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不実な婚約者は【真実の愛】を謳う(※タイトル変更しました)
15.不可解な遭遇
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「ヨーク子爵、大丈夫かしら。顔色が真っ青だったわ」
馬車に揺られながら、フェリアは呟いた。隣のアランには動揺は見られない。
「随分と体調が悪そうだったね。大事ないといいけど」
笑みを湛えたままアランが答えた。アラン・マクドエルという男は、仮面を使い分ける男である。
フェリアは、今日のヨーク子爵の様子を思い返した。デイジーの相手がアランであることを知り、明らかに動揺した風情であった。デイジーはというと前回絡まれた時から全く変わっていない。成績も底辺だと聞いたから、アランさえ手に入れば、相手がどんな家であろうと何も考えてはいないのだろう。アランの名前を聞いて、そしてフェリアを紹介されて、明らかに父であるヨーク子爵の顔色は激変したのだから、デイジーもそろそろ自分の行動が家にもたらす影響については考えなければならない。
考えてみれば、ここまでアランの女性関係については、噂で知る程度でしかなかった。相手の女性と相対したことなどなかったのだ。夜会であったり、茶会であったり、少なからずアランと出かけることはあったのに、何人もの女性の噂を聞いていながら、直接会ったことがあるのは今回のデイジーが初めてであることに気付く。
いつも噂話。その女性の行動なども、話で聞くだけ。聞こえてくるだけの話でも、問題ありな令嬢だという印象が強い女性ばかり相手であったと記憶はしている。だが、現実に顔を見たわけでも、アランと並ぶ姿を見たわけでもない。
他の人は、多々目撃をしているにも拘らず、そしてお節介な人たちがフェリアにその話を親切に教えてくれたりするが、アランはフェリアにだけは女性の影すら見せたりしなかったのだ。
ふと疑問に思う。ここまでは故意に避けられていたのではないかと。アランは、フェリアにはその姿を見せないように行動してきたのではないのか、と。
フェリアは今まで、アランは恋がしたいのだと思っていた。時が来れば、彼はグリーフィルドに囚われる。婿という立場上、愛人を持つこともできない。全く自由というわけではないが、行き過ぎなければ多少の遊びは目溢しされる今この時期だけの、期間限定の恋人遊戯をしているのだと。
だから深く追求しなかった。グリーフィルドの名に、そして彼の実家に、傷さえ付かなければ、そしてフェリアに害が及ばなければそれでいいと思ってきた。
【そのうち、アランはフェリアの元に戻ってくる】
それは、フェリアの中では確信していることだった。フェリアに対するアランの態度は、信じるに値するものと感じられるからであり、アランの中のフェリアという存在は特別なように思われたからだ。
ふと隣に座るアランを見上げると、フェリアの視線に気づいた彼が目尻を下げて笑う。いつもフェリアに見せる柔らかい笑みである。
フェリアはこのアランの顔を見るとホッとする。フェリアが彼の中で特別なのだと思わせる顔だからだ。
恋をする相手ではないだろう。でも、きっと家族として大切にはしてくれる。そう信じられる笑顔なのだ。
でも、おそらく彼は、今フェリアの心に浮かんだ疑問については、聞いても答えてはくれない。
「アラン、また新しく本が読みたいわ。最近お勧めの小説があったら、持ってきてくださる?」
フェリアはあえて心に湧き上がる疑問を封じて、話題を振る。
「ああ、そういえばここの所君に本を持っていっていなかったね。わかったよ。次の茶会で渡せるよう、探しておこう」
少しだけ首を傾げて思案するアランの頭の中が、今はフェリアに渡す本の事で満たされていると思えば、少し安心できる。
他愛もない話をしながら、馬車はあっという間にグリーフィルド家の門を潜った。
「ねえ、アラン様の今までのお相手について調べてほしいのだけど」
フェリアは、部屋に入るなり、傍らにピタリと侍る侍女にそう声を掛けた。
「アラン様の、ですか。フェリア様、今までお気に掛けておられなかったのに、どうされたのです?」
この侍女はフェリアが小さなころから側にいる姉のような存在なので、返す言葉も気安い。一時出産で離れたが、また戻って来てくれた気心の知れた中である。
「ちょっと思うことがあって……。今までアラン様の相手の事、本当に気にしたことはなかったの。
だけど、今のお相手とは直接会うことがあって。今日も劇場でお会いしたの。今までこんなこと、なかったじゃない?」
「そうですね。アラン様としたことが珍しいですね。今までフェリア様の前では影も見せなかったのに」
「そうよね。でもそれって、噂の数からすれば、おかしなことかと思ったの。わたくしに全く接触させないなんてあるのかしらと思って。
もし、もし、よ? アラン様が本当に女性に恋をしたとして、そのお相手を全くわたくしの前に出さないのって結構大変だと思うのよ。
今回のお相手―― ヨーク子爵令嬢なのだけれど、まさか出かけた先でお会いするなんて思わないもの。
学園に入ったから、学内でお会いすることはあるかも、と思ってはいたけれど……」
小さく溜息をつくフェリアに、侍女はお茶を出して、話の続きを促した。
「こうして出会ってみて、思ったのよ。大体全く遭遇しなかった今までがおかしかったのではないの?と。
意図されているのだとしたら……
そう考えたら、今までの令嬢たちことをちゃんと調べたことがなかったわ、と思って」
「なるほど、かしこまりました。調べてみましょう。なんにせよ、アラン様のお相手について、少しは気になさるようになって安心です」
侍女はそういうと、少し意地悪な顔をしてフェリアを見た。揶揄われていると分かって、フェリアは頬を膨らませる。
