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第5章 脅威襲来、そして王都へ
第31話
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いつもありがとうございます。
力試しも兼ねて大賞にエントリーしてみました。良ければ応援宜しくお願いします。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ヒロト様っ!? 」
目を開けると、真っ先に目に飛び込んで来たのは、目を真っ赤にして泣き腫らし、心配そうに俺の顔を覗き込むセイリアだった。
どうやら意識を無くしていた俺は、昨夜通された客間に運び込まれて寝かされていたようだ。着ていた衣服はそのままみたいだが、革鎧やベルトは外されて、丁寧に枕元に置いてあった。
それにしても、随分心配かけちゃったみたいだな……。ゆっくりと身体を起こしながらセイリアに話しかけようとすると、
ーーボスッ! ーー
「ヒロト様、ヒロト様、ヒロドざまぁぁぁぁ~~~~! 」
セイリアが顔を涙でくしゃくしゃにして俺の胸へと飛び込んで来た。慌てて受け止めるが、その勢いで再び布団へと倒れ込んでしまう。グスグスと泣きじゃくりながら、ギュウとしがみ付いてくるセイリアをそっと抱きしめ返して、柔らかな銀の髪を撫でる。
「ゴメンなセイリア、心配かけて悪かった。もう全然平気だから、そんなに泣かないでくれ 」
「うえぇぇぇぇぇぇんっ!ヒロト様ぁ、良がった、良かっだです~~! 」
あ~あ…、大泣きしちゃって…。そういえば、レイナルドさんやラーナちゃんの時もこんな感じだったような?
普段、武家の子女たらんと気を張ってる反動なんだろうな、どっちにしても悪い事しちゃったなぁ……。
「おおっ!? ヒロトよ、目が覚めたか!良かった、良かった。大事ないかの? 」
スッと障子が開いて、爺さんやランドさん、レイナルドさん達が部屋に入って来た。さっき部屋の外にあったラーナちゃんの反応が離れていったから、セイリアの声で俺の目が覚めたのを察して報らせに行ったんだろう。
まあ、いいタイミングで来てくれた。泣きじゃくるセイリアを、なんて言って宥めたものか?と、少ぉ~し悩んでたんだよね、ありがたい。
「ああ、爺さん。勝手に一人で飛び出したクセに、心配かけて申し訳なかった。ただの魔力枯渇で気を失っただけで、身体の方は何ともないよ。魔力の方も、もう全快してるしな 」
「そうかそうか、そいつは何よりじゃ。しかし、もう”全快”しとるとは…、つくづく規格外じゃのうお前は? しかも、何じゃお前?それほど身体も大きくは無いというのに、やたらと重かったぞ!? 大の大人が四人で《身体強化》まで使ってこの部屋まで運んだんじゃぞ?一瞬、お前の事を〈遺物級〉の魔術人形なんじゃないかと疑ったわ 」
ふははははっ!っと、いつもの笑い方で笑う爺さんだが…、鋭いっ!? 当たらずとも遠からじ、だぞ爺さん!?
ヤバかったな~~っ!? 重くて当然、俺はサイボーグ、全身義体だ。
ただ、確かに全身の約七割は何らかの人工物で構成されているが、大昔の物語みたいに全身が金属で脳だけ生身なんて訳じゃない。
そこはそれ、本来なら俺の身体は”大和政府の備品”とでもいうべきシロモノで、それこそ超国家機密な最先端技術の塊な訳で。
最新の分子工学を元に作成された強化チタン合金やハイパーナノカーボン複合素材。開発された二十世紀末のそれとはケタ違いの耐久性や柔軟性、剛性に富んだプラスチックなど、これら強固でありながら軽量というちょっと昔では考えられない素材の数々で骨格や体内機器の類いは構成されている。
なかでも特筆すべきは、バイオテクノロジーを応用した生体素材の数々だ。おかげで今や義体の技術は格段に進歩し、皮膚や髪、眼球など、ほとんど生身にしか見えないほどだし、人工筋肉の発達で油圧式シリンダーやダンパー等はほぼ駆逐されてしまい、今や義体とは人工物で構成されているだけで、その構造は生身のそれと殆ど変わらないものになっている。
まあ、人工皮膚の下には耐弾、耐刃効果のある軟式装甲なんてものもあったりはするけども……。
これらの最先端技術によって、本当であれば百キロを軽く超えるはずの体重が、九十キロ程度に抑えられている。これは以前に述べたと思うが、俺と大輔の任務に置ける役割で、速やかな移動や静音行動、更には一気に接近しての格闘戦による制圧や捕縛(時には暗殺)などの作戦行動に主眼を置いた義体構成になっているからだ。
(逆に、正面突破や強襲を主とするチームの連中の中には、モ◯ルスーツにしか見えない義体の奴とかも居たが)
まあ、それでも体格的にあり得ないほど重い事は重いんだけどな。
ちなみに残り三割の生体部分とは、当然脳幹や内臓器官の一部、あとは生殖器官(”黄金の宝玉”の方な)などである。だから、そのうちセイリアとかとゴニョゴニョ……、な~~んて事になっても一応子供は出来るはずだ。……たぶん。
まあ、元々エルフ族ってのは長命であるが故に子供が出来難いらしいんだが、その辺は何とかなるだろう。別に今すぐって訳じゃないし、まだまだ先の話だろうしな?
すまん、話が逸れたな。ってな訳で、いくら気を失っていたとしても担ぎ上げられて運ばれたのは不味かったな……、まあいい、あんまり気にはしてないみたいだし、何か上手いこと言ってごまかそう…(汗)
「ところで、北側の事はともかく、南側の方は大丈夫だったのか?被害状況はどれくらいだったんだ? 」
話を逸らすべく、爺さんに別の話題を振ってみる。
「うむ、問題無しじゃな。若いサムライ共の中に、油断や緊張から多少の怪我をした者も出たが、まあ、それも良い経験じゃな。既に治療魔法での処置も終わって元気にしておるよ。それどころか、初戦の興奮冷めやらずで煩いくらいじゃわ 」
そう言われて耳を澄ませてみれば、屋敷の外、遠くに、近くで、歓声や勝鬨の声が聞こえてくる。
「まったく、お前の戦った北側「黒門」の方でならともかく、たかがあれしきの魔獣の群れを殲滅した程度で浮かれおって…。若僧ばかりではない、いい歳こいた爺い共まで一緒になって大騒ぎとは情け無い! 」
とか言いながら、爺さんアンタも随分機嫌が良さそうだな?悪態ついちゃいるが、さっきから口元はニヤニヤしたまんまだぞ。
「まあ、いいじゃないか、万を超える敵を防いで里を守り切ったんだ。多少は大目に見てやれよ 」
「分かっておる。さて……、これ、セイリア。いい加減泣き止まんか!武家の娘がグスグスといつまでも。一応、親の前じゃぞ、はしたない、シャンとせんか! 」
「は、はい!…グスッ 」
爺さんの叱責に、やっとセイリアは泣き止んで、目と鼻だけでなく顔や耳まで真っ赤にしながら体を起こし、俺から離れた。
実はさっきから、爺さんと一緒に部屋に入ってきたランドさんが、複雑そ~~な顔をしながらセイリアの方を見ていたのだが、セイリアが居住まいを正した事でその視線をセイリアから外し、今度はランドさん自身が表情と居住まいを正して畳に両手をつくと、綺麗な所作で俺に向かって頭を下げた。
「ヒロト殿、此度の事、秀真の民全員に代わり、またこの秀真を治める者として心より御礼申し上げる。ヒロト殿が居らねば、武士団だけでなく里人達にも多大な害が及んだであろう。誠に忝のう御座った 」
立派な人だな…。セイリアの事で色々思う事があるだろうに、きちんと俺なんかにでも頭を下げている。「辺境伯」なんていう立場で頭を下げるなんて、なかなか出来ることじゃないと思う。
「えーと…、頭を上げて下さい。正直に言えば、始めは成り行きだったかもしれません。ですが、この里にお邪魔して色々な人と縁を結び、”大切にしたいと思う人”まで出来ました。今では秀真の國は、俺にとっても大事な場所です。なら、守って当然、当たり前の事をしただけです。皆んなが無事で笑っていられるなら、それだけでいい。だから顔を上げて下さい 」
ちょっと格好をつけ過ぎかな?とも思うが、実際、正直な気持ちだ。
もう帰る場所の無い俺にとっては、勝手ながら”第二の故郷”的な気がしてきている。「心の拠り所」みたいなモノを知らず求めているのかもしれないな。
顔を上げたランドさんは、なぜか苦笑していたが、その目は優しげな光を湛え、少し雰囲気までが柔らかくなったような気がした。
「それでヒロトよ、念の為聞くが、本当に身体の方は大丈夫なんじゃな? 」
なぜか念を押すように尋ねてくる爺さんに、全く問題無しだと伝えると、ウキウキとした様子で立ち上がり、側に控えていたレイナルドさん達に楽しそうに命令を伝えた。
「良し、良し!秀真の國全ての民に伝えよ。急いで準備せよ!とな。今宵は『大祝勝会』じゃーーーーーーーーーーーーーー!! 」
その後の事は色々あり過ぎて語り切れないので、簡単に述べる事に留める。
まあ、ヘタをすれば秀真の國そのものが無くなってしまったかもしれない出来事だったからな~~、先日の大宴会など比べものにならない程の盛り上がり様だった。
南と北から攻めて来た魔獣達だったが、北側、俺達の方からはアイの活躍もあり一匹の魔獣も通さなかったんだが、南側「朱門」の方は流石に空を飛ぶ魔獣の幾らかは里への進入を許してしまったらしい。
しかし、【精霊樹】が街を護るように覆い被さってくれたお陰で、街の中までは入って来れなかったそうだ。それどころか、流石【黒き武神】の守護する里、サムライ達以外にも森で狩りをしている者など、腕に覚えのある者達は大きく枝を伸ばした【精霊樹】へと登り、葉と葉の間から弓矢や魔法で攻撃したりして里の防衛に当たったらしい。
また、【精霊樹】は単に街に覆い隠しただけでなく、枝を槍のように伸ばしたり、葉っぱを刃の如く鋭くして飛ばしたりもして守ってくれたそうだ。
ーー【精霊樹】すげえっ!?ーー
その後は大した被害も無く、僅かに残った魔獣の残敵を掃討するなどして無事戦闘は終了し、後始末および大素材解体大会となった訳だが、なにしろ魔獣達の死骸の数が数なので、流石にその全てを解体する訳にはいかず、特に貴重な素材や美味とされる魔獣から解体していったらしい。
なので、『大祝勝会』に使用されている食材は全て魔獣から獲れたものばかり。おかわりなど山のようにあるわけで、死と隣り合わせだった反動か、皆物凄い食欲だった。まあ、単純に美味い肉(植物系の魔獣から採れた食材や果実なんかも美味かった)だったのもあるだろうけど。
酒も里中の酒を飲み干しちまうんじゃないか?と言うほどの勢いで飲んでいて、あっちこっちで笑いや泣き声、喧嘩に裸踊りまでし始める奴らまで出てくる始末……。全員が全員、死を覚悟した先に得た”生”を喜び、大勝利に浮かれ、予想以上の大戦果に大騒ぎだった。
しかも、今回は自分達の崇める守護聖獣〈クーガ〉様までが参戦し、伝説の巨獣【黒殻龍蟲】まで退けたとあって、盛り上がり具合は天井知らず、参加した里人全員が酔い潰れ、疲れ果てて眠りに就くまで『大祝勝会』は延々と続いたのだった……。
『マスター、マスター!次はアレ、あのお肉が食べたいです!! その次はあの赤い実の果物が……!? 』
ーーうんうん、アイの食いしん坊キャラも復活だね……。しかし、このままだと、アイの要求に応える為に”消化”を助ける魔法とかいるかもしれない!? ……あるのか?(汗)ーー
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「ヒロト様っ!? 」
目を開けると、真っ先に目に飛び込んで来たのは、目を真っ赤にして泣き腫らし、心配そうに俺の顔を覗き込むセイリアだった。
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それにしても、随分心配かけちゃったみたいだな……。ゆっくりと身体を起こしながらセイリアに話しかけようとすると、
ーーボスッ! ーー
「ヒロト様、ヒロト様、ヒロドざまぁぁぁぁ~~~~! 」
セイリアが顔を涙でくしゃくしゃにして俺の胸へと飛び込んで来た。慌てて受け止めるが、その勢いで再び布団へと倒れ込んでしまう。グスグスと泣きじゃくりながら、ギュウとしがみ付いてくるセイリアをそっと抱きしめ返して、柔らかな銀の髪を撫でる。
「ゴメンなセイリア、心配かけて悪かった。もう全然平気だから、そんなに泣かないでくれ 」
「うえぇぇぇぇぇぇんっ!ヒロト様ぁ、良がった、良かっだです~~! 」
あ~あ…、大泣きしちゃって…。そういえば、レイナルドさんやラーナちゃんの時もこんな感じだったような?
普段、武家の子女たらんと気を張ってる反動なんだろうな、どっちにしても悪い事しちゃったなぁ……。
「おおっ!? ヒロトよ、目が覚めたか!良かった、良かった。大事ないかの? 」
スッと障子が開いて、爺さんやランドさん、レイナルドさん達が部屋に入って来た。さっき部屋の外にあったラーナちゃんの反応が離れていったから、セイリアの声で俺の目が覚めたのを察して報らせに行ったんだろう。
まあ、いいタイミングで来てくれた。泣きじゃくるセイリアを、なんて言って宥めたものか?と、少ぉ~し悩んでたんだよね、ありがたい。
「ああ、爺さん。勝手に一人で飛び出したクセに、心配かけて申し訳なかった。ただの魔力枯渇で気を失っただけで、身体の方は何ともないよ。魔力の方も、もう全快してるしな 」
「そうかそうか、そいつは何よりじゃ。しかし、もう”全快”しとるとは…、つくづく規格外じゃのうお前は? しかも、何じゃお前?それほど身体も大きくは無いというのに、やたらと重かったぞ!? 大の大人が四人で《身体強化》まで使ってこの部屋まで運んだんじゃぞ?一瞬、お前の事を〈遺物級〉の魔術人形なんじゃないかと疑ったわ 」
ふははははっ!っと、いつもの笑い方で笑う爺さんだが…、鋭いっ!? 当たらずとも遠からじ、だぞ爺さん!?
ヤバかったな~~っ!? 重くて当然、俺はサイボーグ、全身義体だ。
ただ、確かに全身の約七割は何らかの人工物で構成されているが、大昔の物語みたいに全身が金属で脳だけ生身なんて訳じゃない。
そこはそれ、本来なら俺の身体は”大和政府の備品”とでもいうべきシロモノで、それこそ超国家機密な最先端技術の塊な訳で。
最新の分子工学を元に作成された強化チタン合金やハイパーナノカーボン複合素材。開発された二十世紀末のそれとはケタ違いの耐久性や柔軟性、剛性に富んだプラスチックなど、これら強固でありながら軽量というちょっと昔では考えられない素材の数々で骨格や体内機器の類いは構成されている。
なかでも特筆すべきは、バイオテクノロジーを応用した生体素材の数々だ。おかげで今や義体の技術は格段に進歩し、皮膚や髪、眼球など、ほとんど生身にしか見えないほどだし、人工筋肉の発達で油圧式シリンダーやダンパー等はほぼ駆逐されてしまい、今や義体とは人工物で構成されているだけで、その構造は生身のそれと殆ど変わらないものになっている。
まあ、人工皮膚の下には耐弾、耐刃効果のある軟式装甲なんてものもあったりはするけども……。
これらの最先端技術によって、本当であれば百キロを軽く超えるはずの体重が、九十キロ程度に抑えられている。これは以前に述べたと思うが、俺と大輔の任務に置ける役割で、速やかな移動や静音行動、更には一気に接近しての格闘戦による制圧や捕縛(時には暗殺)などの作戦行動に主眼を置いた義体構成になっているからだ。
(逆に、正面突破や強襲を主とするチームの連中の中には、モ◯ルスーツにしか見えない義体の奴とかも居たが)
まあ、それでも体格的にあり得ないほど重い事は重いんだけどな。
ちなみに残り三割の生体部分とは、当然脳幹や内臓器官の一部、あとは生殖器官(”黄金の宝玉”の方な)などである。だから、そのうちセイリアとかとゴニョゴニョ……、な~~んて事になっても一応子供は出来るはずだ。……たぶん。
まあ、元々エルフ族ってのは長命であるが故に子供が出来難いらしいんだが、その辺は何とかなるだろう。別に今すぐって訳じゃないし、まだまだ先の話だろうしな?
すまん、話が逸れたな。ってな訳で、いくら気を失っていたとしても担ぎ上げられて運ばれたのは不味かったな……、まあいい、あんまり気にはしてないみたいだし、何か上手いこと言ってごまかそう…(汗)
「ところで、北側の事はともかく、南側の方は大丈夫だったのか?被害状況はどれくらいだったんだ? 」
話を逸らすべく、爺さんに別の話題を振ってみる。
「うむ、問題無しじゃな。若いサムライ共の中に、油断や緊張から多少の怪我をした者も出たが、まあ、それも良い経験じゃな。既に治療魔法での処置も終わって元気にしておるよ。それどころか、初戦の興奮冷めやらずで煩いくらいじゃわ 」
そう言われて耳を澄ませてみれば、屋敷の外、遠くに、近くで、歓声や勝鬨の声が聞こえてくる。
「まったく、お前の戦った北側「黒門」の方でならともかく、たかがあれしきの魔獣の群れを殲滅した程度で浮かれおって…。若僧ばかりではない、いい歳こいた爺い共まで一緒になって大騒ぎとは情け無い! 」
とか言いながら、爺さんアンタも随分機嫌が良さそうだな?悪態ついちゃいるが、さっきから口元はニヤニヤしたまんまだぞ。
「まあ、いいじゃないか、万を超える敵を防いで里を守り切ったんだ。多少は大目に見てやれよ 」
「分かっておる。さて……、これ、セイリア。いい加減泣き止まんか!武家の娘がグスグスといつまでも。一応、親の前じゃぞ、はしたない、シャンとせんか! 」
「は、はい!…グスッ 」
爺さんの叱責に、やっとセイリアは泣き止んで、目と鼻だけでなく顔や耳まで真っ赤にしながら体を起こし、俺から離れた。
実はさっきから、爺さんと一緒に部屋に入ってきたランドさんが、複雑そ~~な顔をしながらセイリアの方を見ていたのだが、セイリアが居住まいを正した事でその視線をセイリアから外し、今度はランドさん自身が表情と居住まいを正して畳に両手をつくと、綺麗な所作で俺に向かって頭を下げた。
「ヒロト殿、此度の事、秀真の民全員に代わり、またこの秀真を治める者として心より御礼申し上げる。ヒロト殿が居らねば、武士団だけでなく里人達にも多大な害が及んだであろう。誠に忝のう御座った 」
立派な人だな…。セイリアの事で色々思う事があるだろうに、きちんと俺なんかにでも頭を下げている。「辺境伯」なんていう立場で頭を下げるなんて、なかなか出来ることじゃないと思う。
