『セカンドスクール 』 ガングロが生存していた頃のある通信制高校野球部の軌跡

ボブこばやし

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チーム佐々木

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 ターミナル駅の夜空には月がでていた。地上は雑踏であった。人混みの隙間から4人が見えた。擦り切れた帽子を浅くかぶった秋本。にこにこしているちょっと小太りな有美。神経質そうな小柄な友紀。そして坊主頭の剛が反っくり返ってあたりを見回していた。剛は一人だけ我関せずの態度で煙草をくわえていた。十字架のピアスが垂れ下がった耳には次の煙草が挟まれていた。剛は鳶の格好で現場から直行してきたことがわかった。
「としねえ。こっちこっち。」
 秋本が手を振った。それに応えて、佐々木が大物政治家のように手を挙げた。
「オッ。お前ね。そんな大きな声で呼ぶんじゃねいよ。天下の往来だろ。」
 佐々木の声の方が二倍は大きかった。佐々木は秋本の帽子のツバを持つと破けんばかりに深く被せた。
「『としねぇ』なんて。言うんじゃないよ。世間様にはあんた『年ねえ。』って聞こえるだろう。あ、はずかしい。」
「オッ。お前ね。そんな大きな声で呼ぶんじゃねいよ。天下の往来だろ。」
 佐々木の方が二倍は声が大きかった。佐々木は秋本の帽子のツバを持つと破けんばかりに深く被せた。
「『としねぇ』なんて。言うんじゃないよ。世間様にはあんた『年ねえ。』って聞こえるだろう。あ、はずかしい。」
 有美がぷっと笑った。
「佐々木さんが自分の名前は俊子だから。『としねぇ』って言えって言ったから。・・だから。」
 秋本は子供がお母さんから叱られたようにシュンとして、言い訳を取り繕っているようであった。
「『年ねぇ。』じゃなくて『敏しねぇ』」って言えって言ったんだろう。」」 
 佐々木は声を低くしたと思うと今度は頭のてっぺんから声を出すように発音の仕方を伝授した。
「わかったよ。いいよもう。」
 秋本はどんどん退行してきた。
 有美はこの人たちとは関係ないと言わんばかりに後ろを向いたが、堪えた笑いで両肩が揺れていた。
「ちょっと、集まってみ。」
 佐々木は野球部の監督のように手を広げて四人を集めた。両肩を揺すらせていた有美は佐々木の方を向くと、笑い涙を拭いていた。剛は両手をポケットに突っ込み腹を突き出しながら、有美とは違う意味で肩を左右に揺すりながら近寄った。友紀はどこでも目立たなかった。しかし、存在しなかったら保護者のような有美が間違いなく探し回るから、有美の近くにいたのだろう。
 この集まりはだいたい一ヶ月おきに行われる通信制だけにオフ会のようなものだった。同じ学校の生徒と言えばその通りだが、それぞれのバックグランドは全く違っていた。
「この人、内の生徒で田中・・・。」
「美樹です。」
 美樹は補足しながら頭を丁寧に下げた。
「そう、美樹ちゃん。・・・よろしくな。」
 佐々木のドスが効いた『よろしくな。』には、この人の人格を全て受け入れなくてはならないという意味がこもっていた。
「佐々木さん。」
 秋本はまた叱責をくらうのを警戒して、言葉を選んだ。
「何ですか。え。何て言いました。」
 慇懃無礼に言うと、佐々木は秋本のほっぺたをつねった。
「としねぇ。まず、飲みでいいっすか。」
 秋本は頭のてっぺんから声を出した。
「よ~し。参りましょう。」
 もうこうなると佐々木は水戸黄門であった。他は阿諛追従するだけであった。
 駅のコンコースを歩く佐々木黄門のご一行は異彩をはなっていた。逆から来る人たちは皆避けて通った。まるで群集に楔を刺しながら歩いているようだった。もちろん、楔の役割はほとんど剛が握っていた。駅前の広場に出ると、林立するビルが夜空の視界を遮った。ビルは業績の好調の具合に応じて輝きを放っていた。パチンコ屋、消費者金融が独走していることが分かった。都会では頭の上の方にどうしても眼がいってしまうが、地上には植木が点在し、その下には捨てられたティッシュのような昨日の雪が残っていた。
