33 / 75
不実な婚約者は【真実の愛】を謳う(※タイトル変更しました)
5.婿入りの条件
しおりを挟む
アラン・マクドエルは、伯爵家の次男である。家は『商人上がり』と揶揄されるが、一族はその商売に長けた才能を誇りにしている。
叙爵を得てから、伯爵になるまでも決して楽に伸し上がったわけではない。各代に才能のある当主がいて、それを支える一族がいるから、今のマクドエルがあるのだ。
それを恥に思うことなどない。それは、アランも同じだ。自身がマクドエル家の血を引くことを決して劣っていると思ってなどいない。
しかし、世間はそうではない。
生粋の貴族など、そうたくさんいるわけではないのに、商人であることを貶めようとする家は今でも消えることはない。
アランの祖父である先代のマクドエル当主も歴代と同じく、権力に拘る人ではなかった。けれど、アランがまだ幼い時分に、侯爵家との縁談をこちら側から打診した。
そうした経緯から、商家と侮る他の貴族たちからは、『新興貴族の域を脱せないマクドエルが、グリーフィルドの威光を金で買おうとしている』と噂になっているが、実際はそうではない。
話は、マクドエル家が叙爵された時まで遡る。
叙爵された理由は、表向きは国内のみならず他国にまで商売を広げ、国に貢献している商家であることであったが、この家の真髄は商売ではない。
商売は表向きの家業であり、本筋は諜報活動である。
古くから王家に仕える影の家のひとつがマクドエルである。実際に王家が使う影には、3つの流派が存在するが、マクドエルを除く2派は家名を明らかにしていない。ちなみに、表に出て連絡役をしているのがマクドエル家だ。
その3派のうちのマクドエルだけが爵位を得ているのは、貴族の名を持ってしか入れない場所などに堂々と居場所を確保するためである。爵位自体はさほど必要としていないが、数代前の王のマクドエルに対する依存が進み過ぎてしまい、マクドエルは断るに断れなかったのだ。
そして、マクドエルが影であることを知っているのは王家と古くからある貴族3家の当主だけである。
1つは、王家傍流の公爵家。もう1つは、武を司り辺境を守る伯爵家。
そして最後が、財政を司るグリーフィルド侯爵家である。この3家は王家の子飼いで忠臣である。特に国の要の3家は、マクドエル家の裏の仕事と密接に関係するため、当主になった者にだけその役割が告げられるのだ。
そんな闇を仕切る一族に生まれたアランは、次男であったので、家を支えるために従属爵位である男爵位を継承する予定であった。
ここまでマクドエル家では嫡男が家を継ぎ、次男・三男などはスペアとして複数ある従属爵位のを継承したり、商会を興したりして家を支え、当主に何かあった時にはすぐ引き継げる様にしていた。
しかし、今回は少し事情が違った。
王家を支える意味で一蓮托生である高位の3家のうち、グリーフィルド家に第1子の女子の後、跡継ぎとなる男子が産まれなかった。この国では女子も爵位を引き継げるため、表向き家を存続させるのには問題がない。
ただ、財政を司るグリーフィルド家。ここまで血がなせる業なのか、必ず優秀な文官を輩出してきたのだ。ここ何代も、財政官の長はグリーフィルドの者が担ってきた。だからこそ、マクドエルの秘密を共有する家の一角に選ばれているのだ。
女侯爵でも問題はない。もちろん、財政の長も優秀であれば女でも問題はないであろう。しかし、女で家長となると子を産む必要性が生じる。その間不在となるのは国として問題があった。
そして、王家とマクドエルと3家の話し合いの末、選ばれたのがアランであった。
グリーフィルド家の次代を担う婿養子として。
アランが選ばれたのには理由があった。
一つは、グリーフィルドの一人娘であるフェリアと年がさほど離れていないこと。実は、アランの下にもう一人弟がいる。その弟はフェリアと同い年なのだが、アランが選ばれたのには、もう一つの理由がある。
その二つ目の理由は、アランの頭脳にあった。
マクドエルには総じて優秀なものが多いと言われるが、それは【諜報活動】に特化している。そんな中で、アランは少し特殊だった。
その才能は幼い頃から片鱗を見せていた。他の子供より早く言葉を覚え、さらにあっという間に算術も熟すようになる。そうした学術的な才能において、他のマクドエルの子供とは一線を画していた。
その上で、マクドエルの特徴も備えていた。感情のコントロールも教育課程において問題なく習得したし、齢6歳にして才能在りと評価されたのだ。
グリーフィルドの一人娘フェリアが6歳になったころ、話し合いに決着が着いた。
グリーフィルドに嫁いだ伯爵家を手放したくない王家と、グリーフィルドに課せられた役割を継げるであろうアランの存在が、後継者問題に終止符を打った形である。
そんな事情は、王家と3家当主とマクドエル家しか知らないことだ。
アランは、マクドエル家の人間であり、当事者でもあるため、フェリアとの婚約が決まった当初からこの事情については説明を受けていた。
グリーフィルドの婿になるということは、【財政の要】を担うこと・【王家を守る闇の秘密】を守ること。
アランには、グリーフィルドの仕事と、マクドエルの仕事の両方を担うことが課せられたのだ。
叙爵を得てから、伯爵になるまでも決して楽に伸し上がったわけではない。各代に才能のある当主がいて、それを支える一族がいるから、今のマクドエルがあるのだ。
それを恥に思うことなどない。それは、アランも同じだ。自身がマクドエル家の血を引くことを決して劣っていると思ってなどいない。
しかし、世間はそうではない。
生粋の貴族など、そうたくさんいるわけではないのに、商人であることを貶めようとする家は今でも消えることはない。
アランの祖父である先代のマクドエル当主も歴代と同じく、権力に拘る人ではなかった。けれど、アランがまだ幼い時分に、侯爵家との縁談をこちら側から打診した。
そうした経緯から、商家と侮る他の貴族たちからは、『新興貴族の域を脱せないマクドエルが、グリーフィルドの威光を金で買おうとしている』と噂になっているが、実際はそうではない。
話は、マクドエル家が叙爵された時まで遡る。
叙爵された理由は、表向きは国内のみならず他国にまで商売を広げ、国に貢献している商家であることであったが、この家の真髄は商売ではない。
商売は表向きの家業であり、本筋は諜報活動である。
古くから王家に仕える影の家のひとつがマクドエルである。実際に王家が使う影には、3つの流派が存在するが、マクドエルを除く2派は家名を明らかにしていない。ちなみに、表に出て連絡役をしているのがマクドエル家だ。
その3派のうちのマクドエルだけが爵位を得ているのは、貴族の名を持ってしか入れない場所などに堂々と居場所を確保するためである。爵位自体はさほど必要としていないが、数代前の王のマクドエルに対する依存が進み過ぎてしまい、マクドエルは断るに断れなかったのだ。
そして、マクドエルが影であることを知っているのは王家と古くからある貴族3家の当主だけである。
1つは、王家傍流の公爵家。もう1つは、武を司り辺境を守る伯爵家。
そして最後が、財政を司るグリーフィルド侯爵家である。この3家は王家の子飼いで忠臣である。特に国の要の3家は、マクドエル家の裏の仕事と密接に関係するため、当主になった者にだけその役割が告げられるのだ。
そんな闇を仕切る一族に生まれたアランは、次男であったので、家を支えるために従属爵位である男爵位を継承する予定であった。
ここまでマクドエル家では嫡男が家を継ぎ、次男・三男などはスペアとして複数ある従属爵位のを継承したり、商会を興したりして家を支え、当主に何かあった時にはすぐ引き継げる様にしていた。
しかし、今回は少し事情が違った。
王家を支える意味で一蓮托生である高位の3家のうち、グリーフィルド家に第1子の女子の後、跡継ぎとなる男子が産まれなかった。この国では女子も爵位を引き継げるため、表向き家を存続させるのには問題がない。
ただ、財政を司るグリーフィルド家。ここまで血がなせる業なのか、必ず優秀な文官を輩出してきたのだ。ここ何代も、財政官の長はグリーフィルドの者が担ってきた。だからこそ、マクドエルの秘密を共有する家の一角に選ばれているのだ。
女侯爵でも問題はない。もちろん、財政の長も優秀であれば女でも問題はないであろう。しかし、女で家長となると子を産む必要性が生じる。その間不在となるのは国として問題があった。
そして、王家とマクドエルと3家の話し合いの末、選ばれたのがアランであった。
グリーフィルド家の次代を担う婿養子として。
アランが選ばれたのには理由があった。
一つは、グリーフィルドの一人娘であるフェリアと年がさほど離れていないこと。実は、アランの下にもう一人弟がいる。その弟はフェリアと同い年なのだが、アランが選ばれたのには、もう一つの理由がある。
その二つ目の理由は、アランの頭脳にあった。
マクドエルには総じて優秀なものが多いと言われるが、それは【諜報活動】に特化している。そんな中で、アランは少し特殊だった。
その才能は幼い頃から片鱗を見せていた。他の子供より早く言葉を覚え、さらにあっという間に算術も熟すようになる。そうした学術的な才能において、他のマクドエルの子供とは一線を画していた。
その上で、マクドエルの特徴も備えていた。感情のコントロールも教育課程において問題なく習得したし、齢6歳にして才能在りと評価されたのだ。
グリーフィルドの一人娘フェリアが6歳になったころ、話し合いに決着が着いた。
グリーフィルドに嫁いだ伯爵家を手放したくない王家と、グリーフィルドに課せられた役割を継げるであろうアランの存在が、後継者問題に終止符を打った形である。
そんな事情は、王家と3家当主とマクドエル家しか知らないことだ。
アランは、マクドエル家の人間であり、当事者でもあるため、フェリアとの婚約が決まった当初からこの事情については説明を受けていた。
グリーフィルドの婿になるということは、【財政の要】を担うこと・【王家を守る闇の秘密】を守ること。
アランには、グリーフィルドの仕事と、マクドエルの仕事の両方を担うことが課せられたのだ。
40
あなたにおすすめの小説
愛を騙るな
篠月珪霞
恋愛
「王妃よ、そなた一体何が不満だというのだ」
「………」
「贅を尽くした食事、ドレス、宝石、アクセサリー、部屋の調度も最高品質のもの。王妃という地位も用意した。およそ世の女性が望むものすべてを手に入れているというのに、何が不満だというのだ!」
王妃は表情を変えない。何を言っても宥めてもすかしても脅しても変わらない王妃に、苛立った王は声を荒げる。
「何とか言わぬか! 不敬だぞ!」
「……でしたら、牢に入れるなり、処罰するなりお好きに」
「い、いや、それはできぬ」
「何故? 陛下の望むままなさればよろしい」
「余は、そなたを愛しているのだ。愛するものにそのような仕打ち、到底考えられぬ」
途端、王妃の嘲る笑い声が響く。
「畜生にも劣る陛下が、愛を騙るなどおこがましいですわね」
妻が通う邸の中に
月山 歩
恋愛
最近妻の様子がおかしい。昼間一人で出掛けているようだ。二人に子供はできなかったけれども、妻と愛し合っていると思っている。僕は妻を誰にも奪われたくない。だから僕は、妻の向かう先を調べることににした。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
捨てられた聖女様
青の雀
恋愛
孤児として拾われたジェニファーは、5歳の時、聖女様に覚醒し、バルサン王家の庇護のもと、同い年の第1王子と婚約者になる。
成長するにつれ、王子は、公女様と浮名を流すようになり、国王陛下が早逝されたことをいいことに、婚約破棄されてしまう。
それというのも、公女様が自分こそが真の聖女でジェニファーは偽聖女だという噂を広められ、巡礼に行った先で、石やごみを投げられるなどの嫌がらせに遭う。
国境付近で、まるでゴミを投げ捨てるかのように捨てられたジェニファーは、隣国の貧乏国の王子様に拾われ、聖なる力を解放する。
一方、聖女様を追い出したバルサン国では、目に見えて衰退の一途をたどる。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
妹なんだから助けて? お断りします
たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる