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第二章 隠された真実の愛
24 ハリソン・ワーレム2◆ユミル視点
しおりを挟む「レミリアは三姉妹の次女として生まれた。自分で言うのもなんだが長女のマーガレットは優秀な子でね、何をしても周りより抜きん出た成績を納めて、我々大人を驚かせた。三女のジェシカは奔放で自由気まま、しかし不思議と周りを納得させる力があった」
自分に言い聞かせるようにつらつらと語って聞かせた辺境伯は、そこで言葉を切りました。記憶を辿るように目を閉じて、短い沈黙が部屋を支配します。
「レミリアは、空気を読むのが上手い子供だった」
「………?」
「私たちがマーガレットの秀でた才能に感嘆し、ジェシカの破天荒な行動に振り回される中、レミリアだけはいつも“普通”であり続けた」
「普通?」
「目立ったことはしない、だが同時に大人たちの期待も裏切らない。いわゆる模範的な子供だよ」
私は少しの間自分の頭で考えるため、閉口しました。よく分からなかったのです。
未婚の私にとって、子供というのは厄介な生き物で、制御不能な破茶滅茶な生き物というイメージでした。それが、ワーレム辺境伯の言葉を信じると、奥様は意図的に大人たちの期待する姿を演じていたということになります。
「そんなことが出来るのでしょうか……?」
「どうだろうね。だが、レミリアは実際にそうしていた。あの子に手を焼いたことは一度もないんだ。こんな言い方をして良いか分からないが、子供らしくない子供だった」
「………」
なんと返して良いか分からず、私は沈黙を守ります。
ワーレム辺境伯は一言断りを入れた上で、内ポケットから葉巻を取り出して吸い始めました。白い煙がぷかぷかと浮かんで、部屋の中を暫し漂います。
「レミリアが姉と妹、更には周りの大人たちにも気を遣っていることに私たちは気付いていた。だが、何も言わなかったんだ。手が掛かるよりはずっと良いと、そんな風に思って納得した」
「奥様………」
「可哀想なことをしたと今なら分かる。あれは甘え方を知らない。人を頼ることも。自分が堪えてそれで丸く収まるならと、我慢をする子供だった」
「しかし、それでは……!」
痺れを切らして私が自分の意見を吐き出しそうになったとき、辺境伯は葉巻から口を離して「だから驚いたんだ」と言いました。
「離縁すると手紙で知ったとき、私はすぐに戻ってくるように返事をした。見知らぬ場所で一人で暮らすなんて気の毒だと思ったからだ。だが、レミリアは自分が望んだことなのだと私の誘いを突っぱねた」
「………奥様はシンプソン邸を愛していました」
「ああ、そのようだな。しかし、どうやらそれだけではないのかもしれない」
「え?」
「何か、譲れない思いがあるようだ」
言わんとしていることが分からない私はただ眉間に皺を寄せて悩みます。ワーレム辺境伯は奥様の本心を見抜いているのでしょうか。共に暮らす私たちですら辿り着けない、その心の深いところを。
もう少し説明を乞うべきか迷っていると、辺境伯は机の上に載ったメモ用紙を一枚取って何やらスラスラと文字を書き記しました。それはどうやら誰かの名前と住所のようです。
「我が家で働いていた乳母の名だ。レミリアは彼女に懐いていてね、屋敷を去った後も親交があると聞いている。というのも、乳母の方から聞いたことだが」
どちらが本当の親だか分からんな、と溢してワーレム辺境伯は白い紙を私に手渡しました。私は受け取ったそれを大切に仕舞い込んで、頭を下げてお屋敷を後にしました。
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