リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第13章〜帝国編〜

防衛戦

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明けない夜はない。
また今日も、新しい1日が始まる。


「っっ、来ました!リュストヘルゼ帝国の本隊と思われる人影が我が国へ接近中です!」


上がる、進軍の報告。
リュストヘルゼ帝国の本隊が、ガルムンド王国の王都へ向けて、領土を超えて進軍を進めるのを防壁の上から見下ろす私達。
本隊と思われる上空には、リュストヘルゼ帝国が誇る、空からの襲撃部隊が飛行する。


「こう見ると、凄い軍勢ですね。」


リュストヘルゼ帝国の全勢力がガルムンド王国を蹂躙しようと押しかけて来る様は、味方達の心を萎縮させる効果は抜群だろう。
一様に、迫り来るリュストヘルゼ帝国の兵達に、味方の表情が強張っていく。


「ヒューイット様、兵達にお声がけを。」


促し、兵達の指揮を上げさせる。
ヒューイット様は一言、祖国を守る為に剣を取れと告げた。
引き締まる兵達の表情。


「さすがですわ、ヒューイット様。兵達の表情が見違えるようです。」


賞賛を送る。
兵達がどれほどいようとも、本番で使えなくては意味がない。
いるだけ、物資の無駄。
争いの前に、余計な出費や使えない兵達を切り捨てる事も大事な事である。


「いえ、愛し子様がこの場に居てくださって、どれほど兵達が心強い事か。貴方様と出会えた事を、ニュクス様に感謝を申し上げたい。」


憂いる表情を迫り来るリュストヘルゼ帝国へと向ける、ヒューイット。
防壁の壁を握る手に力がこもる。


「・・戦などから何も生まぬと言うのに。」
「そうですね、いつも弱い者が被害を受ける事になる。だからこそ、私達は戦わなければならないのです。」


寵妃の計画を潰さなければならない。
私も無関係な人達が不幸になる事を望んでいる訳ではないから。


「はい、愛し子様のお陰で、リュストヘルゼ帝国の兵達が攻めて来る前に全ての領民達を王都へ避難させる事が出来ました。感謝いたします。」


遠くに見えるリュストヘルゼ帝国の本隊を同じ様に見つめるヒューイットが私に感謝を告げた。


「いいえ、ニュクスお母様も無辜むこの民が苦しむ事を良しとはしないでしょう。」


ヒューイット様の願いで、リュストヘルゼ帝国側の領民達は、全て王都へ避難させ終わっている。
私の家族のお陰だ。
全員が寝ずに、リュストヘルゼ帝国側の全ての領民達を転移で避難させてくれたのだから。


「お礼の言葉は、私の家族へお願いしますわ。皆がいてこそ、領民達を避難させる事が出来たのでですから。」
「えぇ、そうします。しかし、その様に大切な家族にお願いしてくださったのも愛し子様ですので、貴方にも王として感謝をさせてください。」
「ふふ、分かりました。ヒューイット様からの感謝のお言葉を受け取ります。」


私の家族達には、何か後でご褒美をあげよう。
その方が喜ぶし。
ずっと寝ずに人々の避難を頑張ってくれたんだから、ご褒美は必要だろう。


「では、ヒューイット様、そろそろ私はリュストヘルゼ帝国の本隊へ、ニュクスお母様の愛し子として通達して参りますわ。」


ふわりと魔法で浮かび上がる。
このまま魔法で飛んでいた方が、ニュクスお母様の愛し子の印象を強めるだろうしね?
私はそのまま宙に浮いたまま、リュストヘルゼ帝国の本隊へ風魔法を応用し、自分の声を届かせていく。


「リュストヘルゼ帝国の兵の皆様、私はニュクスお母様の愛し子、ディアレンシア・ソウルです。今すぐにガルムンド王国への侵攻を中止してください。」


どよめく、リュストヘルゼ帝国の兵達。


「っっ、あのような世迷言を信じるな!これもガルムンド王国の卑劣な策略だ!」
「そうだ、祖国を裏切りガルムンド王国と内通していたルイン・カウベリン辺境伯と一緒にいるような女のたわ言に耳を傾ける事などない!」


リュストヘルゼ帝国の指揮官達が吠える。
あら、ひどい。


「黙りなさい、無礼者!この私は、ニュクスお母様に選ばれし、愛し子である事は事実!」


私の側に神気が降り立つ。
ティターニア国でルインの指揮下の兵達の魅了を治療中のカティアを除くサーラ、ステア、アーラ、イーア、ライア達だ。


「彼女は私達の創造主、ニュクス様がお認めになった愛し子で間違いなどないわ!」


サーラが。


「ディアちゃんだけでなく、精霊王たる私達の事も嘘つき呼ばわりするつもり?」


ステアが。


「愛し子である彼女の言葉は、ニュクス様の言葉でもあるのよ?」


アーラが。


「それでも嘘と思うのなら、その命をもって向かってきなさい。」


イーアが。


「貴方達の事を、私達が全力でお相手してあげるから。」


ライアが冷たく見下ろす。


「この度の戦は、ニュクスお母様もお許しになりません。どうか、心あるリュストヘルゼ帝国の兵達よ、武器を下げ我が話に耳を傾けてください。」


さぁ、ここからが勝負。


「ルイン・カウベリン辺境伯様は、リュストヘルゼ帝国を裏切っていません。むしろ脅威から祖国を救う為、ガルムンド王国の助力を希ったのです。」


寵妃の思惑が勝つか、ニュクスお母様の愛し子である私の言葉が計画を阻むか。
勝負といきましょう?


「何の為にガルムンド王国に助力を願ったのかを皆様、疑問に思う事でしょう。」


寵妃と私の、最初の戦い。
まずは、寵妃の魅了で洗脳した者達の力を削いでいくとしましょうか。


「ガルムンド王国にルイン・カウベリン辺境伯様が助力を願ったのは、祖国で暗躍する魔族の存在を知ったからなのです。」


聞いて驚け?
自国に巣食う、寵妃の正体に。


「魔族の正体、それは、リュストヘルゼ帝国の皇帝陛下、ガルドフェイン様の寵妃マリア。」


真実を告げる。


「リュストヘルゼ帝国の皇帝陛下、ガルドフェイン様の寵妃マリアが魔族だと知り、祖国を救う為に助力を乞う事が裏切りとなるのでしょうか?」


罪人は、どちら?

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