今日、あなたにフラれます

橘 黒虎

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後悔しないように

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 部活に入り、先生をより身近に感じられるようになってから、さらに俺の幸福度は増していった。

 文芸部ではしっかり活動し、小説など書いたことがなかった俺も、何作か書いてみた。まだまだ下手くそだが、書いててスッキリすることもあり、活動を楽しんでいた。それに加えて、サキ先生との会話も、一緒にいる時間も増えた。毎日が楽しく、幸せだった。

 そんな幸せな時間はどんどん過ぎていき、夏休みが終わり、冬休みが終わり、早くも1年が過ぎようとしていた。年間の行事だとかで、クラスメイトとの交流も増え、翔斗は幸せな1年間を過ごすことが出来た。

 そして第1学年終業式。1年がこんなに早くすぎてしまうなんて思いもしてなかった翔斗は、かなり驚いていた。

「ショートー!」
「皆川くん!」

 カズと美桜が駆け寄ってきた。

「2人とも、どしたの?」
「いや、一年終わっちまって、来年度からクラス変わっちまうだろ?一緒のクラスになんねぇかもだからさ。最後に3人で帰んねぇかなぁって」
「まぁ、きっと部活で一緒だからきっと2年になっても一緒に帰るんだろうけどね」

 そうか、2年に上がったらクラスは変わってしまうのか。

(まて、クラスが変わるってことは、カズや美桜はもちろん、先生だって変わってしまうよな?てことはサキ先生に会える時間が減るんじゃないか?)

「お前いま、先生に会える時間が減るとか考えてるだろ?」
「………」

 カズが囁いてきた。いつもカズは考えていることを当ててしまうから驚いてしまう。

「後悔しないようにしろよ」

「さ!帰ろーぜー!」
「うん!帰ろ、帰ろー」

後悔か。後悔しないようにするにはどうすればいいんだろうな。伝えなくても後悔するし、きっと伝えても後悔する。わかんねぇよ。どうすればいいのか。

「悪い、ちょっと先帰っててくんね?」
「あ?まぁいいけど」
「ほんと、ごめん」
「じゃあまた、2年にあがってな」
「またな」

 また悩んでしまいそうだった。悩みを解決しておきたかった俺は、学校の屋上へ向かった。屋上に居ると、自然と悩みが解決できるのだ。

 階段を登り。勢いよく屋上のドアを開ける。

「あれ?皆川くんどうしたの?」

 サキ先生がいた。

「え?先生、なんでここにいるんですか?」
「それはこっちのセリフよ。皆川くんこそどうしてここに?」
「それは…」
「ふふーん。分かった!悩み事でしょ?」

 また人に、見透かされた。そんなに俺は感情が表に出てるのか。

「入学したすぐも、皆川くんここに来て悩んでたよね。今回も恋の悩み?」
「…はい。どうするのが1番いいのかわかんなくて」
「そっか、そういえば、その好きな子と進展あったの?」
「分かりません。意識してるのは多分こっちだけで」
「片思いなんだね」

 いつもは、幸せなサキ先生との会話が、今は少しだけ、痛くて苦しい。

「後悔しないようにって。カズに言われたんですけど、どうすれば後悔せずに済むのか分からなくて」
「告白…してみれば?」
「え?」

 思わぬ回答に、驚きが隠せなかった。

「先生は、やらずに諦めるより、やってみて諦める方が、ちょっとかっこいいなって思う。それに、フラれちゃう可能性が高いのかもだけど、もしかしたら、片思いじゃないかもしれないじゃん?」
「………」
「フラれちゃうことばっかり考えないで、告白が成功するかも、ってことも考えてみたらどう?」
「じゃあさ…」
「ん?」
「じゃあ、先生は…」

 先生は、俺が先生のことが好きって言ったらどうしますか。

 なんて言えないよな。

「いや、なんでもないです…」
「ん…?まぁとにかく、先生としての意見だと、告白するべきかな、って感じです」
「今回は、先生の話聞いてると余計悩んじゃうかも」
「嘘?!ごめんね?参考にならない話しちゃって」
「いえいえ、確かに迷っちゃうけど、ちょっと元気出ました!」
「なら良かった!まぁとにかく!皆川くんが後悔しないでいいように祈ってる」
「はい!ありがとうございます!」

 いつも通りの優しい先生だった。いつの間にか、いつも感じる幸せや、愛しさで心が満たされていた。

 後悔しない方法。今は全然わかんないや。でも、見つけていくしかないよね。先生への好きが溢れかけている今、どうするべきか。少しずつ。じっくり考えていこう。

 


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