そんな顔を見せるのも、この侍女だからである。
「お子様だって言いたいのでしょう? いつまでも子供じゃないわよ。ちゃんとアラン様とは夫婦になるのだと分かっているもの」
馬車に揺られながら、フェリアは呟いた。隣のアランには動揺は見られない。
「随分と体調が悪そうだったね。大事ないといいけど」
笑みを湛えたままアランが答えた。アラン・マクドエルという男は、仮面を使い分ける男である。
フェリアは、今日のヨーク子爵の様子を思い返した。デイジーの相手がアランであることを知り、明らかに動揺した風情であった。デイジーはというと前回絡まれた時から全く変わっていない。成績も底辺だと聞いたから、アランさえ手に入れば、相手がどんな家であろうと何も考えてはいないのだろう。アランの名前を聞いて、そしてフェリアを紹介されて、明らかに父であるヨーク子爵の顔色は激変したのだから、デイジーもそろそろ自分の行動が家にもたらす影響については考えなければならない。
考えてみれば、ここまでアランの女性関係については、噂で知る程度でしかなかった。相手の女性と相対したことなどなかったのだ。夜会であったり、茶会であったり、少なからずアランと出かけることはあったのに、何人もの女性の噂を聞いていながら、直接会ったことがあるのは今回のデイジーが初めてであることに気付く。
いつも噂話。その女性の行動なども、話で聞くだけ。聞こえてくるだけの話でも、問題ありな令嬢だという印象が強い女性ばかり相手であったと記憶はしている。だが、現実に顔を見たわけでも、アランと並ぶ姿を見たわけでもない。
他の人は、多々目撃をしているにも拘らず、そしてお節介な人たちがフェリアにその話を親切に教えてくれたりするが、アランはフェリアにだけは女性の影すら見せたりしなかったのだ。
ふと疑問に思う。ここまでは故意に避けられていたのではないかと。アランは、フェリアにはその姿を見せないように行動してきたのではないのか、と。
フェリアは今まで、アランは恋がしたいのだと思っていた。時が来れば、彼はグリーフィルドに囚われる。婿という立場上、愛人を持つこともできない。全く自由というわけではないが、行き過ぎなければ多少の遊びは目溢しされる今この時期だけの、期間限定の恋人遊戯をしているのだと。
だから深く追求しなかった。グリーフィルドの名に、そして彼の実家に、傷さえ付かなければ、そしてフェリアに害が及ばなければそれでいいと思ってきた。
【そのうち、アランはフェリアの元に戻ってくる】
それは、フェリアの中では確信していることだった。フェリアに対するアランの態度は、信じるに値するものと感じられるからであり、アランの中のフェリアという存在は特別なように思われたからだ。
ふと隣に座るアランを見上げると、フェリアの視線に気づいた彼が目尻を下げて笑う。いつもフェリアに見せる柔らかい笑みである。
フェリアはこのアランの顔を見るとホッとする。フェリアが彼の中で特別なのだと思わせる顔だからだ。
恋をする相手ではないだろう。でも、きっと家族として大切にはしてくれる。そう信じられる笑顔なのだ。
でも、おそらく彼は、今フェリアの心に浮かんだ疑問については、聞いても答えてはくれない。
「アラン、また新しく本が読みたいわ。最近お勧めの小説があったら、持ってきてくださる?」
フェリアはあえて心に湧き上がる疑問を封じて、話題を振る。
「ああ、そういえばここの所君に本を持っていっていなかったね。わかったよ。次の茶会で渡せるよう、探しておこう」
少しだけ首を傾げて思案するアランの頭の中が、今はフェリアに渡す本の事で満たされていると思えば、少し安心できる。
他愛もない話をしながら、馬車はあっという間にグリーフィルド家の門を潜った。
「ねえ、アラン様の今までのお相手について調べてほしいのだけど」
フェリアは、部屋に入るなり、傍らにピタリと侍る侍女にそう声を掛けた。
「アラン様の、ですか。フェリア様、今までお気に掛けておられなかったのに、どうされたのです?」
この侍女はフェリアが小さなころから側にいる姉のような存在なので、返す言葉も気安い。一時出産で離れたが、また戻って来てくれた気心の知れた中である。
「ちょっと思うことがあって……。今までアラン様の相手の事、本当に気にしたことはなかったの。
だけど、今のお相手とは直接会うことがあって。今日も劇場でお会いしたの。今までこんなこと、なかったじゃない?」
「そうですね。アラン様としたことが珍しいですね。今までフェリア様の前では影も見せなかったのに」
「そうよね。でもそれって、噂の数からすれば、おかしなことかと思ったの。わたくしに全く接触させないなんてあるのかしらと思って。
もし、もし、よ? アラン様が本当に女性に恋をしたとして、そのお相手を全くわたくしの前に出さないのって結構大変だと思うのよ。
今回のお相手―― ヨーク子爵令嬢なのだけれど、まさか出かけた先でお会いするなんて思わないもの。
学園に入ったから、学内でお会いすることはあるかも、と思ってはいたけれど……」
小さく溜息をつくフェリアに、侍女はお茶を出して、話の続きを促した。
「こうして出会ってみて、思ったのよ。大体全く遭遇しなかった今までがおかしかったのではないの?と。
意図されているのだとしたら……
そう考えたら、今までの令嬢たちことをちゃんと調べたことがなかったわ、と思って」
「なるほど、かしこまりました。調べてみましょう。なんにせよ、アラン様のお相手について、少しは気になさるようになって安心です」
侍女はそういうと、少し意地悪な顔をしてフェリアを見た。揶揄われていると分かって、フェリアは頬を膨らませる。
そんな顔を見せるのも、この侍女だからである。
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