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第一章
第一話
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言い出したのは、いつも通り朝陽だった。
十月の終わり、つまりハロウィンライブ直前。練習後、突然
「なぁ、ABF観に行かねーか?」
と言った。
「ABFって何だ?」
ナオトが訊く。奏と優歌も不思議そうな顔をしている。春彦は知っているようだが、何故か一番驚いている。
「えーーーっ!!お前ら知らねぇの!?」
アンプに繋いだギターの音すら掻き消せそうな大声。うるさい。
「ARAMAKI BAND FESTIVALだよ!アマチュアバンドのフェス!!」
「荒巻……って、filamentの?」
優歌が尋ねる。
filament――かつて日本を席巻し、世界にその名を轟かせたバンド。十三年前に解散したが、現在でも彼らの楽曲はテレビなどでよく放送され、街中でも聴くことができるため、当時小学校にも入っていなかったbourgeonsのメンバー達でも知っている。というか日本に知らない人なんていない。
まあ、めちゃくちゃすごいバンドである。
で、荒巻というのはそのバンドのドラムなのだが、彼は十三年前に交通事故で命を落としている。そのfilamentの元メンバー達が運営するのが今年で十二回目を迎えるAGFだ。
「ふーん……。どんなバンドが出るの?」
「さっき朝陽が言ってたけど、みんなアマチュアバンドなんだ。日本中の、オーディションを勝ち抜いた実力者達。あ、オーディションはあるけどあくまでフェスだから、本番で審査とかはされないよ。でも……」
「でも観客の投票で、一バンドだけアンコールがあるんだ。そいつらが実質アマチュアバンドの日本一ってわけだ!」
春彦に丸投げしていた説明を最後だけ横取りしてドヤ顔してやがる。
「じゃあすげー奴らばっかりなのか」
ナオトが訊く。
ちょっと俯いて思案顔だ。
「そうだぜ!なっ、行こーぜ、面白そうだろ!!」
朝陽はギターケースを持つと「ということで、十一月三日は空けとけよ!」と言って出ていった。
十月の終わり、つまりハロウィンライブ直前。練習後、突然
「なぁ、ABF観に行かねーか?」
と言った。
「ABFって何だ?」
ナオトが訊く。奏と優歌も不思議そうな顔をしている。春彦は知っているようだが、何故か一番驚いている。
「えーーーっ!!お前ら知らねぇの!?」
アンプに繋いだギターの音すら掻き消せそうな大声。うるさい。
「ARAMAKI BAND FESTIVALだよ!アマチュアバンドのフェス!!」
「荒巻……って、filamentの?」
優歌が尋ねる。
filament――かつて日本を席巻し、世界にその名を轟かせたバンド。十三年前に解散したが、現在でも彼らの楽曲はテレビなどでよく放送され、街中でも聴くことができるため、当時小学校にも入っていなかったbourgeonsのメンバー達でも知っている。というか日本に知らない人なんていない。
まあ、めちゃくちゃすごいバンドである。
で、荒巻というのはそのバンドのドラムなのだが、彼は十三年前に交通事故で命を落としている。そのfilamentの元メンバー達が運営するのが今年で十二回目を迎えるAGFだ。
「ふーん……。どんなバンドが出るの?」
「さっき朝陽が言ってたけど、みんなアマチュアバンドなんだ。日本中の、オーディションを勝ち抜いた実力者達。あ、オーディションはあるけどあくまでフェスだから、本番で審査とかはされないよ。でも……」
「でも観客の投票で、一バンドだけアンコールがあるんだ。そいつらが実質アマチュアバンドの日本一ってわけだ!」
春彦に丸投げしていた説明を最後だけ横取りしてドヤ顔してやがる。
「じゃあすげー奴らばっかりなのか」
ナオトが訊く。
ちょっと俯いて思案顔だ。
「そうだぜ!なっ、行こーぜ、面白そうだろ!!」
朝陽はギターケースを持つと「ということで、十一月三日は空けとけよ!」と言って出ていった。
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