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第六章/耐えられないようです。
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「おや岳どの。三橋教諭はいずこに?」
「来客の予定があるから、って俺に留守を任せて出てった。必要なら内線で呼ぶよう言われてるけど、惟花の用事は?」
「月のものです」
「――お前はそういうのも躊躇なく口にするのな」
「ご承知でしょうが、愚生の生理は重いのです。教諭には毎月、たびたびお世話になっております」
「まあ、知ってるけど……じゃあ、先生、呼んだ方がいいのか?」
「いえいえ。小一時間ほど横にさせていただければ楽になるゆえ、お気遣いなく」
そう言うと、惟花はブレザーを脱いで、さっさとベッドに上がってしまう。
俺はもう一床のベッドに腰を下ろした。まだ寝不足特有の浮遊感は残っているけれど、惟花の登場で眠気は少し失せている。腕を組み、しばし考えて、俺は惟花に声をかけた。
「話をするのもしんどいか?」
「いえ。なにか?」
俯せの格好で、顔だけ振り向いた惟花に、じ、っと見つめられて、急に気恥ずかしくなる。目を背け、喉につかえたものを吐き出すように、俺は言った。「……泉澄のことだよ」
途端に惟花は、がば、っと起き上がる。
「起きてもいいのか?」
「いまので猛烈に脳内麻薬が分泌致した」
……やっぱり、こいつに訊くべきじゃなかった。
後悔したけれど、惟花はいちど差し出された餌を見逃してくれるタイプじゃない。案の定、惟花は焦れったそうに肩を揺らして、先を促した。
「それで、何なのです。泉澄どのがなにか?」
「……お前、泉澄の憑き物は、落とした……って言ったよな?」
「如何にも」
「落とせてない……どころか、こっちまで巻き添えになってる」
「――と申しますと?」
穏やかな追求に、言葉が詰まる。名前を出してしまったせいで、脳裏に昨晩の強烈な体験が蘇った。俺は膝を閉じ、俯いて、どうにか声を絞り出す。
「……すぐ、興奮するようになった」
「具体的には?」
「っ……そ、そこまで言わなきゃ駄目なのか?!」
「正確にお話いただかねば、愚生としても正しく対処は致しかねる」そううそぶく惟花の表情は、絶好の玩具を見つけた猫さながらだった。「まあ、察しはつきますかな。泉澄どのの顔を思い浮かべると、興奮する……のですな?」
渋々、首を縦に振る。
「言い換えれば――欲情する」
「わざわざ言い換えるな」
「興奮、だけでは実情にそぐいませぬ。“巻き添え”と仰言るからには、泉澄どのと似たような状態になっている、と推察できまする」
つくづく、妙なところで察しがいい奴だった。洞察力の使い方、絶対に間違えてる。
「たとえば……たったいま、泉澄どのの話を持ち出しただけで、御身に何か変化は生じておられるか?」
「へ……変化って、何だよ……?」
「お戯れを。その程度の婉曲表現が理解できぬほど初心ではありますまい……っ!」
突然、惟花がベッドを飛び出した。俺が身構えるより早く、俺の前にひざまずいた惟花の手が、俺の股間をさわさわと撫でる。
「……やはり。隆々とそそり立っておられる……♪」
「おま……馬鹿、どこ触ってるんだよっ……!」
「魔羅ですな。或いは男根と申しましょうか、それとも欧米風に、ペ――」
「いや、そうじゃなくて……そんな風に、まさぐるなって……!」
細い指がズボン越しに陰茎の形を探るように動く。押しのけようとしたけれど、どこに触れていいのか解らなくてためらう俺に、惟花は畳みかけてきた。
「岳どのは、泉澄どのの“巻き添え”で取り憑かれた、とお考えなのでしょう?
愚生の“お祓い”に効果がない、とお考えなら、泉澄どのと話し合うなり、もっと信頼出来る筋に相談なさればいい。ならば何故、あえて愚生を責めるのです?
