【完結】溺愛してくれた王子が記憶喪失になったようです

おのまとぺ

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第二章 シルヴィアの店編

30.王子は項垂れる【N side】

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「は?見つけたけど会えなかった?」

大きな声で聞き返すウィリアムを制止しつつ、割れそうな頭を押さえた。何時間でも待ってやると思っていたが、さすがに三時間が経過した頃には雷まで鳴り出したので、渋々その場を去った。

挙げ句の果てには風邪を引いたので、こうして毛布にくるまった状態で彼と会話しているわけで。

「濡れねずみならぬ濡れ犬だな」
「なんだよ犬って」
「何時間も待ってたんだろう?雨の中を」

それぐらい真面目に仕事もしろよ、と余計なことを言うので睨み返す。

オリオン国王が最近になって自分に与えた王族としての仕事は、反王党派が多い地域で主導している人物を炙り出して和解に持って行くという面倒くさいものだったが、興味がない上にあまりに面倒で書類に目を通してさえいなかった。

第一、自分たちを嫌っている者とどうやって親交を結べというのだろう。平和主義なオリオンを歓迎する国民は多いが、正直なところ反王党派なんて危険因子は早めに淘汰しておいた方が将来のためなのではないかと思えた。


「……そういえば、エレンが居たよ」
「エレンって…エレン・ロベスピエールか?」
「ああ。見知った顔がリゼッタを背負っていて驚いた」
「え、リゼッタと知り合いなのか?」

質問を繰り返すという彼らしくない行動を取るあたり、ウィリアム自身も相当意外だったのだろう。

そりゃあそうだ。エレン・ロベスピエールと言えば俺が学生時代からつるんでいた悪友。優等生なウィリアムとは異なり、何にでも首を突っ込む自分に唯一付き合ってくれたのがエレンだった。娼館で遊び回っていた頃もエレンだけは愛想を尽かさずに側に居てくれたものだ。

そんな彼と連絡が取れなくなって早五年は経つ。
まさか、こんなに近くに、更には不思議な縁でリゼッタを探している最中に出会うだなんて。偶然にしては出来過ぎた話に少し違和感を覚えた。

「エレンは卒業後入隊したんだったな?」
「らしいね。俺もそのあたりは詳しくない」
「なんでお前たちは仲違いしたんだ?」
「……どうしてかな、」

べつに何もキッカケなどなかったと思う。気付けばいつの間にか距離が生まれていて、自然と離れていった。ただそれだけのことで、そこに大それた理由などないような気がした。

彼と遊んでいた時代の若かりし自分は、それはもう目も当てられないほどの自由人で、思い出すことも今となっては恥ずかしい。大人しいリゼッタに知られれば、ドン引きされてしまう可能性すらあった。

「俺もお前のように大事に取っておけば良かったかな?」
「何の話だよ」
「いやぁ、身の清さについて反省を少々」
「馬鹿言え。お前が童貞でシグノーと経験のあるリゼッタと出会ってみろ、嫉妬で狂って皆殺しだ」

それで言うならべつに嫉妬で狂わなくても結果的にそうなっているのだが、賢いウィリアムがそこまで意図してくさしているのか分からないので曖昧に頷いた。

痛む頭の奥底で、エレンの発言を思い出す。
週末のデートをリゼッタも楽しみにしているのだろうか?






◆お知らせ

ストックの関係で一日三回更新に変更します。
7:20、12:20、21:20になります。

ノアへの厳しいお声を多々いただいておりますが、彼にもきちんと反省させようとは考えています。
栞が三桁も動くことあまりないので、ビビり倒しているんですが、このままご都合主義で走り続けたいと思います…





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