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報告書 1
日報 12
しおりを挟む「この豚野郎が! 焼豚にしてやるから覚悟しなっ!! 」
システィーナ達を守る為にバーサーク・ボアの前に立ち塞がったミーナは、微塵の躊躇も恐れも無く、手にした朱槍を構えて吼える。
ーーブゴオォォォォォォォォォォォォッ!!!! ーーー
一方、極上の御馳走を前にして、突如として邪魔をされ、更には炎に焼かれたバーサーク・ボアは怒り狂っていた。
武器は構えているものの、飛び込んで来たのは人間の雌。人間は脆い。今迄このバーサーク・ボアが出会った人間は、雄も雌も、皆んなが皆んな弱く、脆かった。
例え武器を持っていようとも、その刃は極細のワイヤーの如き毛皮の前に全く歯が立たなかったし、偶に毛皮の防御を突き抜けて来る攻撃もありはしたが、鋼の筋肉までも貫き通す事は能わず、腕のひと薙ぎで物言わぬ肉塊へと変わり、結局は自分の胃袋に収まった。
ーー で、あるのに、この人間の雌は何だ? このオレに”痛み”を感じさせて食事を邪魔したばかりか、今もエサの前に立ち塞がって、生意気にもオレを睨みつけて何かを喚き散らしている。ーー
ーー 気に入らない!気に入らない!! 気に入らないぃっ!!!!
ーーブッグォロォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!! ーーー
人間同士であっても、例え言葉が通じなくても雰囲気やニュアンスで悪口とは通じるものだ。
バーサーク・ボアは、身の内から湧き上がる苛立ちを更なる怒りに変え、気の弱い者ならそれだけで気絶してしまいそうな恐ろしい咆哮を上げるのだった ーーー 。
***********
『救人! 起きろ! いい加減に目を覚まさないか、このバカ者がっ!! 』
(……ん、ンん!? 何だ? 誰の声だ……? )
『起きんかゴラァっ!! 』
「は、はいぃ……いっ!? 」
聞き慣れない、低く、ドスの効いた声が、救人を怒鳴りつける。最初はそれなりに優しかったのかもしれないが、なかなか目を覚まさない救人に、どんどん聞き慣れない声の主の苛立ちは増していき、とうとう大声で怒鳴られて、救人は強制的に覚醒させられた。
何処の誰だか分からない相手に無理矢理起こされ、目を開けてみたものの、そこに広がっていたのは目を瞑っていた時と同じまったくの”闇”、光などまるで無い、上下左右も全く分からない一面真っ暗な空間だった。
「な、何だ、ここは……っ!? 」
『漸く起きたか、このバカ者めが……!』
「……っ! 誰だっ!? 」
背後?から聞こえた声に、慌てて振り向くと、何処かで見た様な漆黒の鎧に身を包んだイケメンの偉丈夫がそこに居た。
身長は2mを超しているだろうか? 小柄な救人がすぐ真横に並べば、おそらく胸の辺りまでしか届かないだろう。鎧と同じ漆黒の髪は腰まで届くほど長く、その付け根、額の両端からは太い二本の”角”が生え、すぐに湾曲して後方へと伸びていた。
ザンダよりも更に立派過ぎる体躯と鋭過ぎる程の目付き、荒々しい雰囲気に加えて”漆黒の鎧”と、まるで救人が以前に読んだある漫画の【狂戦士】の様な出で立ちではあるが、決して粗野とも野蛮とも感じられない。
その理由は救人を見詰める”深紅の瞳”だ。今は苛立ちに眇められ、ただでさえ鋭い目付きが更に険呑な感じになってはいるが、その深く色味の鮮やかな紅を湛えた瞳からは、高い知性と人格を感じさせる。
それだけでは無い、この初対面のはずの目の前の人物?からは、何故か救人に対して深い”肉親の情”の様な物を感じるのだ。
「えっと………………、誰?」
『戯けっ!まだ分からんのか! ……まったく、お前の様な虚けが我が血を受け継ぐ子孫とは、情け無いにも程があるわ!』
「はぁっ!? いきなり出てきて初対面の相手の事を戯けだ虚けだと、失礼な奴だなアンタ!それに此処はどこだよ!さっぱり訳が分からねえぞ!? 」
いきなりの罵声に食ってかかる救人 ーー だが?
今、黒鎧の男は確かに救人の事を「子孫」と呼んだ。言われてみればこの二人、片やイケメンながら厳しい巨漢、片や一見では美少女にしか見えない様な小柄な美少年であるにも関わらず、何処か面差しや雰囲気が似通っている。
『今言ったであろうが!お前は我の『子孫』だと。それに、何が”初対面”だ!我はいつもお前を護ってやっていたであろうがっ!! 』
「子孫~~っ!? 嘘つけ!出まかせ言ってんじゃねぇよ!オマケに”いつも護ってやった”だぁ!? アンタみてえに角の生えた知り合いなんざ居無ぇ!………………ってか、待て、この気配は…………、まさか…っ!? 」
”何か”に気付いた救人は、腕を組んだ姿勢で憮然とした態度の目の前の人物を注視する。
「こ、この気配……、ま、まさかお前…、【魔装鎧】なの……か?」
【魔装鎧】が人化した ーー。まったく馬鹿げた、それこそ漫画やアニメのような妄想じみた考えだ。第一、それならこんな厳ついイケメンじゃなくて美少女とかだろう!?
と、半端自分でも混乱しながら内心で自問自答を繰り返す救人だったが、ふとそう感じてみれば、自信も確証も無いが、救人にはもう、そうとしか思えなくなっていた。
そんな事を考えながらよく見れば、目の前の人物には見覚えなどある筈が無いのだが、確かに頭部の角や鎧の形状など、そのままでは無いが特徴が【魔装鎧】に酷似していた。
『やっと気付きおったかバカ者め。そうだ、我こそが【魔装鎧】……いや、その核である”魂”、魔王【キルバイン】、そして救人、お前達一族の祖である!』
「…………………………は?……はぁ? はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!? 」
混乱の極みに達してしまい、もう、絶叫するしかない救人。
突然目の前に現れた漆黒の鎧の男”キルバイン”。その正体は、自称【魔装鎧】の魂にして【魔王】、更には救人達一族の祖先と云う、突っ込みどころ満載の男だった ーーーー 。
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