あなたの愛はもう要りません。

たろ

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12話

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 ただじっと静かに時間さえ過ぎていけばダイガットと別れ、この国を出ていける。

 そう思っていたのに。

 少しずつ周囲は変化し始めた。



「ビアンカ様、少しよろしいかしら?」

 昼休み、マリアナ達と中庭でのんびりと食後に楽しく話をしていたら、フランソア様が一人でやってきた。
 儚げで寂しそうに佇む。
 なのに私の姿を見てふわりと微笑むその仕草は、私ですら庇護欲をそそりそうになった。

 うーん、すごい、到底私には真似できない。

 男の人達はフランソア様を儚げで美しいと言っているのがなんとなく理解できた。

 そんな儚げな姿に、私はなんと言っていいのかわからない気持ちになった。

 拒否する空気ではない。
 拒否したいけど。
 マリアナは私の手を握り「大丈夫なの?」と心配そうな目を向けてきた。他の友人達は、フランソア様が私になんの用事があって声をかけてきたのか不思議そうだった。

「はい。みんな少し席を外すわ、ごめんね」

 せっかく友達と恋バナで盛り上がっていたところ、水を差すようだったけど、明るく「行ってくる」とフランソア様について行くことにした。

 恋バナはもちろん友人達の話で私自身には語れる恋など一度もない。

 中庭でフランソア様の後ろをついて歩く姿は目立つようでチラチラと他の生徒から見られていた。

 視線には気づかないふりをしながら彼女の後ろを黙ってついて行った。

 連れて行かれたのは裏庭であまり人が来ない場所だった。

「あの何か用事でしょうか?」

 さっさと終わらせたくて最初に口を開いた。

「ビアンカ様、どうしてダイガットを誘惑しようとするの?」

 目を潤ませて悲しそうに問われた。

 え?いきなり何?

「あ、あのぉ……」

「ダイガットが最近貴女をいつも気にしているようなの」

「????」

「ダイガットは、わたくしをずっと守ると約束してくれたの。なのに……貴女がダイガットの屋敷に来てから彼は変わったわ」

 ああ、それは一応『妻』だからでしょう。でもそれは一応で、特に何も……いや、彼は少し変わったかも………

 以前なら私が屋敷に居ても無視していたくせに最近は何かと絡んできたがる。

『食事はしたのか』
 以前の料理を出してもらえるので胃腸共に元気です。ただ、侯爵家の面々との食事が嫌なだけです。緊張するし居た堪れないし、みんなと違う料理は嫌味になってしまうかもしれない。

『勉強でわからないところはないのか』
 これでも一応成績は上位にいるので貴方に教えを乞う必要はありませんが?
 それよりもフランソア様にもう少し勉強をお教えした方が良いのではないかと思うのですが?
 私と離縁した暁には、彼女が未来の侯爵夫人となるのに……あの成績では大変なことになるのでは?
(いやいや、馬鹿にしてはいないのだけど……彼女の成績は下の学年にも知られるほど有名だし……)

『何か欲しいものは?』
 離縁状。そして外国へ行くための旅費と少しの生活費!

 最近は小銭を貯めるべく、学校で友人達に刺繍入りハンカチや小物入れを売ったりして稼いではいるけど、なかなかたいしたお金にはならない。


「ねぇ?話を聞いているの?」

 口を尖らせ不機嫌な顔のフランソア様に「すみません」と謝った。
 つい違うことを考えていて……

「フランソア様とこうしてお話をするのは初めてですよね?私はダイガットと仲良くなりたいなどと思っておりません」
 誘惑なんてとんでもないです!彼が最近絡んでくるので鬱陶しいのに。


「ダイガットはとても優しい人なの。使用人の分際で彼の気を引こうなんて厚かましいわ。わたくしの大切な人なの!ずるいことはしちゃダメよ?ね?」

 ね?って……ずるいって……

「先程から申し上げているのですが、ダイカットとは他人です」

「そんなことわかっているわ。ただ屋敷での二人のことはわからない。何をしているのか分からなくて不安なの。貴女だってをしたことくらいあるでしょう?彼を愛しているの、貴女の存在自体が邪魔でしかないの」

 フランソア様はそう言うと、突然「きゃっ」と言ったと思ったら地面に倒れた。

「なぜ、こんな酷いことをするの?」

 またもや儚げな声で私を見上げ、ガタガタと震え、目には涙が溢れていた。

 え?私、何かしました?

「おい!!」




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