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報告書 1
日報 14
しおりを挟む「何てこったい……っ!? 」
暗闇の中現れた、御先祖を名乗る【魔王】が語った"真実"は、想像を絶するモノだった!
そのあまりの衝撃に、両手と膝をつき、がっくりと肩を落として項垂れる救人。
だが、みんなが君の助けを待っている!立ち上がれ草薙救人!頑張れ、僕等のキルマオーーーー!!
ーーーー 「って、頑張れねぇよっ!何その名前、ダジャレじゃん!?『着る魔王』?恥ずかし過ぎるっ!? 」
悪の秘密結社【イーヴィル】の魔人・怪人の前で、何度も何度も、カッコいい決めポーズとともに大見得を切っていたあの名前が、まさかダジャレだったとは!?
恥ずかしいやら、何だか今まで倒してきた怪人達に申し訳ないやらで、とうとう頭を抱えて「あ~う~~」と羞恥に身悶えまで始めた救人。当然その顔は真っ赤である。
「失礼なことを言うでない!我はその名前を考えるのに、三日三晩完徹したのだぞっ!! 」
「三日も徹夜してそれかよっ!魔王センス最悪だなっ!? 」
とは言え、誰しも子供の頃に、自分の名前の由来や意味を両親に尋ねたことはあるだろう。
そういう救人自身も【キルマオー】の名前について、子供の頃、某国民的勇者が魔王を倒すRPGシリーズにハマった時に ーー「悪を倒すんだから『"KILL"魔王』?いやいや、昔から伝わってるんだから英語は無いよな、じゃあ『"斬る"魔王』かな?」などと考えていたのだから、キルバインのネーミングセンスについて、あまり文句は言えない。
いや、これはもう遺伝なのだろうか?
「ぐぬぬぬ……っ!お前には御先祖をもっと敬うという心は無いのかっ!? 」
「んじゃもっと敬われるような行動をとりやがれっ!」
"同病愛憐れむ"…いや、この場合は"近親憎悪"と言うべきか?どーでもいい事で延々と口喧嘩を続ける曾曾~~お爺ちゃんと曾曾~~孫……。
もはやグダグダ、関係ない事でまで言い合っている始末だ。
「ゼェ…、ゼェ…、と、ところで救人よ…… 」
「ゼェ…、ゼェ…、何…、だよ…… 」
「忘れておるようだが、…ゼェ、システィーナとかいう娘のことは……、いいのか?」
「いいわけあるかぁっ!早く言えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!! 」
衝撃的な自身の一族の成り立ちと、あんまりと言えばあんまりな残念ネーミングにショックを受けていた所為で、すっかりスッポリとシスティーナのことを忘れていた救人。
「アンタがとんでもないことを言い出した所為で、すっかりシスティーナさんのことを忘れちまってたじゃねーかっ!」
と、しっかり自分のことは棚に上げ、忘れていた理由をキルバインに擦りつけるあたり、やっぱり救人もイイ性格をしている。
「そうだよ!オークを退治に出てたらデッカいモンスターが現れて…、うっかり吹き飛ばされちまったんだ!システィーナさんは無事なのか?早く戻らないと……、ってーか、ここは何処なんだよ!? 」
「落ち着けいっ!あの娘は今のところまだ無事である!…と言うか、お前が不様にも弾き飛ばされてから、まだ5秒と経っておらんわっ!」
システィーナのことや直前までの危機的状況を思い出し、慌てふためく救人を一喝するキルバイン。
「落ち着いてなんていられる訳ないだろ!? ここは何処だよ!? 早く戻してくれよ、こうしてる間にもシスティーナさんがっ!? 」
「あ~~、まったく、我が子孫ながらオタオタと情け無いヤツであるな!いいか、ここは【魔装鎧】の中に広がる我の"精神世界"、我がお前と話しをするべく、お前の意識だけを呼び込んだに過ぎん。実際のお前は崩れた瓦礫の中でみっともなくも気絶したままである!」
「みっともなくは余計だろ…… 」
「先程も言ったが、精神世界たるここでは現実世界とは時間の流れが異なるのだ。故に、まだ心配せずとも大丈夫である!…それよりも、何か我に聞きたいことは無いのか? ーー『何故変身出来ないのか?』ーー とかな 」
途端にハッ!とした顔になる救人。確かにこの世界に来てから約一週間、何度も変身を試みたものの、漆黒の鎧がその身を覆ったのは左手の籠手部分のみ、フルで変身することは出来なかった。
「そう!そうだよ!何で変身出来なくなってるんだよ!? 」
慌ててキルバインに詰め寄る救人。そんな救人を窘めるようにキルバインは口を開いた。
「だから落ち着けと言っておる!その話をする為にお前を呼んだのだ。……あの【ワイズマン】なる者が自爆した時、相当の衝撃が我が身とお前を襲ったのだ。我には遠く及ばぬ小物と言えど一応は魔を統べていた者、その生命を対価にした最期の攻撃はなかなかの威力であった。あの時、彼奴が絶命の瞬間に放った絶叫は、怨嗟の呪詛となってお前を襲い、その負荷に耐え切れずお前は意識を失ったのだ 」
「そ、そうだったのか…… 」
「うむ。そして我は意識を失ったお前に魔力で防御結界を展開してその身を守っていたのだが、世界と世界の間に存在する次元障壁を何枚も突破する際に、どんどん魔力を消耗してしまったのだ。だが、偶然か、もしくは以前に通り抜けた事で"道が出来ていた"のか、何とか再びこちらの世界へと辿り着いたのだが……。すまないな、そこでとうとう我の力も尽きてしまい、最後までお前を守り切ることが出来なかった。お前の負っていた怪我はその時のものだ。我自身も深く消耗してしまったため、"もしも"の時のために左手の籠手だけは出せるように設定だけして、回復の為に休眠するしかなかった。許せ 」
そう言って、救人に向かい深く頭を下げるキルバイン。だが、今の話を聞けば、謝られるどころか、頭を下げなければいけないのはむしろ救人の方だ。
「い、いや、頭を上げてくれよ!気を失った俺を守ってくれたんだろ?礼を言うのは俺の方じゃないかっ!」
「いや、【魔王】だなどと偉そうに名乗っていたクセに、我と響子に連なる血を持つ大事なお前を守り切れなかったのだ。我は自分が情けない…っ!」
少々性格に難があるのは確かだが、この元【魔王】の家族を愛する気持ちは本物だ。なにしろ我が子、我が孫を守るために、自らの身体と魂を【魔装鎧】に融合させてしまったほどの男なのだ。その想いには疑う余地もない。
「ちょ…!まっ!? そ、それより『深く消耗した』って言ってたけど、アンタ自身は大丈夫なのかよ?」
キルバインの想いの深さに、照れ臭いやら何やらで何と返していいか分からずに、無理やり話題を変えようとする救人。
その言葉に、ニカッと嬉しそうに笑ってキルバインは言葉を返す。
「おお!我の心配をしてくれるのか!うむ、こちらは元々我の生まれ育った世界、魔力の質も地球より身体に馴染むのでな、随分と回復出来た。もう大丈夫である!だが、前のように完全変身するにはある条件がある。それ故に、その事も伝えるべくお前をこの"精神世界"に招き入れたのだ!」
また変身出来ると聞き、ホッと胸を撫で下ろす救人。何しろここ一週間は、【魔装鎧】と一切の意思疎通が出来なかったのだ。
人々を護る無敵の力 ーーーー、その力を今一度手にする為に、救人はある条件とやらをキルバインから聞くべく耳を傾けるのだった……。
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お待たせしました。超不定期で本当にすいません。
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