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閑話2
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会津がその店に入ったのは偶然だった。
三駅向こうにある高校のサッカー部と親善試合を行った帰りで、部活の友人数人と駅まで歩いているとたまたま某有名ファストフード店が目に入った。
食べ盛りの上、運動して腹が減っている少年たちは家に帰るまでの腹ごしらえにここで軽く食べていこうという話になり店の中へ入った。
昼時で込み合った店内で空いている席を探しに行った友人たちの代わりにレジで注文しておこうと会津が列に並んでいると、だんだんと減っていく人の向こうから聞き覚えのある大きな声が響いてきた。
前の客が自分と変わらない背丈のせいで先が見えない。
会津がそっと前の客の後ろから顔を出してレジを覗き込んでみれば、やはりそこには見知った顔があった。
「羽柴……?」
目の前にいる自分の肩ほどの背丈の少年を見ながら驚いたように会津は呟いた。
すると羽柴と呼ばれた赤い眼鏡の少年が声を掛けられた先を見やって、そこに背が高く体つきのしっかりした小麦色の肌をした少年を見つけると気安げに「よう」と声を掛けた。
「会津じゃん。そのジャージ姿……部活帰り?」
赤い帽子に赤いエプロンといったファストフード店の従業員服に身を包んだ羽柴は、カウンターに立ちながら直前の客の注文品を袋に詰めつつそう聞いた。
「他校で試合があってその帰り」
「だから学校から遠いこんな店にいるのか。一人?他の部員は?」
「今席取りに行ってる」
羽柴はそれを聞いてうんうんと頷きながら、その間にも詰め終わった商品を注文客に渡し愛想の良い笑顔と溌剌とした”ありがとうございましたー”で見送っている。
その手際のよさから一朝一夕の経験値でないことが窺い知れるが、あまりにも意外な場所での遭遇に羽柴から「で、何にする?」と聞かれるまで自分が何をしに来たかも忘れて突っ立っていた。慌ててメニューを見た会津は、真っ先に目に入るようでかでかと載った期間限定の商品を指差した。
「バーガーはこれ3つ、1つはポテトとコーラのセット、もう1つはクリスピーとオレンジジュースのセット、最後は単品でポテト大とコーラで」
「セット2つに単品ですね。……ご一緒に期間限定のソースが付いたから揚げはいかがですか?」
注文を繰り返しながら、友人相手で気恥ずかしいのか、どこかいたずらっぽくセールストークを向けてくるのに気が和んだ会津が「じゃそれひとつ」と答えると、羽柴は「ありがとーございまーす!」と軽快にレジを打ちこむ。
「羽柴ここでのバイト長いのか?」
「高校入ってすぐだから、そんなに長くはないな」
「もしかして羽柴が部活やってないのってバイトしてるから?」
「そうそう!俺の趣味、金かかるからなー」
あははと笑って羽柴は会津を見た。
その様子が、わかるだろ?と言わんばかりで、会津は笑みを浮かべながら頷く。
「羽柴んちのハードとかソフトとかPCとか、すげーもんな」
羽柴の部屋は、半分を机と一体型になったベッドに占領され、残る壁は棚で埋め尽くされている。彼の部屋には旧型から新型までのゲーム機とソフトが詰め込まれ、スペックの高そうなPCが異様な存在感をかもし出しながら鎮座している。その上、数台のディスプレイが置かれているので人は三人入れば満員で、その他は通り道しかない。
そんな窮屈ながらも会津にとっては夢のような羨ましい空間を思い出し一人納得する。
「てっきり金持ちの家の子だと思ってた」
「まさか!」
大きな目をさらに広げて羽柴は顔の前で手を振った。
「うちの家訓 ”働かざる者遊ぶべからず” だから!」
ちなみに働くという言葉には勉学もその内に入っていると苦笑いしながら羽柴は言う。
「へー。じゃああのハードとか全部自分で買ったのか?」
「い、いやそりゃ、親にもらったりとかあるけど……。最近は自分で買ってる!」
そのあたり妙なプライドがあるらしく、レジを打つのを忘れて腕を組みつつ威張っている羽柴を見て可笑しそうに会津が笑っていると、いつの間にか他の客が後ろに並んでいたようで「はやくしろよ」とせっついてきた。
「も、申し訳ございません! お客様、他にご注文はございませんかー?」
慌てて仕事モードに切り替えた羽柴は、会津に最後の確認を取る。
その唐突な切り替わりにまた可笑しさが込み上げてきた会津だったが、これ以上引き止めるのも悪いので首を振って会計を済ませた。
羽柴は会津の会計を終えオーダーを伝え終わった後、横に居た店員とレジを交代し、代わりに会津たちの商品を盆に載せていく。
「一人で持てる?持ってってやろうか?」
「いや、平気。もう来るだろうし」
カップにドリンクを入れて、出来上がった商品を置いていくその流れるような羽柴の手際を見つつ、ふと会津は思いついたことを聞いた。
「高槻も知ってんのか?羽柴がバイトしてること」
「もちろん。たまに来るぜ、あいつ」
「へぇ!」
会津は意外そうに声を上げた。
「誰と来てんの?」
会津は羽柴以外とつるむ高槻を知らないので興味深げに尋ねると、羽柴は他の店員から山盛りのポテトを受け取りつつ「だいたい一人だな」と答えた。
「まじか、なんか大人だな。様になってそうだ」
一人でファストフード店に入るクールな同級生をイメージし、会津は人と一緒の時にしか入ったことのない自分と比べてどことなく羨ましげにそう言った。
「大人なもんか!」
しかしそれを聞いた羽柴は思わず身を屈めながら噴き出した。
「俺らくらいで一人で店に入るって勇気いらないか?」
「た、確かにそれは分かるけど、そうじゃなくて。あいつの場合ここに逃げてきてるだけだから!」
会津の大人発言がそんなに可笑しかったのか、羽柴は他のお客の目を気にして必死に耐えようとするが、くっくと笑いが収まらないようである。
「逃げるって何から?」
「ピアノだよ。あいつピアノの練習がほんと嫌いみたいでさ、たまにここまで逃げて来るんだよ」
「ああ、なるほど」
ようやく合点がいったと納得しかけたところで、会津は首をひねった。
「でも俺、高槻が練習頑張ってるイメージしかねぇけど」
その言葉に羽柴は堪えていた笑いをぴたりと止めた。
「さ、最近はそうだな。昔!昔の話し!」
会津の言うように、夏のコンクールの予選に向けて遊ぶ暇も惜しんで取り組んでいる高槻の姿を思い出した羽柴は、どこか戸惑ったように矢継ぎ早に続けた。
「やっとピアノに興味出てきたみたいで、高槻も成長したってことだよな!まあ、来てもろくな注文しないし!別に良いんだけど!!」
「ろくな注文?なんだそれ」
可笑しそうに笑う会津に羽柴は聞いてくれと苦笑いを浮かべる。
「会津も知ってるだろ。うちのチェーン店の名物無料商品」
「コーヒー?」
「違う違う。そういう期間限定のやつじゃなくて」
「もしかして……スマイル?」
「そうそれ!俺を困らすために毎回言うんだよ」
「羽柴と高槻もそんな冗談言い合うんだな。しかも高槻がそんなこというイメージなかった。どっちかって言うとそういうの恥ずかしがりそうだろ?」
「最初は俺が冗談でスマイルもございますーみたいなことを言ってたんだけど、いつだったか本当に注文してきたことあってさ。こっちは冗談のつもりだから戸惑うじゃん!そしたらそれが面白かったみたいで、そっからずっと頼んで来るんだ」
「へー。今日は二人の意外なとこばっか知るなー」
会津が面白そうに笑った。
なかなか来ない期間限定のバーガーを背後の厨房を窺いながら待っている羽柴に向けて、会津が言った。
