かろう。褒美は何か別のものを考えよう」
こうして王との謁見は終了したのだが、そのままクレイ達は王の執務室へ呼ばれた。
今度は非公式、国王の個人的な会合ということであった。
部屋に入ると、クレイの叔母ジャクリンも居た。いや、ジャクリンは王宮騎士団長なので、護衛として居てもおかしくはないのだが……
王 「王家の盾、ヴァレット家集合じゃな」
クレイ 「……?!」
宰相 「隠さなくとも良いぞ。クレイ、お主がヴァレット卿の実の息子である事は知っておる」
クレイはブランドの顔を見た。
王 「別にブランドが漏らしたわけではない。王家は各貴族家の家督争いなどについてもすべて調査し、把握しておるのじゃよ」
宰相 「お主が叔母ジャクリンに殺されそうになった事も知っておるぞ」
クレイ 「そうだったんですか…」
バツの悪そうな顔をするジャクリン。
王 「ところでクレイ…、男爵位は断られたが、貴族に戻る気はないか? ヴァレット家の一員として貴族に復帰する事も可能じゃぞ?」
クレイ 「いえ……私は自由な冒険者が好きですから、貴族の立場は窮屈なのです」
宰相 「ヴァレット子爵の言った通りだな」
王 「ヴァレット子爵は、クレイは爵位は断るであろうと言っておった。無理強いすれば国外に逃げてしまうかも知れん、とな」(笑)
宰相 「多少強引に事を運べば、勢いで(爵位を)受け入れるかと思ったのだが。王を前に萎縮せずにはっきり自分の意見を言うとは、なかなかの胆力だな」
王 「宰相、クレイはダンジョン踏破者であるぞ。おそらく、ダンジョン深層の魔物に比べれば、王族貴族など怖くはないのだろうて」
宰相は何か酸っぱいものでも口にしたような表情で残念そうに首を振った。
王 「できれば貴族となって仕えて欲しかったが、望まないとあれば無理強いはせぬ。だが、そうなると、褒美をどうするか…。金も地位もいらぬと言われると…」
クレイ 「…それでは、二人が望めばですが、もし爵位を下さるというのであれば、私ではなくこの二人(ルルとリリ)に…」
ルル・リリ 「いらないにゃ!」
クレイ 「(即答かっ)…では、ヴァレット子爵を陞爵させて頂く事は可能でしょうか?」
王 「ほう? 苦労してダンジョンを踏破したのに、その褒美をヴァレット子爵に譲ると申すか? …ヴァレット子爵とお主にどんな関係があるのやら…?」
クレイ 「そ、それは…ヴァレット子爵にはダンジョン攻略に当たって色々と支援して頂きましたので…」
王 「ふっ、まぁ良かろう。と言っても褒美の陞爵を人に譲る事などできないのだが…実はな。もともとヴァレット子爵は伯爵に陞爵する予定であったのだ。なかなか口実が見つからなかったのだが、今回の件はちょうど良い。
だが、それはこちらの事情。お主への褒美とは関係ない話だ。それでは国として、お前に対しての義務を果たせん。他に何か欲しいものや、してほしい事はないか?」
クレイ 「……
……では、奴隷解放の許可を頂けますか?」
王 「…どういう事だ?」
クレイ 「実は……こちらの二人、ルルとリリは奴隷から解放する事ができましたが、まだ、十七人の奴隷を所有した状態でして。できればその者達も解放してやりたいのですが、その者達は戦争で捕虜になり、奴隷として払い下げられた者なのです。戦争奴隷であるため、売却はできても解放は禁じるという契約の縛りがつけられておりまして。その縛りを解除し、解放する許可を頂きたいのです」
宰相 「……
……アダモか!」
ガルム小隊の隊長アダモは、クレイの叔母ジャクリンの働きかけで宰相が奴隷として払い下げる事を許可したのだ。そう言えば、ジャクリンがどこぞの冒険者にアダモを引き渡したという報告書も見た記憶がある…。
クレイ 「……確かに、アダモは私の奴隷達のリーダーを任せております」
だが、確かアダモは重篤な身体欠損状態であったはず。そんな状態では何もできないだろうと払い下げを許可したのである。だが…
宰相はヴァレット子爵をちらりと見た。確かヴァレット子爵も大怪我をして再起不能に近い状態であったと報告を受けている。だが、今のヴァレット子爵の五体はすべて揃っており、特に健康に問題があるようには見えない。
つまり、アダモも……。
王 「…そうか。宰相、構わぬか?」
宰相 「いいえ、それはできません。その者達は戦争で負け、国を失った者達。いわばこの国に恨みを持つ者達です。特にアダモは高いカリスマ性と優れた戦のセンスを持っており、敵に回せば国にとっては脅威となりかねません」
クレイ 「それは、敵に回る事はないと思います…。…が、どうしても心配であるなら、魔法契約を交わすという事ではどうでしょうか? 解放はするが、この国に対して敵対行動は取れない成約は残す」
王 「なるほど、それなら問題なさそうだな。宰相?」
宰相 「……良いでしょう。ただし、魔法契約は王城で行います。その上でなら解放してもよいでしょう」
クレイは黙って頭を下げた。
12
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
狼になっちゃった!
家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで?
色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!?
……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう?
これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる