真実の愛は罪か否か

KAORU

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不実な婚約者は【真実の愛】を謳う(※タイトル変更しました)

6.グリーフィルド家の事情

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 アランの婿入りが決まったころ、グリーフィルド家の当主はまだフェリアの祖父が担っていた。
 フェリアの父も後を継ぐべく、文官として王城に出仕していたが、侯爵位はまだ祖父にあったのだ。マクドエルの真価は当主にしか伝えられない。だから、フェリアとの婚約時、父親はまだ令息の立場であったために詳しくは語られなかったのだ。

 フェリアが14歳のころ、婚約解消の話が出た。その時に、このままでは支障を来すことが分かった祖父は、フェリアの父に爵位を譲ることとした。
 そうして、侯爵として初めて、王城にてマクドエルとの関係性を説かれたフェリアの父は、この婚約の意味を正しく理解した。

 フェリアの父は、アランの才能を高く評価していた。それはいずれ財政の長となるべく育てられた彼からすれば、自分を凌ぐ才能を持つアランは有望な跡継ぎとなることが理解できたからだ。
 そして、侯爵となって裏も含めたすべてを背負った時、フェリアしか子供が出来なかったことで、婿となるアランとフェリアに背負わせる枷の大きさを理解する。フェリアには厳しい道となるだろうが、いずれは侯爵は彼女が継ぐのだ。強くなってもらわねばならない。そして自分が出来る範囲のギリギリまでこの責任を果たそう、そう心を決めた。

 フェリアには幼い頃から厳しい教育が施されていた。何れは侯爵家が持つ領地の経営を担わねばならない。文官としての出仕はアランが担うとしても、侯爵家はフェリアが担うからである。
 そしてアランが持つ闇の部分も理解して、伴侶として寄り添わねばならない。それが明らかになって、フェリアの父はこのグリーフィルド侯爵家という家が持つ責務を改めて痛感した。

 考えれば、マクドエル伯爵家とは近すぎず遠すぎずの関係ではあったものの、折に触れて接触する機会が多かった。事実前当主同士の間柄は良好だ。家門一族との仲ほどではないにしろ、他の派閥の貴族などよりは距離は近かった。
 少し前に、彼方も伯爵家当主が変更となっていた。それは、アランとフェリアの婚約が成されてしばらくの事だった。おそらくこのアランの婿入りに際して、アランの父に代替わりをしたのだろう。
 
 グリーフィルドをはじめとした3家には、当主にのみマクドエルの特殊性を伝えられる。
 跡継ぎとなる子供には早めに理解させておきたいとは思うのが親心ではあるが、いつ何時、次期当主が変更となるかは分からない。秘匿性の高いマクドエルの存在は、広く知られてしまう訳にはいかなかった。
 そんな事情も全て当主となった時に伝えられる。

 だから、婚約者の変更を求めた時、時間が掛かった。事前に動きを察知した当時の侯爵は、すぐさま譲位の申請をし、速やかに行われたが、その後、新たな当主に自分の役割とマクドエルについて、そしてアランの婿入りの意味を説明し、説得するのに時間を要したのである。

 そうしてようやく呼び出された王城で、改めてマクドエル伯爵と相対した。

「アラン殿の件ですが。
 この婚約は王命によるものと理解しております。それでも我が娘に負担をかけるような振る舞いは辞めていただきたい」

 絞り出すようにグリーフィルド侯爵が言うと、マクドエル伯爵は、眉尻を下げて困り顔になった。

「そこは、陛下よりお話があると思います。私たちではどうにもならないことなのです。
 婚約についても同様です。フェリア嬢には申し訳ないと重々承知の上ですが……」

 マクドエル伯爵が言葉を濁した。マクドエルにはマクドエルの事情がある。それは空気で伝わる。
 
 程なくして陛下の御前に呼ばれ、婚約の継続は王命であると告げられ、再度マクドエルと話し合うように告げられた。その後、半日をかけてマクドエル伯爵から仔細の説明があり、侯爵は納得せざるを得なかった。
 

 グリーフィルドは、国の要の一つである。そしてマクドエルは国の闇を掌握する。今代、王は、この二つを結びつける判断をした。
 それはグリーフィルドが今まで若干の距離を取り続けてきた闇の部分に呑み込まれるということを意味した。


 侯爵は、重苦しい想いを抱えながら、フェリアに告げた。

 
 「フェリア、婚約は継続だ。陛下の裁可はそのように下った。
 理由は、そのうち分かる。それまでは辛い思いをさせるかもしれないが、家のためと思って耐えて欲しい。次期当主として強くなれ」

 

 
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