アリス 観察者《オブザーバー》の弟子

御魂

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全ての始まり

3. 初めて見る魔法

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 少女の目の前には少女の記憶にはない動物?いや獣が群れを成して並んでいた。その数ぱっと見ただけでも、6匹以上。



 しかももれなくすべての獣がじゃれてくるようには見えない、本当においしそうな肉の塊を見つけたと喜んでいそうな表情をしている(実際には分からないが)



「あのー、すみません。あれってなんでしょう?私の記憶にはあんな動物?見たことないんですが」



 急に発言が弱腰になったことに驚きつつも龍は答えた。



「一応、この世界の生物学上では【ライオン】。」



「いやいやいや。私の記憶のライオンと程遠いレベルの見た目ですけど!?あんなに口尖ってましたっけ!?それに牙とか目付きとかも全然違いますけど!?」



「今言っただろ、【この世界】のライオンだ。お前が住んでた時代のライオンは絵でしか見たことないわ。まあそれでも運がいい…」



「だから!この世界とか訳分かんないんですよ!ていうかこんなに囲まれて何が運が良いんですか!」



 龍はにやりと笑うと、ローブの左内側から木の棒を取り出した。それを持つと、真っ直ぐライオンに構える。



「ぷ!あはははは! ま、まさかそれ杖ですか?それで戦うんですか? 一応聞きますけど正気ですよね? この土壇場で中二病でも発症してるんですか! いやー! でもどうせ死ぬならその杖で魔法の一つや二つ見てから死にたいなー!」



(こいつ、まじうるさい。見た目と正反対すぎね?まあいいけど。とりあえずこの場を切り抜けてからこいつとはゆっくりお話ししよう。さっきのことも含めて)



 龍とライオンは目を合わせたまま動かなかった、さながら戦い方をわきまえている侍のようである。しかし、先にしびれを切らして襲いかかってきたのはライオンだった。



「きゃー! 来ましたよ! 早く魔法! 魔法!」



(飛び掛かってくるとは、愚かすぎるぞ。まあいい、まずは一匹)



 龍は上から牙をむき出しにして襲ってくるライオンに杖を構えると唱えた。



「ピロズクステ《火球よ飛べ》!」



 次の瞬間、杖からサッカーボール程度の大きさの火球が出現しライオンに向かって飛んでいく。火球はライオンを捉えると大きな衝突音と共にライオンを火で包みそのままの勢いで崖に衝突した。



「…え? うそ? まじ? いや、マジックって可能性も…」



 少女は一瞬かなり驚いて動揺を見せたが、今自分の頭でできる最大限の知恵を振り絞り状況を理解しようとした…間違った方向に。



(この期に及んでまだ、状況を理解しようとせんのかこいつは…。まあしょうがないっちゃあしょうがないが)



 続いて二匹のライオンがほぼ同時に飛び掛かってくるが、龍は呆れて二つの火球を放つ。



 二つの火球は空中のライオン二匹にもちろん命中し、火だるまにさせながら崖に激突させた。



(…おかしいな。もう三匹だぞ? 目の前でこれだけ仲間が死ねば大抵引くと思うんだが、全然引く気がしない。こいつらに日本の…なんだっけ? なんとか魂だっけ? があるとはおもえないんだが。見るからに【魔獣】でもないし)



「あ! 今流行りのSAOみたいなバーチャルリアリティーでハリー・ポッターの世界が作られて! 私はいつの間にかそのゲームに強制参加させられたみたいな? VRなら痛みとかないだろうし! SAOみたいに死んだら終わりじゃなくてちゃんと元の世界に戻れるとか!?」



(まだ言ってんのこいつ!? おかしくね!? そろそろこいつの頭が心配になってきたぞ…)



「それならなんでお前が俺の股間にライダーキックしたとき俺は悶え苦しんだんだろうねー?」



「あ、あれはゲームのリアリティー出すために案内役のあんたが痛んだ振りをしたとか! それなら説明が付くよ! まあ私が裸なのが残る疑問のひとつでもあるんだけど」



(もうだめだこいつは…。とりあえず先に【あっち】を片付けてからゆっくり話をすることにしよう。あっちの奴らも引く気はないようだし、【アレ】を使うか…)



 ライオンは三匹やられたにも関わらず、いまだに敵意を剥きだしにしており、襲いかかってくるき満々である。



(残りをちまちま火球で倒すのも良いが、それだと後のスケジュールに障ってしまう。空中なら避けようがないから火球を使うが、地面にいられると余裕で避けられちゃうのよね。ならこれしかない)



「おい、嬢ちゃん。」



「なに?今度は何するの?」



「見てのお楽しみだが、少し体触るぞ。俺にしっかり掴まっとけ、マジで火傷する可能性があっから」



 そういうと龍は少女の肩を掴み自分のもとへぴっちりと引き寄せた。そして、杖を天に向かって構える。



 もちろん少女は離れようとする。



「ちょ! これ以上何する気! マジで警察に通報するよ!? てか敵あっち! 杖構えてるとこ違う!」



「黙っとれ」



 龍は一度大きな深呼吸をする、そして穏やかな顔もちでライオンを見つめた。まるで自分は敵ではないと語りかけるように。



 しかし、ライオンにそんな気持ちなど一切通じない。言葉も通じなければスキンシップも取れないのだから。しかし、龍から殺意の一切が消えたと感じたライオンは逆に「降参だ、さあおいしく食べてくれ」とも感じ取れたのだろうか。一瞬だけすべてのライオンが目を合わせると今度は残りの数が龍に遅いかかった。



「来たー! 一斉に来ちゃったよ! やばいよー!」



(まじうるさい)



 しかし、次の瞬間天に向けた杖から火球が出来たかと思えば、一瞬で形を変えて火球から火の鳥へと変貌した。



「うっそ! 綺麗! スマホがあればインスタにあげられるのに」



「感想がそこかい!」



 突っ込んでしまい危うく集中を切らしかけたが、それでも立て直した龍は天へ向けた杖を自分を軸に回し始めた。



(これは別に詠唱必要ないけど、何となく…、前々からこの技名は考えてあったし)



「ビィーロス《火の鳥よ舞え》!」



 龍を軸に回り始めた火の鳥は龍達とライオンの間に炎の壁を作った。そののち、龍達は炎の壁で見えないが、火の鳥はライオンを一匹ずづ火だるまにして回った。



 壁の向こうからはライオンの悲鳴が聞こえてくる。



 ふと少女が顔を龍に向けた。



「あのさ…」



「なんでしょ?」



「これ、そのライオン? を倒したのって分からなくない? 炎の壁で守られているから見えないし」



「ああ、それについては心配ない。あの火の鳥はちょっと特別なんでね、俺が殺意を向けた相手にしか襲わないし、殺意を向けた相手がいなくなると自動的に消える仕組みだ」



「なあるほ! 便利」



(いままでの俺に対する言動で俺がこいつに殺意を剥ける可能性があったことについては触れないのか、それともそこまで考える頭がないのか。まあそのためにも一回殺意をリセットするために深呼吸して火の壁の中に入れたんだが。まあ殺意があっても火の壁にいる者は襲わないようにしてるのもあるんだが)
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