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不穏な夜。
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そして、とても嫌だったがレオン兄様に言われた事を無視すればどうなるか分からないからと、震える手を隠しながらもお兄様の部屋に向かいドアをノックする。
ノックの音に、返事はなかった。けれど、それはいつものことだった。
わたしは静かに扉を開ける。重たい音が、心に鉛のようにのしかかる。
部屋の中は、ほの暗くて静まり返っていた。
暖炉の火がちらちらと揺れ、家具の影が黒く伸びている。
「……お兄さま……?」
誰の姿も見えず、思わず後ろを振り返ろうとしたそのとき。
ガチリ、と音を立てて扉が閉まった。
背後から伸びてきた腕が、わたしの手首をつかむ。
「やっと来たな、フィーナ」
耳元で低く囁く声に、息が詰まる。
すぐにわかる、レオン兄様の声。
「その、お兄さま、こんな時間ですし、お話はまた明日では駄目でしょうか……?」
震える声で尋ねても、返ってきたのは乾いた笑いだった。
「夜じゃなきゃダメな事も沢山あるだろう?」
「……っ」
力が入らず、逃げようとしても足がすくむ。
レオンはわたしの腕を引き寄せ、無理やり身体を近づけてきた。
「なあ、フィーナ。お前もさ……そろそろ、わかってるだろ?」
「わたしは……そんな……」
「俺はお前が好きだよ。ずっと前からさ。お前も、俺のこと、嫌いじゃないよな?」
優しいふりをした声が、耳にまとわりついてくる。
――気持ち悪い。
それなのに、わたしの口は「いやです」とすら、言えなかった。
身体がすくんで、喉がひりついて、声が出ない。
レオンの手が、わたしの頬に触れる。逃げようとしても、逃げられない。
そのまま、ソファへと押し倒されかけたその瞬間――
「や、やめてっ……お願い……!」
必死で手を突っぱね、叫んだ。
「うるせぇな、ちょっと触れるくらいで大袈裟だなあ?」
「お願い、やめて……! だれか……!」
喉の奥から絞り出すような声。目から、涙がにじむ。
「そんなに嫌がることかよ? ……俺は、お前の兄だぞ?」
「……っ!!」
言葉にならない叫びが胸の奥からこぼれる。
そのときだった。
――バンッ!!
扉が勢いよく開かれる音がして、鋭い声が飛んだ。
「レオン!! 何をしているの!!」
凍りついた空気の中、レネリアの姿がそこにあった。
夜会服を纏った母が、沈んだ怒りをそのまま体に纏って立っている。
「っ……母さん……違うんだ、これは――」
「“お手つき”にする気だったの? 純潔出なければダメだといくらいったらわかるの!!」
「……っ」
わたしは息を呑む。
“お手つき”? “純潔”? 一体、何のことを言っているの?
母はわたしには一瞥もくれず、淡々とレオンに告げる。
「このままじゃ、契約が成立しなくなるわ。魂が“汚れた”ら、意味がないの。女の子なんて他にもいっぱいいるでしょう…なのにあなたは毎回本当に…」
「……すまない、つい……」
「もう、いいわ。今夜にする」
レネリアの声は冷酷だった。
わたしは言葉の意味をつかめず、ただ呆然と立ち尽くしていた。
「……なにを、するって……?」
震える声で尋ねると、母はやっとわたしの方を見た。
その瞳には、愛情も憐れみも、何もなかった。
「あなたの役目よ、フィーナ。“生まれた意味”を果たしてもらうの」
「……え?」
「レオン。フィーナを、地下へ連れていきなさい」
その瞬間、わたしの世界は――音を立てて、崩れ始めた。
ノックの音に、返事はなかった。けれど、それはいつものことだった。
わたしは静かに扉を開ける。重たい音が、心に鉛のようにのしかかる。
部屋の中は、ほの暗くて静まり返っていた。
暖炉の火がちらちらと揺れ、家具の影が黒く伸びている。
「……お兄さま……?」
誰の姿も見えず、思わず後ろを振り返ろうとしたそのとき。
ガチリ、と音を立てて扉が閉まった。
背後から伸びてきた腕が、わたしの手首をつかむ。
「やっと来たな、フィーナ」
耳元で低く囁く声に、息が詰まる。
すぐにわかる、レオン兄様の声。
「その、お兄さま、こんな時間ですし、お話はまた明日では駄目でしょうか……?」
震える声で尋ねても、返ってきたのは乾いた笑いだった。
「夜じゃなきゃダメな事も沢山あるだろう?」
「……っ」
力が入らず、逃げようとしても足がすくむ。
レオンはわたしの腕を引き寄せ、無理やり身体を近づけてきた。
「なあ、フィーナ。お前もさ……そろそろ、わかってるだろ?」
「わたしは……そんな……」
「俺はお前が好きだよ。ずっと前からさ。お前も、俺のこと、嫌いじゃないよな?」
優しいふりをした声が、耳にまとわりついてくる。
――気持ち悪い。
それなのに、わたしの口は「いやです」とすら、言えなかった。
身体がすくんで、喉がひりついて、声が出ない。
レオンの手が、わたしの頬に触れる。逃げようとしても、逃げられない。
そのまま、ソファへと押し倒されかけたその瞬間――
「や、やめてっ……お願い……!」
必死で手を突っぱね、叫んだ。
「うるせぇな、ちょっと触れるくらいで大袈裟だなあ?」
「お願い、やめて……! だれか……!」
喉の奥から絞り出すような声。目から、涙がにじむ。
「そんなに嫌がることかよ? ……俺は、お前の兄だぞ?」
「……っ!!」
言葉にならない叫びが胸の奥からこぼれる。
そのときだった。
――バンッ!!
扉が勢いよく開かれる音がして、鋭い声が飛んだ。
「レオン!! 何をしているの!!」
凍りついた空気の中、レネリアの姿がそこにあった。
夜会服を纏った母が、沈んだ怒りをそのまま体に纏って立っている。
「っ……母さん……違うんだ、これは――」
「“お手つき”にする気だったの? 純潔出なければダメだといくらいったらわかるの!!」
「……っ」
わたしは息を呑む。
“お手つき”? “純潔”? 一体、何のことを言っているの?
母はわたしには一瞥もくれず、淡々とレオンに告げる。
「このままじゃ、契約が成立しなくなるわ。魂が“汚れた”ら、意味がないの。女の子なんて他にもいっぱいいるでしょう…なのにあなたは毎回本当に…」
「……すまない、つい……」
「もう、いいわ。今夜にする」
レネリアの声は冷酷だった。
わたしは言葉の意味をつかめず、ただ呆然と立ち尽くしていた。
「……なにを、するって……?」
震える声で尋ねると、母はやっとわたしの方を見た。
その瞳には、愛情も憐れみも、何もなかった。
「あなたの役目よ、フィーナ。“生まれた意味”を果たしてもらうの」
「……え?」
「レオン。フィーナを、地下へ連れていきなさい」
その瞬間、わたしの世界は――音を立てて、崩れ始めた。
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