5 / 22
全ての始まり
5. 初めての魔法
しおりを挟む
アリスは思った、ゲームの世界、まったく知らない世界に初めて来たのだ。泊まるにしてもホテルでなくてもいい、こう“INN”みたいにゲームによくある木造の宿に泊まるのではないかと少しは期待した。
しかし、目の前に広がる光景はアリスの期待を裏切るには十分すぎるものだった。
―――――何もない。
いや、何もないわけではない。正しくはちゃんと木々が生い茂る空間が存在している。ただ少し先ほどと違うとすればキャンプによく使われていそうな手作りの竈や横になるためかわ定かではないが草が取り除かれ平らにっている場所があるくらいだった。
しかし、アリスにとっては先ほど歩いてきた森の中となんら変わりない。
(あれぇ? 今なんて言ったっけ? あの龍とかいう男、ここに泊まるとかほざいていましたけども、こんな場所に泊まるならさっきの場所に泊まった方が幾分かましじゃろ……。あ、それともこう魔法の力で見えないようになっているとか? それなら秘密の場所っぽい感じでかっこいけどな…)
「あのー……、龍さんでしたっけ? 私の頭が正常であれば今ここに泊まるとか言いませんでしたっけ? こんな何もない場所に? た、たとえばですけど! ここらへんに普通は見えないだとかの認識できない魔法がかけられてるとかですよね!? きっとそうですよね」
アリスは不安感にさいなまれながら龍に尋ねた。
龍は持っている荷物を置くと、軽く体を伸ばした。そのあと、ローブから杖を取り出したのだ。
「…?。見えない魔法? あー、認識阻害の魔法ね。さすが現代っ子、するどいね! そうだよ、ここに泊まるために今からこの場所にその魔法をかけます」
(いやいや、私の期待した答えになっとらんがな)
龍は竈を隠すように覆って並んでいる木々の外側に杖の少し先っぽだけを出した。
「アナグトリー《認識を阻害せよ》」
と龍が詠唱するのを聞いているアリスだったが、特別何も起こらない。しかし、すぐさま杖をローブにしまうと、カバンからこれまたキャンプ等に使っていそうな、しかもバックの内側の空間に絶対収まりはしないはずの折り畳みの椅子が二つを取り出して、アリスの目の前で組み立て置いた。
「さあ、座れ」
「え、いや、だからまだ質問が…」
「とりあえず座れ、ここなら誰にも襲われる危険も聞かれる危険もない」
「たしかに!そうですね!でもあなたに襲われる危険は考慮されてます?」
ありったけのスマイルで毒を吐くように質問した。
「…? 俺がお前を? なんで? 襲う必要がない。そもそも現段階で俺がお前に興味を抱く要素が何一つない」
それは暗にお前を一人の女性もしくは女の子として見てないとアリスにいうがごときセリフであった。
「えー? こんなに可愛いくて可憐な15歳の少女なのにー?」
(はあ、こいつの質問攻めには飽きた。戦略変更…)
「はったおすぞお前…。まあとりあえずほれっ」
竈を挟むように座っているアリスにあるものを渡し投げる。
「ちょっ! いきなり投げんなよもう、…! これって!」
「そうだよ杖だ、さっきお前見ただろ? 魔法使うところ。お前も使ってみろ、ただし秘密な? ばれるとちとまずい」
(は、は、ハリー・ポッターだーー! 映画の杖とほぼ同じ! 握るところも! うわー! しかもさっきこいつが使ってたから本物だよね!? つまりは魔法使えるよね!?)
龍の話など一ミリも聞いていなかった。目の前にある、杖に興味津々のただの少女である。
(ふう、見たことないおもちゃ。そして前の世界では使えないがこの世界で使えるものを目の当たりしたら大抵注意はそちらに向く。これでいい、こいつの質問攻め飽きた)
「あ、あの! これ使ってみてもいいでしゅか!?」
「……」
(こいつ興奮しすぎて呂律が回っていない……、大丈夫か?)
「とりあえず落ち着け。大丈夫だから使ってみろ」
龍はローブの内側に入っている杖のスペアを握った。
(こいつが知っている呪文は覚えていればさっき俺が使った火球だけ……、火の鳥は呪文じゃなくてただの技だ。俺に向かって放つ可能性とその辺の木に放つ可能性も考えておかねば)
アリスは杖を握ると誰もいない場所に向けた。
(あ、そういう事はちゃんと頭にあるのね)
そして誰もいない空間にアリスが大声で詠唱したのは……。
「エクスペクト・パトロナーム!」
「は?」
……。
…………。
………………。
森は相変わらず静かだった。夜になり小さな夜行性の動物が動き出したのか、鳴き声が辺りから聞こえ始める。時折吹く風が木々を揺らし風と木々の擦れる音が聞こえる程度、そのくらいの静寂だった。
しかし、その静寂を破るかのごとくのアリスの詠唱だったが、杖はピクリとも反応しなかった。
龍は聞いたことがない呪文がアリスの口から飛び出したので身構えたが、何も起きなかったので、今はただ呆れるばかりだった。ただ、周りが暗くなったのでルーティンのようにカバンからランプを取り出し、杖を使って明かりをつけた。
「あ、あれ? 何も起きない!? おかしいな守護霊が出てくるんじゃないの? あ! 確か出す条件で使用者本人の幸福な記憶が必要なんだっけ!? うーん、今すぐには思い出せないなー、私自身の記憶がないんだよねー」
(びっくりした……。こいついきなり知らん呪文を唱えたから、身構えちまった。だが、魔法が出ない? 失敗したところ見るとこの世界に存在しない呪文? いや、こいつは女だ。俺の知らない【聖霊魔法】の可能性も……)
「おい、アホ。やりたいことは終わったか? お前が突然知らない呪文を言ったからびっくりしたぞ……まったく……。お前はまだこの世界がなんなのか理解してないようだな。本当に現代人なのか? まったく……。まず杖をこう持ってみな」
龍は自分の持っているスペアの杖を胸元から30センチの距離まで持っていく。
(アホだとか、よもや現代人じゃないのかとか。結構なディスられようだなおい)
アリスはとりあえず龍と同じようにした。
しかし、一瞬は杖を持って逃げようかと考えた。が、もう辺りは暗い。それに先ほど龍が認識阻害の魔法をかけた事も知っている。そのことからここらへんにもあのライオンのような猛獣がでるとわかってしまう。それにアリスは先ほど(といってももう数時間経過しているが)この見知らぬ場所で目覚めたばかりなのだ。土地勘も地図もない、それに魔法も知らない(ちなみに龍が使った火球の呪文も覚えていない)もう真っ暗。この状況で獣に襲われることを考えたら逃げるという考えも自殺行為に思えたため断念した。
「いいか?杖の先を集中してみるんだ。ゴルフボールは分かるか?あれぐらいの大きさの玉をイメージしてみろ」
「は、はあ……」
何言ってんだこいつ? とは思いながらも杖の先を見て玉をイメージした。
するとどうだろう、杖の先から僅かに光る粒子状の何かが出てきて集まっていく。それは徐々に大きくなり、アリスがイメージした大きさの僅かに光る半透明の球体になった。それは美しかった。アリスはボールなんていくらでも知っているが、何の力も借りずに空中浮遊していて、僅かに光を発する球体なんて見たことがなかった。しかもその球体の外側は常にゆらゆら揺らめいているのだ。
「すごい……、綺麗……」
アリスは自分が作った球体に眺めていた、そして自然に開いている手でその球体を触ろうとした。
「触るなよ、破裂して吹き飛ぶぞ」
「……っ!」
さすがに今回は聞いていたのかすぐさまに手を引っ込める。
「綺麗だろ? それが【魔素球マギスティーラ】だ。だがこれは呪文ではない。俺たちが使う基礎魔法の土台になるものでね、イメージすれば出せる。本来俺たちの体の中にある【魔素マギーディス】を球体にして呪文によってただの魔素の状態から魔法に変換してくれるのが杖だ。だから俺たちは杖が無くては魔法が使えないってわけだな……って近い!」
龍の説明を聞いてたアリスは自分でも気づかぬうちに近寄っていた。
「おっと! 失敬失敬」
(いつの時代の人間だよ……、まあ俺がそんなこと言う資格ないんだが)
「それで! それで!」
「……まあいい、さっき俺が魔素球に触れるなといったなその理由を教えてやろう。杖をそこら辺の木に向けてはなってみろ。魔素球は放たれない限りは杖に先を浮遊してるだけだから心配すんな」
「あの、どうやって放つんです?」
「……。お前さっき変な呪文叫んでたろ? あんな感じで」
(さっきの? あー、ハリーのやつか。じゃあ呪文が違うだけで基本はほとんど同じか……)
理解したアリスはフフーンと木に向き直り、映画でやっていた杖を振る真似をして、木向かって魔素球を放った。
(よく転生者がやってるけどなんなんすかね? あれ? 流行り?)
アリスが放った魔素球は狙った気に向かって真っすぐ飛んで行った。そして、木に直撃すると水の塊がはじけるように形を崩した。
「おお! ストラーイク! 当たったじゃん! 別に危険なことなんて…」
次の瞬間、魔素球はパーンという強烈な音とともに姿を消した。しかし、魔素球が当たった木の表面は数ミリから数十ミリほど円形に削り取られていた。
「……」
アリスはゆっくり龍の方に向きかえると、魔素球にあたった所を指差した。
「ええっと……」
木の表面に起こった現象を見て驚愕している顔に吹き出しそうになりながらも説明を続ける。
「ん? ああ、魔素球に触れるとああなります。もちろん指なんて触れた暁には、ふっ、どうなるんでしょうねえ」
ちょっと出た。
「あぶねーじゃねーか! 先に言えよ! まじで指吹き飛ぶところだったじゃん! 笑ってんじゃねーよ!」
「いや、見てもらった方が早いかなと思いまして。じゃあ次行きましょう、次はちゃんとこの世界の呪文を詠唱してくださいよー」
「いや、聞けよ! あの木見た!? そのまそなんたらが当たった場所思いっきりやばいことになってるよね!? えぐれてらっしゃいますよ!?」
「はいはい分かってる分かってるって。見りゃあ分かるし、俺も何回もくらったから。それよりも早く、杖構えなさい」
自分に詰め寄るアリスの肩を掴みぐるんと回す。
「もう! わかったわかった! こうすればいいんでしょ?」
アリスはまた表面が少しえぐれた木に向かって杖を構えた。
「そうだねえ、じゃあ俺が使った魔法覚えてる?今日使ったやつ」
「覚えてない!」
(いやそんな力強くはっきり言わんでも…)
「まあいいや、よーく木を狙ってー、“ピロズクステ”って唱えてみよう! 魔素球は出さなくてもいいよ!」
「なんか聞き覚えがある気がするけど、ま、いいか」
杖の先に木を捉え、深呼吸。そして、振り、詠唱……。
「ピロズクステ《火球よ飛べ》!」
今度は半透明の光るゴルフボールサイズの球体ではなく、サッカーボール並みの大きさの真っ赤に燃える火の玉が杖の先から出現し、木に向かって一直線に飛んで行った。
しかし、目の前に広がる光景はアリスの期待を裏切るには十分すぎるものだった。
―――――何もない。
いや、何もないわけではない。正しくはちゃんと木々が生い茂る空間が存在している。ただ少し先ほどと違うとすればキャンプによく使われていそうな手作りの竈や横になるためかわ定かではないが草が取り除かれ平らにっている場所があるくらいだった。
しかし、アリスにとっては先ほど歩いてきた森の中となんら変わりない。
(あれぇ? 今なんて言ったっけ? あの龍とかいう男、ここに泊まるとかほざいていましたけども、こんな場所に泊まるならさっきの場所に泊まった方が幾分かましじゃろ……。あ、それともこう魔法の力で見えないようになっているとか? それなら秘密の場所っぽい感じでかっこいけどな…)
「あのー……、龍さんでしたっけ? 私の頭が正常であれば今ここに泊まるとか言いませんでしたっけ? こんな何もない場所に? た、たとえばですけど! ここらへんに普通は見えないだとかの認識できない魔法がかけられてるとかですよね!? きっとそうですよね」
アリスは不安感にさいなまれながら龍に尋ねた。
龍は持っている荷物を置くと、軽く体を伸ばした。そのあと、ローブから杖を取り出したのだ。
「…?。見えない魔法? あー、認識阻害の魔法ね。さすが現代っ子、するどいね! そうだよ、ここに泊まるために今からこの場所にその魔法をかけます」
(いやいや、私の期待した答えになっとらんがな)
龍は竈を隠すように覆って並んでいる木々の外側に杖の少し先っぽだけを出した。
「アナグトリー《認識を阻害せよ》」
と龍が詠唱するのを聞いているアリスだったが、特別何も起こらない。しかし、すぐさま杖をローブにしまうと、カバンからこれまたキャンプ等に使っていそうな、しかもバックの内側の空間に絶対収まりはしないはずの折り畳みの椅子が二つを取り出して、アリスの目の前で組み立て置いた。
「さあ、座れ」
「え、いや、だからまだ質問が…」
「とりあえず座れ、ここなら誰にも襲われる危険も聞かれる危険もない」
「たしかに!そうですね!でもあなたに襲われる危険は考慮されてます?」
ありったけのスマイルで毒を吐くように質問した。
「…? 俺がお前を? なんで? 襲う必要がない。そもそも現段階で俺がお前に興味を抱く要素が何一つない」
それは暗にお前を一人の女性もしくは女の子として見てないとアリスにいうがごときセリフであった。
「えー? こんなに可愛いくて可憐な15歳の少女なのにー?」
(はあ、こいつの質問攻めには飽きた。戦略変更…)
「はったおすぞお前…。まあとりあえずほれっ」
竈を挟むように座っているアリスにあるものを渡し投げる。
「ちょっ! いきなり投げんなよもう、…! これって!」
「そうだよ杖だ、さっきお前見ただろ? 魔法使うところ。お前も使ってみろ、ただし秘密な? ばれるとちとまずい」
(は、は、ハリー・ポッターだーー! 映画の杖とほぼ同じ! 握るところも! うわー! しかもさっきこいつが使ってたから本物だよね!? つまりは魔法使えるよね!?)
龍の話など一ミリも聞いていなかった。目の前にある、杖に興味津々のただの少女である。
(ふう、見たことないおもちゃ。そして前の世界では使えないがこの世界で使えるものを目の当たりしたら大抵注意はそちらに向く。これでいい、こいつの質問攻め飽きた)
「あ、あの! これ使ってみてもいいでしゅか!?」
「……」
(こいつ興奮しすぎて呂律が回っていない……、大丈夫か?)
「とりあえず落ち着け。大丈夫だから使ってみろ」
龍はローブの内側に入っている杖のスペアを握った。
(こいつが知っている呪文は覚えていればさっき俺が使った火球だけ……、火の鳥は呪文じゃなくてただの技だ。俺に向かって放つ可能性とその辺の木に放つ可能性も考えておかねば)
アリスは杖を握ると誰もいない場所に向けた。
(あ、そういう事はちゃんと頭にあるのね)
そして誰もいない空間にアリスが大声で詠唱したのは……。
「エクスペクト・パトロナーム!」
「は?」
……。
…………。
………………。
森は相変わらず静かだった。夜になり小さな夜行性の動物が動き出したのか、鳴き声が辺りから聞こえ始める。時折吹く風が木々を揺らし風と木々の擦れる音が聞こえる程度、そのくらいの静寂だった。
しかし、その静寂を破るかのごとくのアリスの詠唱だったが、杖はピクリとも反応しなかった。
龍は聞いたことがない呪文がアリスの口から飛び出したので身構えたが、何も起きなかったので、今はただ呆れるばかりだった。ただ、周りが暗くなったのでルーティンのようにカバンからランプを取り出し、杖を使って明かりをつけた。
「あ、あれ? 何も起きない!? おかしいな守護霊が出てくるんじゃないの? あ! 確か出す条件で使用者本人の幸福な記憶が必要なんだっけ!? うーん、今すぐには思い出せないなー、私自身の記憶がないんだよねー」
(びっくりした……。こいついきなり知らん呪文を唱えたから、身構えちまった。だが、魔法が出ない? 失敗したところ見るとこの世界に存在しない呪文? いや、こいつは女だ。俺の知らない【聖霊魔法】の可能性も……)
「おい、アホ。やりたいことは終わったか? お前が突然知らない呪文を言ったからびっくりしたぞ……まったく……。お前はまだこの世界がなんなのか理解してないようだな。本当に現代人なのか? まったく……。まず杖をこう持ってみな」
龍は自分の持っているスペアの杖を胸元から30センチの距離まで持っていく。
(アホだとか、よもや現代人じゃないのかとか。結構なディスられようだなおい)
アリスはとりあえず龍と同じようにした。
しかし、一瞬は杖を持って逃げようかと考えた。が、もう辺りは暗い。それに先ほど龍が認識阻害の魔法をかけた事も知っている。そのことからここらへんにもあのライオンのような猛獣がでるとわかってしまう。それにアリスは先ほど(といってももう数時間経過しているが)この見知らぬ場所で目覚めたばかりなのだ。土地勘も地図もない、それに魔法も知らない(ちなみに龍が使った火球の呪文も覚えていない)もう真っ暗。この状況で獣に襲われることを考えたら逃げるという考えも自殺行為に思えたため断念した。
「いいか?杖の先を集中してみるんだ。ゴルフボールは分かるか?あれぐらいの大きさの玉をイメージしてみろ」
「は、はあ……」
何言ってんだこいつ? とは思いながらも杖の先を見て玉をイメージした。
するとどうだろう、杖の先から僅かに光る粒子状の何かが出てきて集まっていく。それは徐々に大きくなり、アリスがイメージした大きさの僅かに光る半透明の球体になった。それは美しかった。アリスはボールなんていくらでも知っているが、何の力も借りずに空中浮遊していて、僅かに光を発する球体なんて見たことがなかった。しかもその球体の外側は常にゆらゆら揺らめいているのだ。
「すごい……、綺麗……」
アリスは自分が作った球体に眺めていた、そして自然に開いている手でその球体を触ろうとした。
「触るなよ、破裂して吹き飛ぶぞ」
「……っ!」
さすがに今回は聞いていたのかすぐさまに手を引っ込める。
「綺麗だろ? それが【魔素球マギスティーラ】だ。だがこれは呪文ではない。俺たちが使う基礎魔法の土台になるものでね、イメージすれば出せる。本来俺たちの体の中にある【魔素マギーディス】を球体にして呪文によってただの魔素の状態から魔法に変換してくれるのが杖だ。だから俺たちは杖が無くては魔法が使えないってわけだな……って近い!」
龍の説明を聞いてたアリスは自分でも気づかぬうちに近寄っていた。
「おっと! 失敬失敬」
(いつの時代の人間だよ……、まあ俺がそんなこと言う資格ないんだが)
「それで! それで!」
「……まあいい、さっき俺が魔素球に触れるなといったなその理由を教えてやろう。杖をそこら辺の木に向けてはなってみろ。魔素球は放たれない限りは杖に先を浮遊してるだけだから心配すんな」
「あの、どうやって放つんです?」
「……。お前さっき変な呪文叫んでたろ? あんな感じで」
(さっきの? あー、ハリーのやつか。じゃあ呪文が違うだけで基本はほとんど同じか……)
理解したアリスはフフーンと木に向き直り、映画でやっていた杖を振る真似をして、木向かって魔素球を放った。
(よく転生者がやってるけどなんなんすかね? あれ? 流行り?)
アリスが放った魔素球は狙った気に向かって真っすぐ飛んで行った。そして、木に直撃すると水の塊がはじけるように形を崩した。
「おお! ストラーイク! 当たったじゃん! 別に危険なことなんて…」
次の瞬間、魔素球はパーンという強烈な音とともに姿を消した。しかし、魔素球が当たった木の表面は数ミリから数十ミリほど円形に削り取られていた。
「……」
アリスはゆっくり龍の方に向きかえると、魔素球にあたった所を指差した。
「ええっと……」
木の表面に起こった現象を見て驚愕している顔に吹き出しそうになりながらも説明を続ける。
「ん? ああ、魔素球に触れるとああなります。もちろん指なんて触れた暁には、ふっ、どうなるんでしょうねえ」
ちょっと出た。
「あぶねーじゃねーか! 先に言えよ! まじで指吹き飛ぶところだったじゃん! 笑ってんじゃねーよ!」
「いや、見てもらった方が早いかなと思いまして。じゃあ次行きましょう、次はちゃんとこの世界の呪文を詠唱してくださいよー」
「いや、聞けよ! あの木見た!? そのまそなんたらが当たった場所思いっきりやばいことになってるよね!? えぐれてらっしゃいますよ!?」
「はいはい分かってる分かってるって。見りゃあ分かるし、俺も何回もくらったから。それよりも早く、杖構えなさい」
自分に詰め寄るアリスの肩を掴みぐるんと回す。
「もう! わかったわかった! こうすればいいんでしょ?」
アリスはまた表面が少しえぐれた木に向かって杖を構えた。
「そうだねえ、じゃあ俺が使った魔法覚えてる?今日使ったやつ」
「覚えてない!」
(いやそんな力強くはっきり言わんでも…)
「まあいいや、よーく木を狙ってー、“ピロズクステ”って唱えてみよう! 魔素球は出さなくてもいいよ!」
「なんか聞き覚えがある気がするけど、ま、いいか」
杖の先に木を捉え、深呼吸。そして、振り、詠唱……。
「ピロズクステ《火球よ飛べ》!」
今度は半透明の光るゴルフボールサイズの球体ではなく、サッカーボール並みの大きさの真っ赤に燃える火の玉が杖の先から出現し、木に向かって一直線に飛んで行った。
0
あなたにおすすめの小説
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
弁えすぎた令嬢
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。
彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。
彼女は思った。
(今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。
今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。
小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる