あなたの愛はもう要りません。

たろ

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25話

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『約束だからな』

『うん』

 ああ、そうだったわ。



 幼い頃、殿下は言った。

『お前が僕の家来になるならずっとそばに置いてやる、俺が守ってやるからな』

『家来って、護られるのではなく護るのではないの?』

 この人、馬鹿じゃないの?

『僕はお前を守ってやる。いいか、だから何か嫌なことがあったら僕に言うんだぞ』

 殿下は幼い頃から周囲に品位があり誠実で公正な態度をとっていると評判の、とても、とても、良い王子だった。

 なのに私といる時の殿下は横柄でわがまま、口が悪く、自分勝手で、私を家来のように扱っていた。

 二面性があり過ぎる!みんなの前では天使で私の前だけは悪魔だった。


『なぜ助けを求めない?』

 お母様が亡くなったのは8歳の時。突然の馬車の事故。

 そしてすぐに新しい母。

『彼女がお前の母親だ。言うことを聞いて良い子でいなさい、わかったな』

 父からの命令は、母の居なくなった悲しみにさらに追い打ちをかけた。

 もうお母様は要らないの?ねぇ、お父様?お母様のことを忘れたの?

 亡くなってからひと月後に再婚したお父様。

 そして気がつけば屋敷からあまり外に出してもらえなくなっていた。

 殿下やバァズ達はもちろんマリアナ達にも会えない日々。

 12歳になり中等部に入ってから再びマリアナ達と再会できた。

 唯一学校だけが私の心許せる場所になった。

 なのに15歳ですぐに政略結婚させられて実家を追い出された。

 背中もまだ痛いけど、太ももに残る古い傷は私にとって忘れ難い痛み。

 鞭は叩かれれば痛いと、体にしっかり教えられたあの辛かった日々。

 お父様が屋敷を空けた日は継母がご機嫌が悪くなる。

 できるだけ息を殺して部屋から出ないように過ごしてはいても、たまに呼び出されて叱られる。

 特に悪いことをした覚えはないけど家庭教師からの報告を受けて
『テストで間違いがあった』
『ダンスでミスをした』
 と、その度に太ももを鞭で叩かれた。

 食欲がなくて料理を残したら『わたくしへの嫌がらせなのかしら?』と鞭で叩かれた。

 何をしても叩かれる。

 だから諦めてきた。諦めれば痛くても我慢できるし。

 唯一諦めなかったのは学校へ通うこと。

 そして大人になって伯爵家から出ていくことだった。

 まさか15歳で結婚させられるなんて思ってもみなかったけど、ダイガットとの結婚はとても幸せだった。

 鞭で叩かれないし、叱られないもの。

 それに夫婦生活なんてものもないので、ダイガットと仲良くする必要もないし、変なことされなくてすむから、わたくしの大切な貞操の危機なんてないし安心して暮らせたもの。

 フランソア様の色々と仕掛けてくるのも適当にかわしてしまえばいいことだしね。

 うん、とりあえず何も殿下に頼ることはない。

 そう考えて殿下に返事をした。

「殿下、私はもう家来ではありませんよ?」

「はああああ?なんだ、その返事?お前は馬鹿か?」

 いや、馬鹿は貴方でしょう?






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