 佐々木たちが目指すのは裏通りの居酒屋であった。駅前が華やかに整備されていれば裏通りの路地は狭くて汚いのは世の常であった。佐々木の肩にカップルで歩いていた女の頭があたった。お互いの脇を抱き寄せながら、歩く傲慢無礼なカップルだった。
「私ね。あんな風に男に擦り寄る女が大嫌いよ。」
 当たった瞬間に後ろを振り返り、佐々木は自分から当たりに行ったのではないかと思わせるような言葉を吐き捨てた。
「何よ!」
 ぶつかった上に、自分の人生観まで否定した人間にカップルの女は立ち止まって抗議した。
「みんないいかい。今は男女参画社会なんだからね。男に媚びうる女は古いんだよ。」
 まだ、居酒屋まで行きつかない路地で佐々木の講義が始まってしまった。
「おめぇの方が古いよ。だいたい婆あのくせに。そもそも人間が古いってよ。」
 今度は男が佐々木の方を振り返って加勢に入った。
「キャッキャッ」
 女は、嬉しかったのか笑って、男にボディブローを浴びせた。
「やべぇ。」
 男が声をあげた瞬間、二人は脱兎のごとく走り、雑踏にまぎれた。
「やっちゃいますか。」
 佐々木に低い声で了解をもらい、剛がカップルの方を振り向いたからであった。
「剛、いいよもう。ああいう奴が、簡単に交尾してこどもをつくる。ああああ。」
 佐々木は逃げていくカップルに向かってグーを出し、親指だけを突き立てた。
「としねぇ。それ間違ってますよ。親指じゃなくて、中指ですよ。親指はグッドの意味ですよ。」
 秋本が鬼の首を取ったように笑った。
 佐々木は拳骨のやり場に困り、下ろした。その直後、左手でまた秋本の帽子のツバを持つと破けんばかりに被せた。
 雑居ビルの3階に居酒屋があった。3階で満杯のエレベーターの扉があくと、はじき飛ばされるように友紀が出てきた。今度は先頭で居酒屋の自動ドアから入店しようとしても体重が軽量でドアが開かない。ジャンプする友紀。開かない。有美が前に立つとあたり前のように開き、居酒屋に入る5人。友紀が置いてきぼりにされた。
「友紀。友紀。そんなところで何してるの。」
 佐々木が呆れた顔をした。
 居酒屋の中では、もっぱら、佐々木と秋本、有美の会話で、他は聞き役であった。
「この間、びっくりしたよ。スクーリングで隣に座った男が何にも持ってきてないの。」
「そんなのざらにいるでしょ。」
 秋本がうすべったい座布団を二枚重ねながら言った。
「でも鉛筆ぐらいもってくるでしょ。出席票に名前、書くんだから。」
 佐々木も隣りの席から座布団を拝借しながら言った。佐々木は十枚重ねだ。
「まあね。」
 佐々木の目線の高さに、やられたという表情で秋本が答えた。
「それがさ。ピアスが鉛筆なの。びっくりしたよ。出席票が回ってきたら、耳から鉛筆抜いて、書いてるのよ。こうやって、それもよく見たら、三菱鉛筆の3Bだよ。3B。普通はHBでしょう。」
 牢名主となり隣りの席の客を蔑みながら割りばしで耳たぶを指す真似に一同ドット笑った。
「でも、間違っちゃったらどうするのかな。消しゴムはもってないでしょ。」
 秋本は一人、うすら笑いで少々横やりをいれた。
 佐々木は、おしぼりを丸めて耳に消し、そのあとテーブルを拭いた。
「ほんと。消しゴムも射してたの?」
 純粋無垢である有美が興味津津である。
「うそにきまってるだろ。」
 有美が目を丸くして手をたたいて笑った。剛は一人だけ、自分の世界にいてカルピスサワーを飲んでいた。由紀はモグモグしながらハムスターのように口の袋を膨らませていた。
「由紀、ひまわりの種でも口の中に入れてるの。」
 有美がからかった。
「う~ん。モズク。」
「由紀、そんなに頬張らなくてもいいんじゃないの。」
「う~ん。好きなの。」
 美樹が自分でも信じられない声で笑った。
 店員が剛の前におかわりのジョッキをドンと置くと、こぼれた。
「むかつく。・・・むかつく。」
 剛は厨房に戻っていく店員の後ろ姿を睨みつけた。みんなが剛に注目した。
「剛。お前はいつも。」
 その瞬間。佐々木が剛に消しゴムの代わりになっていたおしぼりを投げつけた。
「何すんだ!」
「お前はいつも、そう。突然、むかつくって言う。みんなでこうやって楽しく飲んでるのに、お前はその空気ってものを読めないのか。言おう、言おうといつも思っていたから言うよ。・・・お前はいつも言葉が足りない。みんなな。コミュニケーションを取るときには言葉のつながりで相手が何を考えているのか理解するものでしょうが。お前はただ、むかつくって言うだけ。なんで、むかつくのか。むかついてどうしたいのか。わからないから、みんな。驚くだけだろ。店員の態度が良くなかったか。カルピスの代わりに牛乳がはいってたか。それとも、この焼き鳥が鳥インフルエンザってわかったのか。」
「わかったよ。」
 剛はふてくされて無感情な言葉を吐き捨てた。
「no、no。」
 秋本がおどけた。
「それとも、仕事で嫌なことがあったのか。それだったら、こうこうこういうことで、ムカムカしていますって言ってごらんよ。だいたい、人は。こうやって、みんなで楽しくやろうっていうときは、少しぐらい気になることや嫌なことがあっても、腹の中に飲み込んで、少し、演技してるんだよ。そうしないと、それぞれ、正直に自分の気持ちを出し合ったどうだ、めちゃめちゃになってしまうだろう。空気が。お前も他の人のことを考えて、演技することも必要なんだ。分かったか。」
 剛の代わりに秋本がうなずいた。
「うそついてまで、演技しろって言うんですか?」
 美樹が会話に入ってきた。美樹の純真な声で濁った空気が新鮮な空気に入れ替わったようだった。
「うそはついちゃいけないよ。まずいものをうまいとは、わたしだって言えないよ。でもさ、うまいと言っている人にまずいです。って言っても、それで終わりだろう。まずいと思っている気持ちを飲み込んで、何でうまいって言っているのか、にこにこ演技して、聞かないとコミュニケーションはなくなってしまうって。」
 佐々木がやさしく自分の説を押し通した。
「むずかしね。本当に。」
 有美は佐々木が唱えていることと佐々木の言動が余りにも乖離していることを指摘しようと思ったが、佐々木の説を受け止め、ニコニコしただけだった。
「むずかしいよ。それでなくても。言葉で、本当の自分の気持ちを伝えることはなかなかできないだろう。好きで好きでどうしようもなくて『好き』っていっても相手に伝わらないことは、よくあるさ。」
 佐々木は経験則から断定した。
「本当は好きじゃないのに『好き』って言ってしまうこともあるし。」
 秋本が考え深く言った。
「本当なの?」
 有美は容赦しない。
「うそだぴー。」
 秋本は話題を変えるために、おとぼけた。
「ところで田中さんはどうして前の学校をやめたの?」
 秋本は唐突に話題を変えた。
「うんと~。」 
 美樹は説明することを拒む気持ちはいささかもなかったが、どこから始めていいものか如何ともしがたかった。
「馬鹿だね。お前も。今何と言った。私は人の気持ちをちゃんと読んで話をしろって言ったよね。バカ。」
 佐々木はピッチャー入ったビールを仰ぎながら箴言を贈った。
「だいたい、お前は美樹ちゃんの学校やめた理由を聞けるような人間なのか。」
 この佐々木の言葉にすぐに有美は感づいて手を叩いて笑い始めた。友紀は、口の中のモズクを吐き出しそうになり、小さい手で口を押さえた。ハードボイルドもどきの剛も天井を仰ぎながらおしぼりで笑い涙を拭った。チーム佐々木の定番のネタだった。
「お前はこれで学校をクビになったんだろ。」
 佐々木は両手を組み、左右の人差し指で二等辺三角形を作って下から上に向かって突いた。まだ、チーム佐々木に所属したばかりの美樹には理解ができなかったが、周りの大笑いに触発されて笑い顔になった。
「美樹ちゃんね。こいつ、先生に浣腸して退学になったの。それもね。こいつ、指先でケツのぬくもりを感じたって言うから、どうしようもないよ。全く呆れてものも言えないよ。」
 佐々木は尻に敷いていた座布団を一枚取ると、秋本の頭をだるま落としのように払ったが、その拍子に九枚になった座布団から落ちた。
「何だっけ、退学になった理由は?対なんだっけ。」 
 佐々木は剛の肩を借りながら起き上がると、脇腹を押さえながら言った。
「一応対教師暴力です。」
「バカじゃないの。最低最悪な理由だよ。」
「でも・・・。」
「でもなんだい。」
「優しい先生だったんだけどな。先生をからかっても怒んなかったんだけどな。」
 秋本は項垂れた。
「それで浣腸を毎日やってたんだ。」
「まあ。」
「まあじゃねえよ。これで僕は学校を辞めました。」
 佐々木は小指を立てて秋本の項垂れる顔の前に持って行った。
「て言って辞めるんだったら分かる。ところがこれだもの。」
 佐々木はまた人差し指で二等辺三角形を作った。
「さすがに先生だって、堪忍袋の緒が切れたってやつよ。」
「深く入ちゃったのが、よくなかったたんだろうな。スゲえ、痛がってたからな。それに、痛がって座り込んじゃったのを、生徒指導のせんこうに見られちゃったからな。」
 一同、抱腹絶倒だった。
 美樹は自分が今までの人生の中で一番、くだらない話だとは思いながらも人生の中で一回もなかった仲間の中にいる実感を味わった。
            *
 プライバシーが暴露された秋本だけが酔っていた。いつものことながら、ピッチャーでカバのように飲んでいた佐々木の歩調は乱れるどころか、六人の先導であった。剛は無言で一人だけ外れて歩いていた。その格好は立ち上がった亀のようである。首を前に出し、胴体はその後、遅れてついて行く。白いビニールサンダルがぺたぺたと、ふてぶてしさを誇示していた。
「有美さ。あいつぐらい鳶のスタイルが似合わないやつもいないよね」
 佐々木は後ろを振り返った。
「そうそう。顔がね。どう突っ張っても。可愛らしすぎちゃいますよ。」
 有美は同意した。
「俺は。この帽子、可愛い。」一人だけ酔いが回ってふらついている秋本が帽子を目深にかぶりなおしながら言った。
「うふ。」
 美樹が笑った。
「あの子は全然、話さないんですね。」
 美樹は後ろから下を向いて歩いている友紀を心配そうにみていた。
「いいの。いいの。それで、いいの。結構、あれで、楽しんでいるんだから。」
 佐々木はそういいながら、あどけない娘を見るように眼を細めた。
 秋本は帽子をとって、頭を掻いた。
 友紀はみんなの視線の先で、今度は街路樹の葉っぱをジャンプして触って、笑っていた。
 トリコロールの旗を玄関にたてているケーキ屋の前にさしかかると友紀だけ止まった。
「ここのケーキ、まずくて高いのよね。」
 友紀は独り言のように言った。
「ねぇ。ここのケーキ、ホント、まずくて高いの。ねぇ。」
 今度は意を決したように前を歩く佐々木たちに訴えた。かすかなボリュームで何かしら言ってるらしいと気がついた佐々木たちは後ろを振り返った。
 ケーキ屋の前に仁王立ちになっていた友紀は、左手を腰に右手をまっすぐ前に突き出し、その指は店の中にいる店主に向けられていた。
「この店のケーキはとってもまずいんです。そして、高いんです!」
 道路を走る自動車の運転手にも聞き取れる声で怒鳴った。
「何やってんの。」
 有美は走って友紀の右手をつかんで引っ張った。友紀も、もずくを肴に少し酒を飲んでいたようだった。足元がふらつきながら、駄々をこねる子供のように引かれていった。
「有美さ、こいつも言いたいこと言えるようになったじゃないの。友紀も進歩したよ。ただ、今度はしらふのときにやってみな。いいか。」
 秋本が子供を言い聞かせるように言った。
「うん」
 友紀が情けない顔をあげた瞬間、佐々木は友紀をきつく抱きよせた。
「何やってんの?」
 佐々木は自分のコートの中に友紀を入れると、友紀の右頬に自分の頬を付けた。
「何やってんの?としねえの赤ん坊じゃないんだから。」
 秋本がおどけてのぞき込むと佐々木のビンタが秋本の左頬に飛んだ。佐々木の右の手形が秋本の左ほほに魚拓のようについた。
 駅前で路上ミュージシャンが歌う声が遠くから聞こえてきた。美樹が携帯の時計を見た。
「大丈夫。お母さんに、電話した。」
 佐々木が気遣った。
「平気です。」
「遅くまで、付き合わして、ごめんね。」
「初めてです。たくさんの人とお話しできたのは。」
