あなたの愛はもう要りません。

たろ

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4話

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「そろそろ仕事をしよう」

 机に向かい書類に目を通す。

 私の仕事はほとんど事務仕事。

 書類作成や経理などで重要な決済や侯爵家が行なっている事業にはもちろん関わっていない。

 たくさんの請求書を纏めたり、帳簿をつけたりする。屋敷で妻が行うであろう表の仕事は義母が行い、面倒な裏方が私に回ってくる。

 これだけ大きな屋敷なのでお金の動きも大きい。

 毎日毎日、減ることのないこの仕事。今までは、執事が行なっていたらしい。

「早く終わらせないと寝る時間がなくなっちゃう、それにお腹も空いたし、さっさとやってしまおう」

 結婚して1年も経てば要領も良くなり、それなりに手際良く仕事もこなせる。

 ただ……夕食の時間になっても私は呼んでもらえない。

 ひたすら仕事をし終わったら、使用人たちが食事をする食堂へ行く。


「あ、ビアンカ様!すぐに用意します」

 みんな慣れているので私の顔を見るとすぐに食事の用意をしてくれる。

 侯爵家の豪華な料理が並ぶこともなくみんなと同じ料理。

 でも美味しいのよね。

 大きな鍋でたくさんの野菜を煮込んだクリームスープに大きな釜で焼いたふわふわのパン。

 みんなが私があまりにも痩せていると心配して「奥様たちに出したあまりで申し訳ございません」と言いながらも、お肉の切れ端をステーキにして焼いてくれたりするし、必ず一品はボリュームのあるものをこっそり出してくれる。
 使用人たちはみんなとても優しい。

「美味しい」

 スープをいただきながら幸せ気分に浸っているとメイド長がやってきた。

「ビアンカ様、今日は奥様が少しご機嫌斜めでございます。できるだけ顔を合わせないようにしばらくこちらにいたほうがいいかもししれません」

「わかったわ、ダイガットはまだ帰っていないのかしら?」

「まだお帰りになっていないようです」

「そう……じゃあ、みんなの邪魔になるかもしれないけど、ここにいさせてね?」

 父に無理やり嫁ぐように言われ、二度と屋敷に帰ってくるなと言われて、ここでは地獄の日々⁈なんて思っていたけど、使用人はみんな優しくて温かい。

 メイド長はお母様と変わらない歳のせいか、私自身、彼女を母親のように慕っている。

 紅茶を出して優しく微笑んでくれた。

「待っている間、ゆっくりしてください」

 彼女たちといる時はホッとする時間。

 屋敷の中ではいつも気を張り詰めて過ごさなければいけないのでとてもありがたい。
 


 しばらくのんびりと過ごしているとガチャっと扉を開け、冷たい空気が部屋の中に入ってきた。

 使用人たちは固まった。

 おしゃべりしていたのにシーンとなった。

「………ビアンカ、話がある」

「私は特にないわ」

「ふざけるな、さっさとついて来い」

「ハア……」

 仕方なく席を立ち、彼の後ろについていく。
 使用人たちが心配そうに見送るのを感じて「心配しないで」と肩をすくめ笑ってみせた。
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