あなたの愛はもう要りません。

たろ

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27話

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 殿下達がいなくなってホッとしたのか疲れてそのまままた眠りについた。

 目覚めると王妃様の侍女さんが私の顔をのぞいていた。

「やっと目が覚めた?また熱が出ていたのよ?喉は渇かない?」

「………あっ……」
 声が掠れて出なかったので頷く。

「待っててね」

 優しい声が耳に入ってきた。まだ意識がはっきりせずうとうととしながら侍女さんの話し声に耳を傾けた。

「もうしばらくここで療養になりそうよ。屋敷から何か持ってきてもらえるようにお願いしなくてもいいかしら?」

 そう言いながら水の入ったコップを渡してくれた。

 少しずつ水を飲む。


 屋敷………

 そうだった。

 忘れていた……あまりにも体調が悪く……ううん、ここに居れば嫌なことを忘れられていた。考えないようにしていた。

 何も伝えずここに居るけど、どうなっているのだろう。

 侯爵夫人もダイガットも何も言ってきていないのかしら?

 クーパー侯爵はいつも忙しく、あまり屋敷にいない。
 たくさんの領地を持っているので領地を回ったり、鉱山や工場の経営など、多岐にわたる仕事に精力的に動き回るお方だ。

 私になんて興味はないだろう。
 お父様との事業協力もそれなりに上手くいっているようで、もう私とダイガットの政略結婚も必要ないところまできているはず。

 ダイガットとあと2年もすれば離縁出来ると思っていたけど、もう少し早く離縁出来るかもしれない。
 でも白い結婚で戸籍に傷をつけないで済むのは、3年間何もなく過ごしたことを証明して離縁するのがいちばんではある。

 彼に度々離縁してほしいと伝えているけど、本当は白い結婚を証明する方がお互い何もなかったことになるので、そちらを選ぶべき。

 でも……外国で暮らすなら離婚歴などあっても関係ないのでは?とも思ってしまう。

 でも高等部を卒業してある程度の成績をおさめておくことは、平民になっても仕事に就くには有利だし……

 堪えてあと2年侯爵家で過ごすのと、外国へ行ってしまうのはどちらが正しいのか……フランソア様からすれば目障りなお飾りの妻には早く出て行ってほしいだろうな。

 愛するダイガットとはやく正式に結ばれたいだろうし……ダイガットだって本当は早く私を追い出したいはずだわ。

 だからこそ私が王妃様の宮にいても何の音沙汰もないのだろう。

 まぁ私の顔を見ると不機嫌になって文句と嫌味しか言われないから会いたくもないけど。

 私もつい冷たい態度をとってしまう。あまりにも二人に興味がなさ過ぎて。

 ふふっ、私もつい『離縁してほしい』と口癖のように言うようになってる。

 気にはしていないけど、そんなに私が嫌いなら、さっさと離縁してくれればいいのにと思う。

 愛するフランソア様を悲しませる必要はないもの。

 侍女さんに尋ねた。

「あの……あとどれくらいここにいることになるのでしょう?」

 治れば侯爵家に帰らなければいけない。あそこは自分がいるべき場所ではないけど、居心地の悪い伯爵家に帰るよりはまだ安心して過ごせる。

「先生が背中の傷もひどいし熱も下がらないからもうしばらくかかると言っていたわ」

「そうですか……でも王妃様のお邪魔にならないか心配です」

「王妃様が完全に治るまでここに居るようにと言われたのよ?あなたに害をなす者たちを近づけないように言われているの。
 ………先ほど殿下が来られたのでしょう?
 あのお方は害はないと思いますがもうあんなふうに突然来ることはないと思います。王妃様がしっかり叱っておられましたから」

「殿下が叱られたのですか?」

 もう18歳の殿下が叱られている姿を想像するとなんだか笑ってしまう。

 幼い頃、よく二人で悪さをしてはお母様と王妃様に叱られたことを思い出した。

 ここに居ると懐かしい楽しかった思い出をたくさん思い出す。

 心がふわっと温かくなるのを感じた。

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