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第13章〜帝国編〜
偽りと嘘
しおりを挟む咆哮するアルトは、ルインに目掛けて飛びかかる。
それを防ぐのはコクヨウで。
ぎらつく目でルインを睨むアルトの事を引き倒し、あっと言う間に拘束してしまう。
「・・アルト、何故、」
「っっ、何故?アリア様を殺したお前が、それを言うのか!?」
吐き捨てるアルト。
そんなアルトの奇行に、唖然となる仲間達。
彼らは知っている。
アルトがルインの事を慕い、またルインもアルトの事を息子の様に可愛がってた事実を。
「・・まさか、本当に?」
「これが魅了の力なのか?」
どよめきが広がる。
「っっ、アルト、そこまで魅力の力に洗脳されていたのか・・。」
ルインが悲痛に顔を歪ませた。
「殺してやる!お前の事を必ず殺してやる、ルイン!」
コクヨウに取り押さえられながらも、アルトはルインへ向かおうとするのを止めない。
何度も怨嗟の声を上げた。
「アルト、寵妃様は生きてらっしゃる。」
「何・・?」
「寵妃様の事を私は捕らえてなどいない。今の話は全て嘘なのだ。」
焦点の合っていない目がルインを見上げる。
「其方が本当に寵妃に魅了され、洗脳されているか試す嘘だった。アルト、お前を謀った事、許せ。」
感情を押し殺したルインが真実を告げた。
『なぜ、その様な嘘を?』
『ルイン様、魅力されている者の心は寵妃にあります。その様な方をルイン様が殺したと言われ、ご本人が認めたら、どうなりましょう?』
『・・私を殺したいほど憎む、か。』
『はい、事実を曝け出すには魅力された者の本心を暴かねばなりません。その為、ルイン様や皆様に協力していただきたいのです。』
私が全員に約束させた事。
寵妃が亡くなった嘘をアルトに信じさせる為、私の指示があるまで何があっても、否定の言葉を発しない事だった。
「嘘・・?」
「あぁ、嘘だ。お前の大事な寵妃様は生きていらっしゃる。」
「っっ、あぁ、寵妃様!」
身体を弛緩させ、寵妃が生きている事に対して滂沱の涙を流すアルト。
これが魅了の力。
洗脳された者の、悲しい末路の姿だった。
「ーーーもう眠りなさい、哀れな子。次に起きた時は、全てが終わっているから。」
カティアが泣き伏すアルトの額に手を置き、魔法で眠らせる。
「ディアちゃん、このまま、この子はティターニア国へ連れて行くわ。良いわよね?」
「お願い、カティア。」
頷き、カティアへアルト達の事を託す。
眠るアルト達の事を連れ、カティアはティターニア国へと飛んだ。
消えたアルト達の後には、悲しい空気が漂った。
「これが、魅了の力です。彼等の事を魅了し、洗脳した寵妃様の事を許せますか?」
ねぇ、寵妃様?
貴方と同じ事をしてあげる。
怒りは、増悪に。
憤りは、貴方を倒す為の狼煙となるのだから。
「っっ、寵妃の事を許すな!」
「祖国に害をなす寵妃を引きずり落とせ!」
寵妃への怒りの声が上がった。
「ルイン様、ガルムンド王国と手を結びくださいませ。寵妃として、皇帝陛下を惑わす者を討伐する為に。」
「・・しかし、それだと寵妃の思惑通りになりませんか?」
「その前に、寵妃の本来の姿、魔族である事を各国へニュクスお母様の愛し子の名で通達いたします。ルイン様方は、皇帝陛下の寵妃が魔族と知り、この機会にガルムンド王国へ助けを求めた、と。」
そうすれば?
「さて、どちらに義があり、悪になのでしょうか?」
義なき宣戦布告した国。
魔族の計略から祖国を救わんと立ち上がった英雄。
「どの国も、ルイン様達を支持する事でしょう。皆、同じ敵によって、祖国を滅ぼされそうになっているのですから。」
共通の敵を得た時。
寵妃様の策は、全て瓦解する。
「全てを知った時、寵妃は祖国の民の命を狙うやも知れません。各国のお力をお借りなさいませ。」
寵妃、魔族であるマリージュアの狙いは虐殺。
ルイン達の祖国の民を狙わない訳がないのだから、他の国との戦争などしている場合ではないのだ。
「・・分かりました、愛し子様の仰せの通りに致します。」
「では、早速、各国へ手紙を送りましょう。」
空間収納の中からインクとぺんを取り出し、各国へ向けてニュクスお母様の愛し子、ディアレンシア・ソウルとして手紙を記していく。
「サーラ、ステア、アーラ、ライア、この手紙をルーベルン国、モルベルト国、ルドボレーク国、聖皇国パルドフェルドへ届けてくれる?ガルムンド王国へは、私とルイン様が直接向かうから、この4カ国へ貴方達が届けて欲しいの。」
これほど相応しい、ニュクスお母様の愛し子の使徒はいないでしょう?
4人に手紙を託す。
「イーアは、私と共に行動してくれるかしら?ガルムンド王国への入り口の守りを強化して欲しいの。」
攻撃を通す事はさせないが、安全が優先。
地の精霊王であるイーアの力で、ガルムンド王国の城門の強化をするつもりだ。
「「「「「任せて!」」」」」
サーラ、ステア、アーラ、ライアの4人はルーベルン国、モルベルト国、ルドボレーク国、聖皇国パルドフェルドへ飛び、イーアは私の側に残る。
よし、他の国の介入は気にせず、寵妃の事に専念ができる。
「では、ルイン様、私達もガルムンド王国へと向かいましょう。私がガルムンド王国の今の代表と引き合わせますので、ご安心を。」
「承知いたしました。」
念の為、この場にロッテマリーとルルーシェルの2人を残し、私達はルインを連れてガルムンド王国へと転移で一気に飛んだ。
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