あなたの愛はもう要りません。

たろ

文字の大きさ
27 / 125

27話

しおりを挟む
 殿下達がいなくなってホッとしたのか疲れてそのまままた眠りについた。

 目覚めると王妃様の侍女さんが私の顔をのぞいていた。

「やっと目が覚めた?また熱が出ていたのよ?喉は渇かない?」

「………あっ……」
 声が掠れて出なかったので頷く。

「待っててね」

 優しい声が耳に入ってきた。まだ意識がはっきりせずうとうととしながら侍女さんの話し声に耳を傾けた。

「もうしばらくここで療養になりそうよ。屋敷から何か持ってきてもらえるようにお願いしなくてもいいかしら?」

 そう言いながら水の入ったコップを渡してくれた。

 少しずつ水を飲む。


 屋敷………

 そうだった。

 忘れていた……あまりにも体調が悪く……ううん、ここに居れば嫌なことを忘れられていた。考えないようにしていた。

 何も伝えずここに居るけど、どうなっているのだろう。

 侯爵夫人もダイガットも何も言ってきていないのかしら?

 クーパー侯爵はいつも忙しく、あまり屋敷にいない。
 たくさんの領地を持っているので領地を回ったり、鉱山や工場の経営など、多岐にわたる仕事に精力的に動き回るお方だ。

 私になんて興味はないだろう。
 お父様との事業協力もそれなりに上手くいっているようで、もう私とダイガットの政略結婚も必要ないところまできているはず。

 ダイガットとあと2年もすれば離縁出来ると思っていたけど、もう少し早く離縁出来るかもしれない。
 でも白い結婚で戸籍に傷をつけないで済むのは、3年間何もなく過ごしたことを証明して離縁するのがいちばんではある。

 彼に度々離縁してほしいと伝えているけど、本当は白い結婚を証明する方がお互い何もなかったことになるので、そちらを選ぶべき。

 でも……外国で暮らすなら離婚歴などあっても関係ないのでは?とも思ってしまう。

 でも高等部を卒業してある程度の成績をおさめておくことは、平民になっても仕事に就くには有利だし……

 堪えてあと2年侯爵家で過ごすのと、外国へ行ってしまうのはどちらが正しいのか……フランソア様からすれば目障りなお飾りの妻には早く出て行ってほしいだろうな。

 愛するダイガットとはやく正式に結ばれたいだろうし……ダイガットだって本当は早く私を追い出したいはずだわ。

 だからこそ私が王妃様の宮にいても何の音沙汰もないのだろう。

 まぁ私の顔を見ると不機嫌になって文句と嫌味しか言われないから会いたくもないけど。

 私もつい冷たい態度をとってしまう。あまりにも二人に興味がなさ過ぎて。

 ふふっ、私もつい『離縁してほしい』と口癖のように言うようになってる。

 気にはしていないけど、そんなに私が嫌いなら、さっさと離縁してくれればいいのにと思う。

 愛するフランソア様を悲しませる必要はないもの。

 侍女さんに尋ねた。

「あの……あとどれくらいここにいることになるのでしょう?」

 治れば侯爵家に帰らなければいけない。あそこは自分がいるべき場所ではないけど、居心地の悪い伯爵家に帰るよりはまだ安心して過ごせる。

「先生が背中の傷もひどいし熱も下がらないからもうしばらくかかると言っていたわ」

「そうですか……でも王妃様のお邪魔にならないか心配です」

「王妃様が完全に治るまでここに居るようにと言われたのよ?あなたに害をなす者たちを近づけないように言われているの。
 ………先ほど殿下が来られたのでしょう?
 あのお方は害はないと思いますがもうあんなふうに突然来ることはないと思います。王妃様がしっかり叱っておられましたから」

「殿下が叱られたのですか?」

 もう18歳の殿下が叱られている姿を想像するとなんだか笑ってしまう。

 幼い頃、よく二人で悪さをしてはお母様と王妃様に叱られたことを思い出した。

 ここに居ると懐かしい楽しかった思い出をたくさん思い出す。

 心がふわっと温かくなるのを感じた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

愛なんか消えてしまえと願う私は悪くないと思う

ましろ
恋愛
「赤ちゃんができたの」 母の言葉に目眩がした。 我が家の両親は恋愛結婚。身分差から駆け落ち同然で一緒になった二人は未だにその愛は消えず、燃え上がり続けているのだからある意味凄いわ。 でもね? どうしてそんなにも子どもを作ってしまうの⁉ 私を入れて子どもは七人。お父さんの給料ではお手伝いさんなんか雇えるわけもなく、おっとりしたお嬢様気質の抜けないお母さんだけで家事育児などできるはずもなく。 そうなると働き手は長女の私だ。 ずっと小さな頃から弟妹のお世話と家事に明け暮れ、それなのにまだ産むと言うの? 「……ねえ、お母さんにとって子どもって何?」 「うふふ。それはね、愛の結晶よ」 愛。愛って何? 私はあなたの愛のために働き詰めなのですけど? 自分達の手に余るなら、そんなモノなど捨ててしまえっ! ❦R-15は保険です。 連載中のものが止まったままのくせに!とは言わないで(泣) 現在、作業中のものがなかなか終わらなくて息抜きのための不定期連載です。

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

誓いを忘れた騎士へ ―私は誰かの花嫁になる

吉乃
恋愛
「帰ってきたら、結婚してくれる?」 ――あの日の誓いを胸に、私は待ち続けた。 最初の三年間は幸せだった。 けれど、騎士の務めに赴いた彼は、やがて音信不通となり―― 気づけば七年の歳月が流れていた。 二十七歳になった私は、もう結婚をしなければならない。 未来を選ぶ年齢。 だから、別の男性との婚姻を受け入れると決めたのに……。 結婚式を目前にした夜。 失われたはずの声が、突然私の心を打ち砕く。 「……リリアナ。迎えに来た」 七年の沈黙を破って現れた騎士。 赦せるのか、それとも拒むのか。 揺れる心が最後に選ぶのは―― かつての誓いか、それとも新しい愛か。 お知らせ ※すみません、PCの不調で更新が出来なくなってしまいました。 直り次第すぐに更新を再開しますので、少しだけお待ちいただければ幸いです。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

【完結】純白のウェディングドレスは二度赤く染まる

春野オカリナ
恋愛
 初夏の日差しが強くなる頃、王都の書店では、ある一冊の本がずらりと並んでいた。  それは、半年前の雪の降る寒い季節に死刑となった一人の囚人の手記を本にまとめたものだった。  囚人の名は『イエニー・フラウ』  彼女は稀代の悪女として知らぬ者のいない程、有名になっていた。  その彼女の手記とあって、本は飛ぶように売れたのだ。  しかし、その内容はとても悪女のものではなかった。  人々は彼女に同情し、彼女が鉄槌を下した夫とその愛人こそが裁きを受けるべきだったと憤りを感じていた。  その手記の内容とは…

始まりはよくある婚約破棄のように

喜楽直人
恋愛
「ミリア・ファネス公爵令嬢! 婚約者として10年も長きに渡り傍にいたが、もう我慢ならない! 父上に何度も相談した。母上からも考え直せと言われた。しかし、僕はもう決めたんだ。ミリア、キミとの婚約は今日で終わりだ!」 学園の卒業パーティで、第二王子がその婚約者の名前を呼んで叫び、周囲は固唾を呑んでその成り行きを見守った。 ポンコツ王子から一方的な溺愛を受ける真面目令嬢が涙目になりながらも立ち向い、けれども少しずつ絆されていくお話。 第一章「婚約者編」 第二章「お見合い編(過去)」 第三章「結婚編」 第四章「出産・育児編」 第五章「ミリアの知らないオレファンの過去編」連載開始

ガネット・フォルンは愛されたい

アズやっこ
恋愛
私はガネット・フォルンと申します。 子供も産めない役立たずの私は愛しておりました元旦那様の嫁を他の方へお譲りし、友との約束の為、辺境へ侍女としてやって参りました。 元旦那様と離縁し、傷物になった私が一人で生きていく為には侍女になるしかありませんでした。 それでも時々思うのです。私も愛されたかったと。私だけを愛してくれる男性が現れる事を夢に見るのです。 私も誰かに一途に愛されたかった。 ❈ 旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。の作品のガネットの話です。 ❈ ガネットにも幸せを…と、作者の自己満足作品です。

処理中です...