「えーと…、頭を上げて下さい。正直に言えば、始めは成り行きだったかもしれません。ですが、この里にお邪魔して色々な人と縁を結び、”大切にしたいと思う人”まで出来ました。今では秀真の國は、俺にとっても大事な場所です。なら、守って当然、当たり前の事をしただけです。皆んなが無事で笑っていられるなら、それだけでいい。だから顔を上げて下さい 」
ちょっと格好をつけ過ぎかな?とも思うが、実際、正直な気持ちだ。
もう帰る場所の無い俺にとっては、勝手ながら”第二の故郷”的な気がしてきている。「心の拠り所」みたいなモノを知らず求めているのかもしれないな。
顔を上げたランドさんは、なぜか苦笑していたが、その目は優しげな光を湛え、少し雰囲気までが柔らかくなったような気がした。
「それでヒロトよ、念の為聞くが、本当に身体の方は大丈夫なんじゃな? 」
なぜか念を押すように尋ねてくる爺さんに、全く問題無しだと伝えると、ウキウキとした様子で立ち上がり、側に控えていたレイナルドさん達に楽しそうに命令を伝えた。
「良し、良し!秀真の國全ての民に伝えよ。急いで準備せよ!とな。今宵は『大祝勝会』じゃーーーーーーーーーーーーーー!! 」
その後の事は色々あり過ぎて語り切れないので、簡単に述べる事に留める。
まあ、ヘタをすれば秀真の國そのものが無くなってしまったかもしれない出来事だったからな~~、先日の大宴会など比べものにならない程の盛り上がり様だった。
南と北から攻めて来た魔獣達だったが、北側、俺達の方からはアイの活躍もあり一匹の魔獣も通さなかったんだが、南側「朱門」の方は流石に空を飛ぶ魔獣の幾らかは里への進入を許してしまったらしい。
しかし、【精霊樹】が街を護るように覆い被さってくれたお陰で、街の中までは入って来れなかったそうだ。それどころか、流石【黒き武神】の守護する里、サムライ達以外にも森で狩りをしている者など、腕に覚えのある者達は大きく枝を伸ばした【精霊樹】へと登り、葉と葉の間から弓矢や魔法で攻撃したりして里の防衛に当たったらしい。
また、【精霊樹】は単に街に覆い隠しただけでなく、枝を槍のように伸ばしたり、葉っぱを刃の如く鋭くして飛ばしたりもして守ってくれたそうだ。
ーー【精霊樹】すげえっ!?ーー
その後は大した被害も無く、僅かに残った魔獣の残敵を掃討するなどして無事戦闘は終了し、後始末および大素材解体大会となった訳だが、なにしろ魔獣達の死骸の数が数なので、流石にその全てを解体する訳にはいかず、特に貴重な素材や美味とされる魔獣から解体していったらしい。
なので、『大祝勝会』に使用されている食材は全て魔獣から獲れたものばかり。おかわりなど山のようにあるわけで、死と隣り合わせだった反動か、皆物凄い食欲だった。まあ、単純に美味い肉(植物系の魔獣から採れた食材や果実なんかも美味かった)だったのもあるだろうけど。
酒も里中の酒を飲み干しちまうんじゃないか?と言うほどの勢いで飲んでいて、あっちこっちで笑いや泣き声、喧嘩に裸踊りまでし始める奴らまで出てくる始末……。全員が全員、死を覚悟した先に得た”生”を喜び、大勝利に浮かれ、予想以上の大戦果に大騒ぎだった。
しかも、今回は自分達の崇める守護聖獣〈クーガ〉様までが参戦し、伝説の巨獣【黒殻龍蟲】まで退けたとあって、盛り上がり具合は天井知らず、参加した里人全員が酔い潰れ、疲れ果てて眠りに就くまで『大祝勝会』は延々と続いたのだった……。
『マスター、マスター!次はアレ、あのお肉が食べたいです!! その次はあの赤い実の果物が……!? 』
ーーうんうん、アイの食いしん坊キャラも復活だね……。しかし、このままだと、アイの要求に応える為に”消化”を助ける魔法とかいるかもしれない!? ……あるのか?(汗)ーー
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そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
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迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
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