「それで羽柴はちゃんと笑うのか?」
「仕事だからな。ただ、ビターなやつだけど!」
「はは!それいいな!俺も注文すればよかった」
すると羽柴はふざけて思い切り口を”にっ”と横に伸ばした作り物の苦い笑顔を会津に向ける。
「こんなんでよろしければ、どーぞ!」
それを見た会津は、今度こそ溜まらず噴き出した。
「やべぇ、これは高槻の気持ち分かる」
ひとしきり笑った会津は大きく息を吐いた後、ニカリと笑って羽柴を見た。
「お前のその顔好きだわー何度でも見たくなるな。俺も言ってみてぇ」
「まじかよ、やるんじゃなかった」
二人で笑いあっていると、ようやくバーガーが出来上がったのか店員の一人が羽柴に手渡した。 羽柴はそれをパパッと盆に載せ終えて「お待たせしました!」とちょっと煩いくらいの大きな声でそう言った。
しかし会津はそんな声量も気にすることなく受け取り、ようやく来た友人たちと盆を分けてカウンターを離れていこうとしたが、ふいに会津が羽柴を振り返った。
「今日バイト何時まで?」
「あと一時間くらいかな」
「よかったらこの後一緒に喋らねぇ?」
「いいぜ!俺も色々話したいことあるし」
「よし、じゃあ一時間後にまた注文しに行くから待ってろよ」
「どうして?」
何も律儀に再注文する必要はないのではと、羽柴が訝しげに首をかしげると、会津はいたずらを思いついたような楽しげな顔をして続けた。
「俺も注文するから。”スマイル、テイクアウトで”って」
その言葉を聞いた瞬間、羽柴も会津の周りに居たその友人たちも、なんだったらそれを聞きとめてしまった人間全てが会津を見て固まった。
女子のほとんどは会津の良い笑顔に顔を赤らめているが、男たちは正にドン引きと言った様子である。
「……会津って、案外コピペとか好きだったんだな?」
一足先に強張りをといた羽柴が恐る恐るそういうと、会津は首をかしげた。
「なんだそれ?」
「そうか、無自覚か。考え直してくれ」
三駅向こうにある高校のサッカー部と親善試合を行った帰りで、部活の友人数人と駅まで歩いているとたまたま某有名ファストフード店が目に入った。
食べ盛りの上、運動して腹が減っている少年たちは家に帰るまでの腹ごしらえにここで軽く食べていこうという話になり店の中へ入った。
昼時で込み合った店内で空いている席を探しに行った友人たちの代わりにレジで注文しておこうと会津が列に並んでいると、だんだんと減っていく人の向こうから聞き覚えのある大きな声が響いてきた。
前の客が自分と変わらない背丈のせいで先が見えない。
会津がそっと前の客の後ろから顔を出してレジを覗き込んでみれば、やはりそこには見知った顔があった。
「羽柴……?」
目の前にいる自分の肩ほどの背丈の少年を見ながら驚いたように会津は呟いた。
すると羽柴と呼ばれた赤い眼鏡の少年が声を掛けられた先を見やって、そこに背が高く体つきのしっかりした小麦色の肌をした少年を見つけると気安げに「よう」と声を掛けた。
「会津じゃん。そのジャージ姿……部活帰り?」
赤い帽子に赤いエプロンといったファストフード店の従業員服に身を包んだ羽柴は、カウンターに立ちながら直前の客の注文品を袋に詰めつつそう聞いた。
「他校で試合があってその帰り」
「だから学校から遠いこんな店にいるのか。一人?他の部員は?」
「今席取りに行ってる」
羽柴はそれを聞いてうんうんと頷きながら、その間にも詰め終わった商品を注文客に渡し愛想の良い笑顔と溌剌とした”ありがとうございましたー”で見送っている。
その手際のよさから一朝一夕の経験値でないことが窺い知れるが、あまりにも意外な場所での遭遇に羽柴から「で、何にする?」と聞かれるまで自分が何をしに来たかも忘れて突っ立っていた。慌ててメニューを見た会津は、真っ先に目に入るようでかでかと載った期間限定の商品を指差した。
「バーガーはこれ3つ、1つはポテトとコーラのセット、もう1つはクリスピーとオレンジジュースのセット、最後は単品でポテト大とコーラで」
「セット2つに単品ですね。……ご一緒に期間限定のソースが付いたから揚げはいかがですか?」
注文を繰り返しながら、友人相手で気恥ずかしいのか、どこかいたずらっぽくセールストークを向けてくるのに気が和んだ会津が「じゃそれひとつ」と答えると、羽柴は「ありがとーございまーす!」と軽快にレジを打ちこむ。
「羽柴ここでのバイト長いのか?」
「高校入ってすぐだから、そんなに長くはないな」
「もしかして羽柴が部活やってないのってバイトしてるから?」
「そうそう!俺の趣味、金かかるからなー」
あははと笑って羽柴は会津を見た。
その様子が、わかるだろ?と言わんばかりで、会津は笑みを浮かべながら頷く。
「羽柴んちのハードとかソフトとかPCとか、すげーもんな」
羽柴の部屋は、半分を机と一体型になったベッドに占領され、残る壁は棚で埋め尽くされている。彼の部屋には旧型から新型までのゲーム機とソフトが詰め込まれ、スペックの高そうなPCが異様な存在感をかもし出しながら鎮座している。その上、数台のディスプレイが置かれているので人は三人入れば満員で、その他は通り道しかない。
そんな窮屈ながらも会津にとっては夢のような羨ましい空間を思い出し一人納得する。
「てっきり金持ちの家の子だと思ってた」
「まさか!」
大きな目をさらに広げて羽柴は顔の前で手を振った。
「うちの家訓 ”働かざる者遊ぶべからず” だから!」
ちなみに働くという言葉には勉学もその内に入っていると苦笑いしながら羽柴は言う。
「へー。じゃああのハードとか全部自分で買ったのか?」
「い、いやそりゃ、親にもらったりとかあるけど……。最近は自分で買ってる!」
そのあたり妙なプライドがあるらしく、レジを打つのを忘れて腕を組みつつ威張っている羽柴を見て可笑しそうに会津が笑っていると、いつの間にか他の客が後ろに並んでいたようで「はやくしろよ」とせっついてきた。
「も、申し訳ございません! お客様、他にご注文はございませんかー?」
慌てて仕事モードに切り替えた羽柴は、会津に最後の確認を取る。
その唐突な切り替わりにまた可笑しさが込み上げてきた会津だったが、これ以上引き止めるのも悪いので首を振って会計を済ませた。
羽柴は会津の会計を終えオーダーを伝え終わった後、横に居た店員とレジを交代し、代わりに会津たちの商品を盆に載せていく。
「一人で持てる?持ってってやろうか?」
「いや、平気。もう来るだろうし」
カップにドリンクを入れて、出来上がった商品を置いていくその流れるような羽柴の手際を見つつ、ふと会津は思いついたことを聞いた。
「高槻も知ってんのか?羽柴がバイトしてること」
「もちろん。たまに来るぜ、あいつ」
「へぇ!」
会津は意外そうに声を上げた。
「誰と来てんの?」
会津は羽柴以外とつるむ高槻を知らないので興味深げに尋ねると、羽柴は他の店員から山盛りのポテトを受け取りつつ「だいたい一人だな」と答えた。
「まじか、なんか大人だな。様になってそうだ」
一人でファストフード店に入るクールな同級生をイメージし、会津は人と一緒の時にしか入ったことのない自分と比べてどことなく羨ましげにそう言った。
「大人なもんか!」
しかしそれを聞いた羽柴は思わず身を屈めながら噴き出した。
「俺らくらいで一人で店に入るって勇気いらないか?」
「た、確かにそれは分かるけど、そうじゃなくて。あいつの場合ここに逃げてきてるだけだから!」
会津の大人発言がそんなに可笑しかったのか、羽柴は他のお客の目を気にして必死に耐えようとするが、くっくと笑いが収まらないようである。
