あなたの愛はもう要りません。

たろ

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16話

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 怪我の治療が終わり屋敷の馬車が迎えに来た。

 御者のおじさんのマックスは侯爵家に嫁いでからずっと商使用人?仲間として仲良くしてもらっている。

 彼は私が馬車を使えないことをとても気にかけてくれていた。今、義母が許可を出して馬車に乗れるようになってからはマックスおじさんが私の専属になってくれている。
 みんな他の人たちの専属を希望しているのに、マックスおじさんは自ら義父の専属を降りて私のために馬車を出してくれる。

 他の人たちは私と違い、力も発言力もあるのに、なんの力もない私のために専属になってくれる優しい人。

「酷い怪我ではないですか?」

 手を差し出して馬車に乗る手助けをしてくれた。

 私と同じくらいの孫娘がいるらしく、つい心配になると言っていた。

「……先ほど、ダイガット様をお迎えに来ました……フランソア様も侯爵家の屋敷にお連れしております。暫くお泊まりになるそうです」

 うん?泊まる?なぜ?

「ダイガット様は昔っからフランソア様が泣いて頼ってこられると、つい甘やかされてしまうんです。周りはどう見ても大したことはないと思うんですが………」

 言葉を濁しながらモゴモゴと言いにくそうに教えてくれた。

 うん。なるほど。

 フランソア様の泣き真似にいつも引っかかっている馬鹿なんだ。何回引っかかっても、懲りない男。

 俺は幼馴染を守っている男らしくていい奴なんだ!

 と、自己陶酔しているのかしら?

「私、屋敷に帰らない方がいいかしら?」

 ポツリと呟く。

「とんでもありません!もちろんお連れ致します……ただ……」

「ただ?」

「夕食や朝食をご一緒されるのはいかがなものかと……」

「ダイガットが貴方にそう言えと言ったのかしら?」

「ち、ちがいます!使用人みんなの意見です!心配なんです、その怪我はフランソア様贔屓の令息の仕業なんでしょう?」

「あら?知っているの?」

「お屋敷に学園から連絡を受けております。ビアンカ様の迎えも早めに言ってあげるようにと奥様から頼まれて急いで来ました。ダイガット様とフランソア様はビアンカ様のことは一切話さず、二人の世界に入っておりました」

「二人の世界……『フランソア、大丈夫か?』『ダイガット、痛いわ』の世界?」

「はい、ほぼそれです。フランソア様はダイガット様に抱きかかえられて屋敷に入り客室に通されると、足が痛いことなど忘れて鼻歌を歌いながら歩き回り部屋を物色していたらしいです。
 そしてメイドを何度も呼んでわがまま放題だったらしいです」

「わがまま放題?」

「この紅茶はまずいだとか、たっぷりチョコレートを使ったお菓子を出せだとか、ドレスを用意しろだとか、今夜は大切な客がいるのだから、料理長に言って、特別な料理を用意しろだとかいろいろわがままな注文ばかり言っていたらしいです」

「へぇ、それはそれは、私が顔を出したらまた何か問題を起こして私が犯人にさせられるのかしら?」

「嫌な予感しかしません」

「転ばせたとか怪我させたとか?それ以外のことかしら?」

 マックスおじさんと呆れながら、つい苦笑いをして話を続けた。





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