 美樹は美しい所作で滑らかに上半身を前に倒した。
「そう。よかったね。今度は櫻井君も誘おうか。」
 佐々木が美樹の顔をのぞくと、美樹は見る見るうちに紅潮した。
「いいよ。先生は。なあ、有美。」
 左頬に赤い手の形のマークがついている秋本が制した。
「私は、いいわよ。」 
 保育士のように友紀と手をつないだ有美が佐々木に同意した。
 駅前は路上ミュージシャンの演奏を聴く人で楕円形に膨らんでいた。
「おう。Very very noisy」
 人目もはばからず佐々木が大声で叫んだ。
「何て言ったの?」
 秋本がきょとんとした顔で佐々木を覗いた。
「うるせいって言ったんだよ。へたな歌をよく人前でうたえるなって言ったんだよ。」
「としねえ。いいんじゃないの。みんな楽しそうじゃない。」
 音楽に合わせて秋本は腰を振った。
「としねえは自分がきにくわねえことは、国民全員が嫌ってると思ってるんだから。それぞれみんな好きなことが違うの。」
 今度は腕も振りながら佐々木を諭した。
 路上ミュージシャンのシンパが振り返った。
「何て言ったこのばばあ。」
「よく、お聞き。う・る・さ・い。へ・たって言ったんだよ。」
 シンパに佐々木は指を指した。
「佐々木さん。そうじゃなくて。としねぇ。まずいよ。そんなこと言っちゃ。音楽好きな連中が集まって楽しくやってんだから。邪魔しちゃ悪いよ。だいたい、さっき、うまく、演技して人と付きあえっていったばっかしだろ。空気を読めっていったばっかしだろ。」
 秋本は今にも泣き出しそうであった。
「こんなばばあ。かまうなよ。」
 鎖を首にまいた他のシンパが諌めた。
「ばばあ?・・・そうだよ。私はばばあだよ。じゃ、お前はなんだい。へんてこな頭(髪型)しあがって。そんなに頭(髪型)、おったて。ちんちんが勃起してるんです僕って、女への合図か、それ。それに、なんだ、その金具は。昔の人はそれで悪いことしなくても繋がれたんだ。可哀相に。フランス革命の民衆たちよ。知ってるのか。罰当たりめ。お前なんか、雷でもあったって死んでしまえ。」
 佐々木に圧倒される有美、秋本、美樹、友紀は後ずさりした。剛だけがシンパの目先まで近づきガンを飛ばしていた。
 周囲のいざこざなど関係なく路上ミュージシャンの演奏が続いた。
 シンパが集団で佐々木と剛を取り囲んだ。佐々木が剛と目配せした瞬間だった。剛がシンパAにボディブローをかまし、うずくまったところに佐々木の蹴りが入った。剛の頭付きは歌舞伎役者のような白塗りのシンパBに入った。シンパたちが呆然とした刹那、親分の号令が下った。
「逃げるよ!」
 ダッシュする6人。佐々木がサンダルで走りにくい剛の手をとって引きずった。サンダルが脱げた。剛の頭にはシンパの白いおしろいがついていた。
 ビルの間の路地に難を逃れた。
「みんなそろってるか?」
 秋本がただの酔っ払いから、軍曹に昇格した。
「としねぇは?」
 有美が長老を心配した。
 佐々木が息をぜえぜえしながら、輪に加わた。
 みんなでハイタッチが始まったが佐々木は腕が上がらなかった。避難場所で落ち着くと、佐々木の作戦が告げられた。
「よし、また駅に戻ると、返り討ちにあうかもしれないから。二手に分かれて次の駅までタクシーで行くよ。タクシー代は剛が払え。お前が、ちょっかいだしたからな。」
 簡潔な命令だった。
「え~。マジかよ。」
 剛は怪訝の表情に変わったが、それ以上、言葉は出なかった。
「ピィーピ」
 佐々木が指笛でタクシーを呼んだ。タクシーは飼い犬のように止まった。
「かっこい~いでしょ。田中さん。ローマの休日のグレゴリー・ペックだよね。だから、あの人にみんな引き込まれちゃうだよね。」
 有美が小声で囁いた。確かに佐々木には誰でも持っていない磁場のようなものがあった。それにみんな引き込まれてしまっていた。
 美樹はローマも行ったこともないし、グレゴリー・ペックも知らないし、キョトンとするだけだったが、佐々木のカッコよさには同感した。
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