それはつまり、思いつ――直感で施した愚生の儀式が、幾許かは効果を上げていた、という証左」
「……おい、いま言い直したけど、“直感でやった”ってのも聞き捨てならないぞ?!」
「まあ、細かいことなどいいではありませぬか。
愚生の“儀式”は所詮、ただの思いつきだとしても、鬱積したものを放出すれば、ひとまず興奮が収まることは確実。
で、あれば――岳どのと付き合いの古い友人として、発散のお手伝いをするのにやぶさかではありませぬ……♡」
「お……おい、ちょっと、待て……!」
乱暴な理屈に呆気に取られているあいだに、惟花の手は俺のベルトを緩め、ズボンのボタンを外している。気づいたときには、パンツまでまくられ、勃起した陰部を外気に晒されていた。
「来客の予定があるから、って俺に留守を任せて出てった。必要なら内線で呼ぶよう言われてるけど、惟花の用事は?」
「月のものです」
「――お前はそういうのも躊躇なく口にするのな」
「ご承知でしょうが、愚生の生理は重いのです。教諭には毎月、たびたびお世話になっております」
「まあ、知ってるけど……じゃあ、先生、呼んだ方がいいのか?」
「いえいえ。小一時間ほど横にさせていただければ楽になるゆえ、お気遣いなく」
そう言うと、惟花はブレザーを脱いで、さっさとベッドに上がってしまう。
俺はもう一床のベッドに腰を下ろした。まだ寝不足特有の浮遊感は残っているけれど、惟花の登場で眠気は少し失せている。腕を組み、しばし考えて、俺は惟花に声をかけた。
「話をするのもしんどいか?」
「いえ。なにか?」
俯せの格好で、顔だけ振り向いた惟花に、じ、っと見つめられて、急に気恥ずかしくなる。目を背け、喉につかえたものを吐き出すように、俺は言った。「……泉澄のことだよ」
途端に惟花は、がば、っと起き上がる。
「起きてもいいのか?」
「いまので猛烈に脳内麻薬が分泌致した」
……やっぱり、こいつに訊くべきじゃなかった。
後悔したけれど、惟花はいちど差し出された餌を見逃してくれるタイプじゃない。案の定、惟花は焦れったそうに肩を揺らして、先を促した。
「それで、何なのです。泉澄どのがなにか?」
「……お前、泉澄の憑き物は、落とした……って言ったよな?」
「如何にも」
「落とせてない……どころか、こっちまで巻き添えになってる」
「――と申しますと?」
穏やかな追求に、言葉が詰まる。名前を出してしまったせいで、脳裏に昨晩の強烈な体験が蘇った。俺は膝を閉じ、俯いて、どうにか声を絞り出す。
「……すぐ、興奮するようになった」
「具体的には?」
「っ……そ、そこまで言わなきゃ駄目なのか?!」
「正確にお話いただかねば、愚生としても正しく対処は致しかねる」そううそぶく惟花の表情は、絶好の玩具を見つけた猫さながらだった。「まあ、察しはつきますかな。泉澄どのの顔を思い浮かべると、興奮する……のですな?」
渋々、首を縦に振る。
「言い換えれば――欲情する」
「わざわざ言い換えるな」
「興奮、だけでは実情にそぐいませぬ。“巻き添え”と仰言るからには、泉澄どのと似たような状態になっている、と推察できまする」
つくづく、妙なところで察しがいい奴だった。洞察力の使い方、絶対に間違えてる。
「たとえば……たったいま、泉澄どのの話を持ち出しただけで、御身に何か変化は生じておられるか?」
「へ……変化って、何だよ……?」
「お戯れを。その程度の婉曲表現が理解できぬほど初心ではありますまい……っ!」
突然、惟花がベッドを飛び出した。俺が身構えるより早く、俺の前にひざまずいた惟花の手が、俺の股間をさわさわと撫でる。
「……やはり。隆々とそそり立っておられる……♪」
「おま……馬鹿、どこ触ってるんだよっ……!」
「魔羅ですな。或いは男根と申しましょうか、それとも欧米風に、ペ――」
「いや、そうじゃなくて……そんな風に、まさぐるなって……!」
細い指がズボン越しに陰茎の形を探るように動く。押しのけようとしたけれど、どこに触れていいのか解らなくてためらう俺に、惟花は畳みかけてきた。
「岳どのは、泉澄どのの“巻き添え”で取り憑かれた、とお考えなのでしょう?
愚生の“お祓い”に効果がない、とお考えなら、泉澄どのと話し合うなり、もっと信頼出来る筋に相談なさればいい。ならば何故、あえて愚生を責めるのです?
それはつまり、思いつ――直感で施した愚生の儀式が、幾許かは効果を上げていた、という証左」
「……おい、いま言い直したけど、“直感でやった”ってのも聞き捨てならないぞ?!」
「まあ、細かいことなどいいではありませぬか。
愚生の“儀式”は所詮、ただの思いつきだとしても、鬱積したものを放出すれば、ひとまず興奮が収まることは確実。
で、あれば――岳どのと付き合いの古い友人として、発散のお手伝いをするのにやぶさかではありませぬ……♡」
「お……おい、ちょっと、待て……!」
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