「逃げるって何から?」
「ピアノだよ。あいつピアノの練習がほんと嫌いみたいでさ、たまにここまで逃げて来るんだよ」
「ああ、なるほど」
ようやく合点がいったと納得しかけたところで、会津は首をひねった。
「でも俺、高槻が練習頑張ってるイメージしかねぇけど」
その言葉に羽柴は堪えていた笑いをぴたりと止めた。
「さ、最近はそうだな。昔!昔の話し!」
会津の言うように、夏のコンクールの予選に向けて遊ぶ暇も惜しんで取り組んでいる高槻の姿を思い出した羽柴は、どこか戸惑ったように矢継ぎ早に続けた。
「やっとピアノに興味出てきたみたいで、高槻も成長したってことだよな!まあ、来てもろくな注文しないし!別に良いんだけど!!」
「ろくな注文?なんだそれ」
可笑しそうに笑う会津に羽柴は聞いてくれと苦笑いを浮かべる。
「会津も知ってるだろ。うちのチェーン店の名物無料商品」
「コーヒー?」
「違う違う。そういう期間限定のやつじゃなくて」
「もしかして……スマイル?」
「そうそれ!俺を困らすために毎回言うんだよ」
「羽柴と高槻もそんな冗談言い合うんだな。しかも高槻がそんなこというイメージなかった。どっちかって言うとそういうの恥ずかしがりそうだろ?」
「最初は俺が冗談でスマイルもございますーみたいなことを言ってたんだけど、いつだったか本当に注文してきたことあってさ。こっちは冗談のつもりだから戸惑うじゃん!そしたらそれが面白かったみたいで、そっからずっと頼んで来るんだ」
「へー。今日は二人の意外なとこばっか知るなー」
会津が面白そうに笑った。
なかなか来ない期間限定のバーガーを背後の厨房を窺いながら待っている羽柴に向けて、会津が言った。
「それで羽柴はちゃんと笑うのか?」
「仕事だからな。ただ、ビターなやつだけど!」
「はは!それいいな!俺も注文すればよかった」
すると羽柴はふざけて思い切り口を”にっ”と横に伸ばした作り物の苦い笑顔を会津に向ける。
「こんなんでよろしければ、どーぞ!」
それを見た会津は、今度こそ溜まらず噴き出した。
「やべぇ、これは高槻の気持ち分かる」
ひとしきり笑った会津は大きく息を吐いた後、ニカリと笑って羽柴を見た。
「お前のその顔好きだわー何度でも見たくなるな。俺も言ってみてぇ」
「まじかよ、やるんじゃなかった」
二人で笑いあっていると、ようやくバーガーが出来上がったのか店員の一人が羽柴に手渡した。 羽柴はそれをパパッと盆に載せ終えて「お待たせしました!」とちょっと煩いくらいの大きな声でそう言った。
しかし会津はそんな声量も気にすることなく受け取り、ようやく来た友人たちと盆を分けてカウンターを離れていこうとしたが、ふいに会津が羽柴を振り返った。
「今日バイト何時まで?」
「あと一時間くらいかな」
「よかったらこの後一緒に喋らねぇ?」
「いいぜ!俺も色々話したいことあるし」
「よし、じゃあ一時間後にまた注文しに行くから待ってろよ」
「どうして?」
何も律儀に再注文する必要はないのではと、羽柴が訝しげに首をかしげると、会津はいたずらを思いついたような楽しげな顔をして続けた。
「俺も注文するから。”スマイル、テイクアウトで”って」
その言葉を聞いた瞬間、羽柴も会津の周りに居たその友人たちも、なんだったらそれを聞きとめてしまった人間全てが会津を見て固まった。
女子のほとんどは会津の良い笑顔に顔を赤らめているが、男たちは正にドン引きと言った様子である。
「……会津って、案外コピペとか好きだったんだな?」
一足先に強張りをといた羽柴が恐る恐るそういうと、会津は首をかしげた。
「なんだそれ?」
「そうか、無自覚か。考え直してくれ」
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