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消えぬ想い
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昨日泊まった場所の先にも、道は続いていた。途中で向こうから足音が聞こえてくる。私たちは足を止め身構えた。歩いて来たのは……。
「おばあちゃん?」
「ナタリア、あんなに奥森には行ってはいけないと言ったのに」
「ごめんなさい」
「その顔、全然悪いとは思ってないんだろう?」
沈黙は肯定だ。祖母は踵を返すと、
「まぁそうだろうと思って来たんだ。ついておいで」
と言って歩き出す。前を歩く二人も何も言わず祖母に続いた。フォリンは一番後ろから悠々と飛んでいく。
どんどん進んでいくと道はかがむ必要があるくらい狭くなっていった。祖母は先頭で行き止まりの土に手をかざす。途端に土壁は消え、その先は宝石のようなランプが輝いていた。
「ここはダーコイル一族の屋敷に続く地下道さ。何百年も前から少しずつ掘り進められてきたんだよ。バボンの人たちが必死に抵抗してきた証さ」
広大な時間を想うと自然と涙が溢れてくる。今にも消えそうなランプにそっと手を触れる。すると、籠った声が聞こえてきた。
「お兄ちゃんの暴走を止めて。本当はすごく優しい人なの」
私にしか届いていない、ナターシャの声。ぎゅっと手に力が入る。
煌びやかな地下空間はしばらく続いていた。色とりどりの宝石が足元にも埋め込まれている。祖母は再び足を止めると、
「いよいよだ」
そう言って天井を指した。古びた取っ手を慎重に開けていく。フォリンは震えながら私の背中にしがみついてきていた。
城の中に上がると薄暗い空間が続いていた。広い廊下は豪華な城を連想できる。しかし、外から入ってくる冷たい空気は城の荒廃を物語っていた。
「おばあちゃん?」
「ナタリア、あんなに奥森には行ってはいけないと言ったのに」
「ごめんなさい」
「その顔、全然悪いとは思ってないんだろう?」
沈黙は肯定だ。祖母は踵を返すと、
「まぁそうだろうと思って来たんだ。ついておいで」
と言って歩き出す。前を歩く二人も何も言わず祖母に続いた。フォリンは一番後ろから悠々と飛んでいく。
どんどん進んでいくと道はかがむ必要があるくらい狭くなっていった。祖母は先頭で行き止まりの土に手をかざす。途端に土壁は消え、その先は宝石のようなランプが輝いていた。
「ここはダーコイル一族の屋敷に続く地下道さ。何百年も前から少しずつ掘り進められてきたんだよ。バボンの人たちが必死に抵抗してきた証さ」
広大な時間を想うと自然と涙が溢れてくる。今にも消えそうなランプにそっと手を触れる。すると、籠った声が聞こえてきた。
「お兄ちゃんの暴走を止めて。本当はすごく優しい人なの」
私にしか届いていない、ナターシャの声。ぎゅっと手に力が入る。
煌びやかな地下空間はしばらく続いていた。色とりどりの宝石が足元にも埋め込まれている。祖母は再び足を止めると、
「いよいよだ」
そう言って天井を指した。古びた取っ手を慎重に開けていく。フォリンは震えながら私の背中にしがみついてきていた。
城の中に上がると薄暗い空間が続いていた。広い廊下は豪華な城を連想できる。しかし、外から入ってくる冷たい空気は城の荒廃を物語っていた。
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