2 / 10
婚約破棄されたので、全力で応援することにしました。ふふっ、幸せになってくださいね。~真実の愛を貫く代償~
第二話 馴れ初め
しおりを挟む
婚約破棄を伝えられてから数日後、ふたりは両家に伝えるタイミングを話し合うために密かに会っていた。
「色々と話す前にわたくしは真実の愛について伺いたいのです。だって本当に素敵なお話ではないですか」
「そう思うのも無理はない。よし、いいだろう。お前には特別にすべて話そう。何が聞きたい?」
「おふたりの馴れ初めを伺いたいですわ。きっと素敵なお話でしょう」
「馴れ初めか……。少し照れくさいな。でも教えてやろう。なぁに単純なことだ。私がケリーの魅力にやられたってことだ」
「身分の違いもありますでしょう。そこを越えたタイミングがあったのではないですか?」
「ある時ケリーに用があってケリーの部屋まで行ったんだ、何度名前を呼んでも返事がないのに物音がするので部屋に入ってみたらケリーが着替えていた。笑える話だが、そんなことが偶然何度も起ってしまったんだ。それからケリーのことしか考えられなくなった」
「偶然……ですか。相思相愛だとわかったのはいつなんですか?」
「もう一年前にもなる。ケリーが私のことを好きだと言ってきたのだ。正確には『慕っている』と。表情はまさに恋する乙女だった。その日に心も体も結ばれたのだ」
「なんてロマンチックなんでしょう。まさに真実の愛ですね」
(恋する乙女って年齢でもないでしょう。というか体使って骨抜きにされただけか……。本当になさけない男)
「殿下、陛下にお伝えするのはいつになさるおつもりですか?」
「私は正々堂々と伝えようと思う。父上が公務から戻られた日に、家族での食事の場で伝えるつもりだ」
「殿下、それはなりません。失礼ですが、家族だけがいる場で伝えるなど一番の愚策です」
「なぜだ? 愚策とまで言うからにはそれなりの理由があるのだろ?」
「もしご家族だけの場でケリーさんとの愛について報告したらどうなりましょう。きっとケリーさんは追放されてしまいます。この話はなかったことにされてしまうのです。もしケリーさんの身に何かあったらと思うとわたくしとても心配です」
「なるほど。確かにそうだ。父上ならそうするだろう……。ではどうすれば良いのだ?」
アントミーは険しい顔をしながらそう質問した。
「なかったことに出来ない場で報告すれば良いのです。ちょうど陛下も殿下もわたくしも参加するパーティがあるではないですか。その場で皆の前で高らかに宣言するのです」
「なるほど! そうすればなかったことには出来ないな。よし、決まりだ!」
「殿下、わたくし本当に応援しております! 真実の愛がどんなものかもっと知りたいです。当日が楽しみです」
(ふふっ、本当に楽しみですよ。皆の前で婚約破棄なんて。どう考えたってあの女は金と地位が目当てのだけなのに。そうじゃなければこんな馬鹿な男を誰が好きになるのよ)
そうしてあっという間にパーティ当日となった。
「色々と話す前にわたくしは真実の愛について伺いたいのです。だって本当に素敵なお話ではないですか」
「そう思うのも無理はない。よし、いいだろう。お前には特別にすべて話そう。何が聞きたい?」
「おふたりの馴れ初めを伺いたいですわ。きっと素敵なお話でしょう」
「馴れ初めか……。少し照れくさいな。でも教えてやろう。なぁに単純なことだ。私がケリーの魅力にやられたってことだ」
「身分の違いもありますでしょう。そこを越えたタイミングがあったのではないですか?」
「ある時ケリーに用があってケリーの部屋まで行ったんだ、何度名前を呼んでも返事がないのに物音がするので部屋に入ってみたらケリーが着替えていた。笑える話だが、そんなことが偶然何度も起ってしまったんだ。それからケリーのことしか考えられなくなった」
「偶然……ですか。相思相愛だとわかったのはいつなんですか?」
「もう一年前にもなる。ケリーが私のことを好きだと言ってきたのだ。正確には『慕っている』と。表情はまさに恋する乙女だった。その日に心も体も結ばれたのだ」
「なんてロマンチックなんでしょう。まさに真実の愛ですね」
(恋する乙女って年齢でもないでしょう。というか体使って骨抜きにされただけか……。本当になさけない男)
「殿下、陛下にお伝えするのはいつになさるおつもりですか?」
「私は正々堂々と伝えようと思う。父上が公務から戻られた日に、家族での食事の場で伝えるつもりだ」
「殿下、それはなりません。失礼ですが、家族だけがいる場で伝えるなど一番の愚策です」
「なぜだ? 愚策とまで言うからにはそれなりの理由があるのだろ?」
「もしご家族だけの場でケリーさんとの愛について報告したらどうなりましょう。きっとケリーさんは追放されてしまいます。この話はなかったことにされてしまうのです。もしケリーさんの身に何かあったらと思うとわたくしとても心配です」
「なるほど。確かにそうだ。父上ならそうするだろう……。ではどうすれば良いのだ?」
アントミーは険しい顔をしながらそう質問した。
「なかったことに出来ない場で報告すれば良いのです。ちょうど陛下も殿下もわたくしも参加するパーティがあるではないですか。その場で皆の前で高らかに宣言するのです」
「なるほど! そうすればなかったことには出来ないな。よし、決まりだ!」
「殿下、わたくし本当に応援しております! 真実の愛がどんなものかもっと知りたいです。当日が楽しみです」
(ふふっ、本当に楽しみですよ。皆の前で婚約破棄なんて。どう考えたってあの女は金と地位が目当てのだけなのに。そうじゃなければこんな馬鹿な男を誰が好きになるのよ)
そうしてあっという間にパーティ当日となった。
47
あなたにおすすめの小説
聖女は神の力を借りて病を治しますので、神の教えに背いた病でいまさら泣きついてきても、私は知りませんから!
甘い秋空
恋愛
神の教えに背いた病が広まり始めている中、私は聖女から外され、婚約も破棄されました。
唯一の理解者である王妃の指示によって、幽閉生活に入りましたが、そこには……
貧乏伯爵家の妾腹の子として生まれましたが、何故か王子殿下の妻に選ばれました。
木山楽斗
恋愛
アルフェンド伯爵家の妾の子として生まれたエノフィアは、軟禁に近い状態で生活を送っていた。
伯爵家の人々は決して彼女を伯爵家の一員として認めず、彼女を閉じ込めていたのである。
そんな彼女は、ある日伯爵家から追放されることになった。アルフェンド伯爵家の財政は火の車であり、妾の子である彼女は切り捨てられることになったのだ。
しかし同時に、彼女を訪ねてくる人が人がいた。それは、王国の第三王子であるゼルーグである。
ゼルーグは、エノフィアを妻に迎えるつもりだった。
妾の子であり、伯爵家からも疎まれていた自分が何故、そんな疑問を覚えながらもエノフィアはゼルーグの話を聞くのだった。
ハミルトン伯爵家の四姉妹
宝月 蓮
恋愛
セドウェン王国のハミルトン伯爵家には四姉妹がいる。長女ロヴィーサ、次女ヨンナ、三女ウリカ、四女スティーナだ。
これは彼女達の小さな恋物語。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
【完結】悪役令嬢が起こした奇跡〜追放されたのに皆様がわたくしを探しているらしいですわ〜
ウミ
恋愛
精霊の愛子が現れた。教会が権力を持ち始めていた時代、ルビーはそれを止めるために精霊の愛子が真名を名乗るのを防ぐ。しかし、婚約者だった皇子は精霊の愛子と結婚しようとし、ルビーは側室になれと父から命じられた。
父に認められるために、血反吐を吐くほど努力して勝ち取った座を、ルビーの苦労を父は最も簡単に投げ捨てたのだった。
「聖女に比べてお前には癒しが足りない」と婚約破棄される将来が見えたので、医者になって彼を見返すことにしました。
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
「ジュリア=ミゲット。お前のようなお飾りではなく、俺の病気を癒してくれるマリーこそ、王妃に相応しいのだ!!」
侯爵令嬢だったジュリアはアンドレ王子の婚約者だった。王妃教育はあんまり乗り気ではなかったけれど、それが役目なのだからとそれなりに頑張ってきた。だがそんな彼女はとある夢を見た。三年後の婚姻式で、アンドレ王子に婚約破棄を言い渡される悪夢を。
「……認めませんわ。あんな未来は絶対にお断り致します」
そんな夢を回避するため、ジュリアは行動を開始する。
【完結】「お前に聖女の資格はない!」→じゃあ隣国で王妃になりますね
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【全7話完結保証!】
聖王国の誇り高き聖女リリエルは、突如として婚約者であるルヴェール王国のルシアン王子から「偽聖女」の烙印を押され追放されてしまう。傷つきながらも母国へ帰ろうとするが、運命のいたずらで隣国エストレア新王国の策士と名高いエリオット王子と出会う。
「僕が君を守る代わりに、その力で僕を助けてほしい」
甘く微笑む彼に導かれ、戸惑いながらも新しい人生を歩み始めたリリエル。けれど、彼女を追い詰めた隣国の陰謀が再び迫り――!?
追放された聖女と策略家の王子が織りなす、甘く切ない逆転ロマンス・ファンタジー。
王太子に婚約破棄され塔に幽閉されてしまい、守護神に祈れません。このままでは国が滅んでしまいます。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
リドス公爵家の長女ダイアナは、ラステ王国の守護神に選ばれた聖女だった。
守護神との契約で、穢れない乙女が毎日祈りを行うことになっていた。
だがダイアナの婚約者チャールズ王太子は守護神を蔑ろにして、ダイアナに婚前交渉を迫り平手打ちを喰らった。
それを逆恨みしたチャールズ王太子は、ダイアナの妹で愛人のカミラと謀り、ダイアナが守護神との契約を蔑ろにして、リドス公爵家で入りの庭師と不義密通したと罪を捏造し、何の罪もない庭師を殺害して反論を封じたうえで、ダイアナを塔に幽閉してしまった。
醜い私を救ってくれたのはモフモフでした ~聖女の結界が消えたと、婚約破棄した公爵が後悔してももう遅い。私は他国で王子から溺愛されます~
上下左右
恋愛
聖女クレアは泣きボクロのせいで、婚約者の公爵から醜女扱いされていた。だが彼女には唯一の心の支えがいた。愛犬のハクである。
だがある日、ハクが公爵に殺されてしまう。そんな彼女に追い打ちをかけるように、「醜い貴様との婚約を破棄する」と宣言され、新しい婚約者としてサーシャを紹介される。
サーシャはクレアと同じく異世界からの転生者で、この世界が乙女ゲームだと知っていた。ゲームの知識を利用して、悪役令嬢となるはずだったクレアから聖女の立場を奪いに来たのである。
絶望するクレアだったが、彼女の前にハクの生まれ変わりを名乗る他国の王子が現れる。そこからハクに溺愛される日々を過ごすのだった。
一方、クレアを失った王国は結界の力を失い、魔物の被害にあう。その責任を追求され、公爵はクレアを失ったことを後悔するのだった。
本物語は、不幸な聖女が、前世の知識で逆転劇を果たし、モフモフ王子から溺愛されながらハッピーエンドを迎えるまでの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる