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余韻を残しつつも別れの時。
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ある程度王子様の気を引けたと確信した頃、私は一足先にスザンヌ家の馬車へと戻っていた。
あえて、会話が盛り上がり、そろそろパーティーに戻ってダンスでもどうかと誘われたその瞬間に――
わたしは、わざと悲しげに笑い、「そろそろ帰らねばなりません」と、名残惜しさを残すようにして別れを告げてきた。
(うふふ、これでリオネル王子は間違いなく“動く”)
彼の瞳には、私への興味と名残惜しさが溢れていた。
(彼は、いかにも“自分が何とかしてあげなければ”と思いたがるタイプ。アンナがよく言っていたわ――リオネル王子は生まれついての“王子様気質”だと)
(だからこそ、きっと“調べる”。そう遠くないうちに)
この一年間、名を口にすることすら禁じられていた“わたし”という存在。その不可解さに、彼はようやく疑問を抱いた。
ようやく、火がついたのだ。
そして――
(クラリス)
その名が、胸の奥で静かに揺れる。
(今度こそ、“真実”を引き出す)
あの別れの日。クラリスは、あきらかに迷い、ためらい、それでも、震える声で言った。
――『あなたは捨て子です』
――『政略結婚の“駒”として育てられているのです』
だが、あの時の声は、それだけを知る者の声音ではなかった。
恐れと、哀しみと、覚悟――そして、“慈しみ”があった。
(あのクラリスが、なぜそこまで知っていたのか。偶然などではなかったはず)
(何か、彼女だけが“見てしまった”か、“聞いてしまった”)
幼かった私に伝える術を知らず、あの言葉で包んだのだ。
そして来月、彼女は再び“この家”に来る。
(……王子様。あなたが本当に優秀なら、“クラリス”が知ったことに、あなたの側近も辿り着けるでしょう?)
王子が動き、クラリスが戻ってくる――
今、すべての“駒”が揃いつつある。
「……ディアブロ」
馬車の薄闇の中、小さく名前を呼ぶと、彼はすぐに応えた。
『ああ。ずいぶんと上機嫌じゃねぇか、フィーナ』
「ええ。思った以上に順調すぎて、少し怖いくらい」
『王子様は、おまえに夢中だったな。あの目……もう落ちたも同然だ』
「でも、ただ落ちただけじゃ意味がないの」
わたしは、ゆっくりと瞳を伏せた。
「“私のために動く男”じゃないと」
『心配いらねぇよ。あれは割と優秀そうな魂だからな……おまえの餌食には丁度いい』
私はそっと微笑む。
王子はきっと、真実に辿り着く。
――そして、“あの夜”のようなことを二度と繰り返させないために。
スザンヌ家を、壊させる。
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