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報告書 1
日報 4
しおりを挟む冒険者ギルドにて、見習い神官システィーナの窮地を救った我等がヒーロー、天草 救人。
悪漢共を薙ぎ倒し成敗した彼は今………………牢屋の中に居た。
「え…?何でぇぇぇぇぇぇぇぇっ!? 」
ーー暫し時間は遡る……!
「警備隊だ!全員神妙にしやがれ!! 」
ダカダカダカダカッ!! っと、揃いの革鎧に身を包んだ10人程の男女の一団が、冒険者ギルド内に踏み込んで来た。
(ふうっ、漸く警察の登場か…、やれやれ、もう少し早く来てくれれば良かったのになぁ…。まあいいや、せっかくだから、コイツ等を引き取ってもらおう…… )
そんなことを考える救人だったが、勢いで喧嘩は買ったものの、打ちのめした後の事までは考えていなかった。
警備隊が来た事をこれ幸いに、後の面倒を押し付ける気満々である。
だが、彼等は倒れている男達だけで無く、救人までも包囲する様に取り囲むと、その手に携えた”乳切木(胸の高さでカットした杖棍)”の先端を救人に向け、一斉に構えを取る。
やがて、男達の間が割れ、先程鋭い声を上げた鮮やかな赤い髪の毛をした女性の警備隊員が進み出て来た。
(うわっ!? カッコいい女の人だなぁ~、システィーナさんとは真逆の美人さんだな )
「チッ!やっぱりドンゴの野郎かい、いつもいつも面倒ばかり起こしやがって!……でもまあ…、クックックッ!ザマァ無いね、無様に伸されちまっていい気味じゃないか! おい、全員引っ立てな!」
ーー『『『『『 はっ!! 』』』』』ーー
完全に白眼を剥いて気絶しているドンゴとその仲間達を見て、可笑しそうに喉を鳴らして一頻り笑った後、部下?らしき男女達に捕縛を命じる。
テキパキとした動きで気絶した男達を担ぎ、引き摺り、サッサと連行して行く。そして……。
ーー ガチャンッ!ーー
「……は? …えっ! ちょっとっ!? 」
何故かその様子を見ていた救人の手首にも嵌められる手錠。あまりにも自然な動きだった為か、手錠が自分の手首に嵌り、ガチャリ と鍵が締められるまで ポカンと見入ってしまった。
ハッっと我に返り、慌てる救人。
システィーナやライラを始めとしたギルド内に居た周りの人間も、救人の慌てる声にやっと現状を把握し再起動を始める。
そして、真っ先に動いたのはシスティーナだった。
「ま、待って下さいミーナさん! キュウトさんは、その人は違います!」
救人の手錠に繋がれたロープを引っ張る婦警に、慌てて取り縋るシスティーナ。
「シス、”違うかどうか?”はアタシが決める。見たところ、このお嬢ちゃんが騒ぎの中心だろう? どっちにしろ話は聞かないとねぇ?『重要参考人』ってヤツさ 」
「だからって、手錠はあんまりです!キュウトさんは私を助けてくれたんですよ!? 」
両手を広げ、ミーナと呼んだ婦警の前に立ちはだかるシスティーナ。
ミーナは、やれやれ、といった表情はするものの、そこに剣呑な雰囲気は無い。先程「シス」と愛称で呼ばわった事から、元々顔見知り…いや、それなりに親しい間柄のようだ。
「仕方ないねぇ…、おいお嬢ちゃん、じゃあアンタの”身分証”を出しな?」
如何にも面倒臭さそうに、手を差し出すミーナ。掌を上に向け、ホレホレと手首の動きだけで催促をしてくる。
「身分証……、うぅ…、ありません……!」
「は?」
「まだ持ってないんですよ。今から冒険者カードを作るところだったんです 」
むむむ、と唸りながら、身分証を持っていない事を正直に話す救人。その様子を見たシスティーナが、慌てて横から助け舟を出す。
「キュウトさんは、森の中で怪我をして行き倒れていたんです。この街に来たばかりなんですから、持っていなくても仕方ないじゃないですか!」
「森の中で行き倒れ…? そうかい、アンタが”ザンダが拾ったって奴”かい。……じゃあ、仕方ないね 」
その言葉に、一瞬救人とシスティーナの表情が輝くが、ミーナはそのままロープを引っ張って歩き出した。
「分かった、じゃあキリキリ歩きな。行くよ 」
「ちょ、ちょっと! ミーナさん、納得してくれたんじゃないんですか!? 」
「ああ、納得したさ。だから連れて行く 」
「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!そんなぁぁぁぁぁぁっ!? 」」
ーーそして現在。
「だーかーらー! 俺は正当防衛なんですってば!」
牢屋の鉄格子にしがみ付きながら、救人は必死に無罪を主張していた。
「何だい?その”セートーボウエイ”ってのは? とにかくダメだ。諦めな 」
牢屋の前に置かれたテーブルセットに腰掛けながら、救人の言い分をにべもなく却下するミーナ。
「仕方ないだろ? あのドンゴってヤツ等は確かにロクでなしだが、あんなんでも実力者には違い無かったんだ。身元不明で正体不明のクセに、そんなヤツ等をあっさり瞬殺するような妙に腕の立つヤツを、野放しになんて出来ないんだよ 」
「だから、これからギルドカードを作るところだったんですって!」
「運が無かったと諦めな 」
どれほど言い募ろうと何処吹く風、全く取り付く島もない。
「……分かりましたよ!じゃあ俺はいつ迄ここに入ってればいいんですか?」
半分自棄っぱちになってその場に座り込み、今後のことを質問してみる。
「そうだね……、身元の”保証人”にはシスがなってくれるらしいから、確かに行き倒れだったとザンダ達から証言が取れるまでかね?」
「ザンダさん達は、いつ来るんですか? 」
「今日から護衛依頼で隣りの都市まで行ったらしいから、4日くらいかね?」
「4日……っ!? 」
ミーナの無慈悲な宣告に、うわぁ…という顔になる救人。だが、身分証が無い以上、ミーナの言い分は一応筋が通っている為、反論もし辛い状況だ。
「逆に、腕は立ってもアンタが女の子だって事で、他の男共から隔離して”個室”にしてやったんだ。感謝してほしいくらいだよ、お嬢ちゃん? 」
「女の……子…っ!? 」
救人は俯き、プルプルと肩を震わせる。
「でもまあ、可愛い顔してアンタも中々のジャジャ馬みたいだねぇ…? でもアンタ…… 」
「……は、……こだ……!」
「は? 何言ってんだい?」
「俺はっ! 男だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 」
ここでもその可憐な容姿の為に、女の子に間違われてしまう、可哀想な救人君だった ーーー。
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