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心の裂け目 1
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◇店舗地下:翡翠◇
「ニコ!!」
彼女は部屋の中央にあるソファに座らされていた。両脇にはスイを連れてきた男と同じようなダサいスーツの男が座っていて、監視されているようだ。
左右のどちらかが『J』と呼ばれていた男だろうか。
「おろ? Jさんは?」
スイの疑問はプリン頭の言葉で否定された。どうやら、部屋の中にはJはいないらしい。
地下だから当たり前なのだが、窓はない。エレベータがある壁の向かい側には飾り棚がいくつかあって、高級そうなグラスや、食器、ビンテージものと思しき酒が並んでいる。右手の壁には観音開きの豪奢な装飾を施した重そうなドア、左手側の壁は取り外しができるパーテーションのような壁になっていて、おそらくは壁自体が動いて開くような作りになっていた。
背後のエレベータがある壁には端の方に壁と似た色のドアがあって、表示はないのだが事前準備の時に見た平面図を思い出す限りでは非常口と思われる。
「スイちゃん!?」
俯いていたニコが顔をあげて、スイを確認して答えた。その顔は涙で濡れてはいるが、怪我をしている様子はない。ひとまずスイはほっとした。
「そいつなに?」
ニコの両脇を固めている男の一人がプリン頭に問う。
「あ。これ? この女子高生のツレだってさ。使えそうだから、Jさんに見てもらおうと思ってな。天然もんだってよ」
「は? 天然もんなんてその辺にいるわけねえじゃん」
疑わしそうな視線が気に障ったのか、プリン頭はスイの腕をぐい。と、引いて、ソファに座っている男の方に強引に投げ出した。
「うわ」
そのまま、ソファの上のニコと男の間の座面に上半身が引っかかるような形で倒れ込む。
乱暴なやり方に文句を言いたくはなったけれど、ニコに近付けたのは都合がいい。倒れ込んだまま顔を見上げると、ニコはまた泣き出しそうな顔をして小さく、ごめん。と、呟いた。いつもと違ってしおらしいのはともかくとして、酷いことをされた様子はない。遠目で見た通り、怪我もないようだ。
「無茶すんな」
スイの方もぼそり。と、言う。
「追加料金?」
スイの顔を見て少し安心したのかいつも通りの軽口が漏れて、苦笑する。と、同時にスイはぐい。と、髪を掴まれて顔を無理矢理あげさせられた。
「マジか……確かにカラコンじゃねえな」
スイの翠の瞳をじっと覗き込んで、ソファに座っていた男が言った。ニコの無事が確認できた以上、もう、ここにようはない。
だから、スイは髪を掴む男の手を排除するために、背中に差しているナイフに手を伸ばした。
「ニコ!!」
彼女は部屋の中央にあるソファに座らされていた。両脇にはスイを連れてきた男と同じようなダサいスーツの男が座っていて、監視されているようだ。
左右のどちらかが『J』と呼ばれていた男だろうか。
「おろ? Jさんは?」
スイの疑問はプリン頭の言葉で否定された。どうやら、部屋の中にはJはいないらしい。
地下だから当たり前なのだが、窓はない。エレベータがある壁の向かい側には飾り棚がいくつかあって、高級そうなグラスや、食器、ビンテージものと思しき酒が並んでいる。右手の壁には観音開きの豪奢な装飾を施した重そうなドア、左手側の壁は取り外しができるパーテーションのような壁になっていて、おそらくは壁自体が動いて開くような作りになっていた。
背後のエレベータがある壁には端の方に壁と似た色のドアがあって、表示はないのだが事前準備の時に見た平面図を思い出す限りでは非常口と思われる。
「スイちゃん!?」
俯いていたニコが顔をあげて、スイを確認して答えた。その顔は涙で濡れてはいるが、怪我をしている様子はない。ひとまずスイはほっとした。
「そいつなに?」
ニコの両脇を固めている男の一人がプリン頭に問う。
「あ。これ? この女子高生のツレだってさ。使えそうだから、Jさんに見てもらおうと思ってな。天然もんだってよ」
「は? 天然もんなんてその辺にいるわけねえじゃん」
疑わしそうな視線が気に障ったのか、プリン頭はスイの腕をぐい。と、引いて、ソファに座っている男の方に強引に投げ出した。
「うわ」
そのまま、ソファの上のニコと男の間の座面に上半身が引っかかるような形で倒れ込む。
乱暴なやり方に文句を言いたくはなったけれど、ニコに近付けたのは都合がいい。倒れ込んだまま顔を見上げると、ニコはまた泣き出しそうな顔をして小さく、ごめん。と、呟いた。いつもと違ってしおらしいのはともかくとして、酷いことをされた様子はない。遠目で見た通り、怪我もないようだ。
「無茶すんな」
スイの方もぼそり。と、言う。
「追加料金?」
スイの顔を見て少し安心したのかいつも通りの軽口が漏れて、苦笑する。と、同時にスイはぐい。と、髪を掴まれて顔を無理矢理あげさせられた。
「マジか……確かにカラコンじゃねえな」
スイの翠の瞳をじっと覗き込んで、ソファに座っていた男が言った。ニコの無事が確認できた以上、もう、ここにようはない。
だから、スイは髪を掴む男の手を排除するために、背中に差しているナイフに手を伸ばした。
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