リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第4章〜暗躍編〜

閑話:暗躍する闇

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そこは、少しだけ仄暗い場所だった。
ほのかに周りが光っている為、真っ暗とは言わないが、不気味な暗さがある。
そんな不気味な場所だと言うのに片方の目に珍しいモノクルをかけた男が、無感動な表情で佇んでいた。


「ーーー・・また、実験は失敗か。」


ぼそりと男が呟く。
その声は、底冷えするほどに冷たい。


「どの素材も使えない。せっかく調達したとしても、ろくに役にも立たないのは、所詮は下等な素材だからだな。」


蔑むは目の前の蠢くだけの物体に冷ややかに向けられている。
男から冷ややかな眼差しを向けられる人間の顔を持った蠢くだけの物体の見た目は、普通のモンスターとも、化け物とも言えない異様な風貌だった。


「ぐるぅ、」
「ほう、知能を失った失敗作のくせに敵意をこちらへ向ける、か。これは面白い。」


らんらんと光る、蠢くだけの物体の瞳。
その口元はだらだらと、だらしなく涎が地面へと下垂れ落ちていく。
蠢くだけの物体にもう理性はなく、あるのは欲望だけ。


「私を食らいたいか?」


ーーー・・ただ、目の前にいる男を食らいたいと言う欲求だけだった。
獲物を欲するように、蠢くだけの物体の瞳がらんらんと光る。
今にも男へ跳びかかりそうだ。


「ぐるる、」
「くくっ、失敗作と思っていたが、お前のその貪欲さだけは褒めてやる。」


細まる男の目。


「だか、ただの失敗作は消えろ、目障りだ。」


飛びかかろうとする蠢く物体へ向って、男はパチリと指を一度だけ鳴らす。
すると、蠢く物体に群がる無数の闇。
その蠢く物体の足を、手を、身体を飲み込もうと闇が纏わりつく。


「っっ、ぐ、るぅ、」


必死に自分を拘束を解こうと物体がその場でのたうち回るが、纏わりつく闇は払えない。
ずぶずぶと、その身体を闇の中へ沈ませていく。


「ぐっ、ぐぅぉぉぉッ!」


最後に男へと怒りの絶叫を上げた蠢く物体は、その身体の全てを闇の中へと完全に沈ませてしまう。
その場に静寂だけが落ちた。


「ふん、ただの失敗作の出来損ない風情が、この私の手を煩わせるとは不愉快な。」


口元を歪ませた男は吐き捨てると、その場に背を向けて歩き出す。
向かうは、際奥。
一段と闇が濃く広がる場所。
男が向かった場所には、大量の骨がそこかしこに転がっている。


「・・また、人間を連れて来るか。」


その大量に転がる骨を、男はただ無感動に見つめて呟く。
まるで興味がないと言わんばかりに。


「ーー・・あぁ、もう少しです、我が主人。もう少しで、この世の全ての家畜を根絶やしに出来るのです。」


その準備は進んでいる。
あと少し。
もう少ししたら、全ての準備が整う。


「そうしたら、必ず貴方様の事を、この世界に取り戻して見せましょう。私の全てをかけて。」


・・そう、我が主人である貴方様を取り戻す準備が。
俺の瞳に初めて狂気の光が宿る。


「絶対に許しません、私から貴方様を奪った者達をっっ、!」


我が主人を奪った者達へ怒りの鉄槌を。
永遠の苦痛を与えるのだ。


「あの者達の血と苦痛の声を、貴方様の為に捧げましょう。貴方様の復活の生贄として!」


心が躍る。
あの方は、褒めてくださろうだろうか?


「それまで、もうしばらくお待ち下さい、我が主人。ーーー魔王様。」


仄暗い闇の中。
俺の哄笑だけが響き渡った。



名前:???
LV???
性別:男
年齢:???
種族:???
HP:???
MP:???
スキル
???、???、???、???、???、???、???、???



ひっそりと、闇が蠢く。
そん事実を、まだ誰も知らない。


「ーーー・・おや、新たな獲物が、へ入り込んだようですね。」


ゆるりと、闇は新しい獲物の元へ動き出す。
己の新たな実験の為に。


「なっ、!?」
「ひっ、!!」
「ふふ、お待ちしていましたよ、私の新しい獲物達。」


今日も、新たな獲物が狂気を宿した男に捕食されていく。
まだこの事実を知る者はいない。




◇◇◇◇



同時刻。
ルーベルン国の王都。
冒険者ギルド内。


「ーーー・・ここ最近で迷宮内で失踪人が増えている、か。」


男が1人、険しい表情を浮かべる。
険しい表情の理由は、男へと届けられた迷宮の警備兵からの報告内容を見たから。
迷宮内で冒険者の失踪が増えていると言う報告だ。


「確かに迷宮内でモンスターと戦い、命を落としたと言う理由で帰って来れない冒険者もいるだろう。だが、今回の失踪人は・・。」


余りにも人数が多い。
しかも、と言う報告もある。
このまま黙って放っておく事は出来ない案件。


「これは迷宮内を詳しく調査する必要があるかも知れないな。」


男は嘆息する。
調査結果が何事も無ければ良いと願いながら。


「しかし、この胸騒ぎは何だ?」


まるで、何か大きな闇が蠢いているかの様な良い知れる不安感。
年度も冒険者として前線で死闘を繰り返してきた頃に感じていた、危機感。


「この不安が杞憂であってくれよ?」


願わずにはいられない。
ただの、いなくなった冒険者達が迷宮内での戦死であってくれ、と。


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