sunlight curtain【サンライト・カーテン】

オガタカイ

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ACT.1 きみと温泉旅行大作戦♡

4-1

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そして、ついにやってきた週末。


着替えや貴重品などの準備が入ったボストンバックと、速生の仕事関連のものを詰め込んだキャリーケースを手に、ひとりエレベーターを降りる夕人。

「あ……来た来た。って……でかっ」


エントランスを出た所で辺りを見渡していると、ハイルーフタイプのワゴン車がゆっくりと目の前に停車する。

ーーバタンッ

運転席から降りたスーツ姿の速生が、「夕人、助手席」と言いながらトランクに荷物を積む。




「俺たち二人だけなのに、何もこんな大きいの借りなくても……」

夕人はシートベルトを装着しながら、背後に目をやる。
8人乗り有名国産車の後部座席はとても広くゆったりとした作りで、まるでこれから大人数の家族旅行でも行くような気分になる。


「え~~だってさ、たまには乗ってみたいじゃん?普段ちっさい社用車だしせっかくレンタカー利用するならな。大は小を兼ねるって言うだろ?
いや~しかし広々としてていいわ。
ーーさすが天下のトヨ◯、無敵のアル◯ァード」

「ふーん………。
ーーーレンタカー料これも、経費で落ちるのかよ?」

「えっ?あ、ああ勿論!
現に俺、スーツ着て乗ってるだろ?今日の俺は、旅行ではなく。
あくまで仕事だから。!」

「ふーん……。」


旅館へのチェックインは15時の予定。

しかし、“視察”という立派な業務目的のある速生は到着後すぐに取引先の担当者と落ち合いカフェ店舗などをまわらないといけないため、予め戦闘服リクルートスーツを身に纏っていた。



ーーーなんだかんだ言って、結局、仕事なんだな……。


寒さ対策も兼ねて顎下まであるリブ編みニットに、キャメルカラーのPコートを羽織る普段着姿の自分が、なんだかとても、はしゃいでしまっているように思えて居た堪れなくなる。


ーーー俺にも出来ること、何かないかな……。


なんだかんだ言いつつほとんどすべて。
家のことから何から、なんなら金銭面までーー…
速生に全面的に頼ってしまっていることが今更になって申し訳なく思えてきてしまい、夕人は俯く。


(……あれ、夕人、なんか元気ない?
少し前までウキウキしてるように見えたのに。
ーーー何考えてんだ?)



突然黙り込んで伏せ目がちに、俯いた夕人を少し不思議そうに見つめ、速生はシートベルトを装着するとカーナビのタッチパネルを操作する。


「えーっと……旅館までは高速通って2時間くらいかな。
ーー途中、休憩入れるか?俺は大丈夫だけど」


「…………あのさ」

「ん?」




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