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報告書 1
日報 13
しおりを挟むーー スゥ~、はぁ~~~~っ! ーー
(よぉ~し、よしよし、いいゾォ~俺!落ち着けぇ~俺!OK、俺、大丈夫、俺正常、間違い無い。大丈夫、行ける、行ける!)
……いや、絶対大丈夫じゃ無いだろう…。
突然、救人の前に現れた『キルバイン』と名乗る漆黒の鎧姿の人物。額から角を生やしている所を見れば、どうやら人間では無い様だが、自称【魔装鎧】で【魔王】で【御先祖様】という衝撃的過ぎる告白に、救人の頭は大混乱していた。
何とか深呼吸でもして、落ち着いて冷静になろうとはしてみたものの……、どうやらあまり効果は無さそうだ。
「分かった。百歩譲って、お前が【魔装鎧】の意識的なモノだ、くらいは認めてもいいだろう。だが、うちは代々『正義の味方』の家系だぞ?【魔王】が御先祖様って、どう考えてもおかしいだろうが!? 」
「なぜそんな上から目線で譲ってもらわねばならぬのかは解せぬが…。うむ、そう思うのも無理はない。話せば長くなるのだが…… 」
そう言って、遥か過ぎ去った日を懐かしむような、哀しむような遠い目をする『キルバイン』。
「色々あって、お互いを認め合い恋に落ちたのだ!」
「短かっ!? 長くないよ!もっと何かあるだろ、その"色々~"とか大事な部分がさっぱりだよ!」
話しを簡潔にまとめることは大事だが、簡潔すぎて逆に何も入ってこない。『キルバイン』、回りくどいことは嫌いな男のようである。
「よいのか?長いぞ?ほんっと~~~~に長いぞ?」
「あ、…適当に掻い摘んで、大事なトコだけお願いします…!」
「分かれば良い!」
説明しろと言いながら、本当に長いと聞かされてあっさり折れる救人。御先祖が御先祖(仮定)なら、子孫も子孫らしい。
「まずは、我は『キルバイン』、かつてこの世界に君臨した【魔王】である!そして、我が妻は我を打倒するべく地球より召喚されし【勇者】、天草響子である!」
ーーー ばばぁーーーーん!! ーーー
と、バサァッ!とマントを翻し、そんな効果音が響きそうな開いた右手を前に突き出したポーズを取るキルバイン。どちらかと言えば、『殲滅せよ!』なんて言葉の方がよほど似合いそうだ。
「はっ!? 【勇者】? それが【魔王】と夫婦で俺の御先祖っ?ますます訳が……っ!」
「我等は三日三晩の間、互いに一歩も引かずに全力で戦った。ともに凄まじき魔力と魔力の鬩ぎ合う、実に…、実に良い戦いであった!」
救人の疑問の叫びをぶった斬り、実に良い笑顔で滔々と昔語りを続けるキルバイン。あ…、これアカンやつや……!と思った時にはもう遅い。キルバインは完全に回想モードに入ってしまっていた。
「だが、我等の戦いを穢す愚か者がいたのだ。それは多分我の側近である魔族の大貴族のうちの誰か。そして人間側の権力者の誰か……?おそらくは次の実権を目論み、また【勇者】の政治的発言力が強くなることでも危惧したのであろう。其奴等は共謀し、我と響子の共倒れを謀ったのだと思われる。不自然に一対一の状況が出来上がっておったからの。だが、三日三晩連続の戦いでも、我等の決着は着かなかった。しかし、互いに死力を出し尽くして戦った我と響子は、戦いを通じて共感を得、誰よりも深く理解し合ったのだ……!」
感慨深く語るキルバイン。昔のヤンキー漫画のタイマンの喧嘩の後で、『お前やるじゃねぇか』『へへ、お前もな!』という感じだろうか?まあ、あながち外れではないだろう。
「しかし、その心地良い時間も長くは続かなかった。我と響子が対峙したのは我が王城の玉座の間、だが、卑劣にも、そこには第二の罠が仕掛けられていたのだ。それは【転送の魔方陣】、万全の状態であれば不覚は取らなかったであろうが、魔力を使い果たした我等は抗うこと敵わず、玉座の間を覆い尽くすほど巨大な魔方陣によって、我と響子はニリアカーナイより弾き出されてしまったのだ…… 」
握り締めた拳を震わせて、悔しさに端正な顔を歪ませるが……、話が長い…。
「だが!運命の女神は我等にこそ味方した。我等は世界の外に弾き出されるのではなく、響子の故郷、地球へと転移したのである!」
魔王が女神を語んなや…。あと話しが長い……。
「残念ながら、響子の元いた時代ではなく、遥か過去の時代に飛ばされてしまった我等は、共に力を合わせて生きることを決意したのだが、そんな中でやがて我々は互いに惹かれ合い、結ばれた。それが天草家の始まりである!」
漸く話しが核心に近づいて来た…。適当に掻い摘んでと頼んだのに、興が乗ったのか、魔王様はますます話が止まらない……。
「しかし、しかぁーーし!どうやら我等が通り抜けた事によって次元の綻びが出来やすくなってしまったらしく、異界より魔獣、妖魔などの怪異が頻繁に現れるようになってしまったのだ!そこで我等は【勇者】と【魔王】の力を使い、人に仇なす者達から人々を守る為に『正義の味方』となったのであぁる!!」
「ちょっと待て!今までの話が本当で、本当にアンタが御先祖様だって言うなら、原因作ったのアンタ等じゃん!じゃあ、俺等は『正義の味方』っつーより、みんなに迷惑までかけて、自分達で後始末してるだけじゃん!? 」
「うむ!そうとも言う!」
「OIZ…!何てこったい……っ!? 」
驚愕の事実判明に、がっくりと膝をつく救人。正義の味方のはずの自分家が、なんとそもそもの"諸悪の根源"だった!? まるで「名探偵こそが真犯人でした~♪」的な、酷い話だ。
ショックを受けて項垂れる救人だが、そんなことは意にも介さず魔王様の話はまだまだ続く。
「もうよいか?まったく話の腰を折りよって……。 互いに助け合い、共に戦い続けた我々だったが、時の流れは無情なもの…。我と響子にも、とうとう別れの時が訪れた。【勇者】となり只人の何倍もの人生を生きた響子であったが、魔族である我と人間である響子では"寿命"が遥かに違いすぎたのだ。我等の間には何人もの子がおり、次々と巣立って各々が『正義』を執行しておったが、我はもはや響子のいない生になど興味は無かった。だから、響子とともに"逝く"ことを決めた。だが…、たったひとつの気がかりは怪異と戦う我が子等のことであった 」
長い…、話しが長いよ魔王様……!
「そこで我は、黄泉へと旅立つ代わりに、この【魔装鎧】に我の【魔王】としての力と我自身を同化、封じ込め、後の世まで我が子等を護ることにしたのであるっ!! 」
漸く話しに終わりが見えた。確かにその人生(魔王生?)は波乱万丈、映画にでもすれば一大スペクタクル作品でありそうだ。掻い摘んで話せという方が無理なのかもしれないが……、それでもやっぱり長いものは長い。
これで最初から最後まできちんと話されていたら、いったいどれだけの長い話になっていたことか!?
二重の意味で ホッとする救人だったが、何となく気になってしまった事がひとつ。
「なあ、アンタの名前は『キルバイン』だろ? じゃあ、何で【魔装鎧】の名前は『キルマオー』なんだ?」
「そんなモノは決まっている!我が【魔王】だからである!」
「は? ちょっと待て…?鎧…、【魔王】…。魔王を着る? "着る魔王"………『キルマオー』…っ!?」
「その通りであぁぁぁるっ!! 」
どうよ?ナイスなセンスだろぉ?と言わんばかりの超ドヤ顔のキルバイン。
「ダジャレかよっっ!!!? アホかぁーーーーーーーーーーーーっ!! 」
絶対無敵、正義のヒーロー『キルマオー』の名前の由来は、非常に下らないモノだった……っ!?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
いつもありがとうございます!
超不定期でお待たせしまくって申し訳ありません。遂に明かされた【キルマオー】の驚愕の事実(笑)!?
……読めてました?
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