あなたの愛はもう要りません。

たろ

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31話

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「なんなんだ……お前…………」

 ダイガットはなぜか傷付いた顔をした。

 え?先に私に強く言ったのは自分なのに?

「俺は………何かあったかと思って心配したんだ……母上はどこに行ったか聞いても教えてくれないし……」

 しょんぼりしているダイガットなんて初めて見たかもしれない。いつも私に対しては横柄だし優しさのかけらもない。

 今だっていきなりひどい言葉をかけてきたし、乱暴だった。

 でも彼の様子をおかしいと思っても、心は不思議になにも感じない。

「ダイガット、私がこの王宮に居るのにはきちんと理由があります」

 継母に鞭で打たれ王妃様に助けられ寝込んでしまったことを彼は知らないのね。

「理由?」

「ええ」

「は?理由?なぜ俺だけ知らない?君がいないと知ったのは数日前だった。気づかなければ誰もなにも伝えてくれなかった、なぜなんだ?」

 ????
 それって私を責めるべきことなのかしら?
 私の姿が見えないと気がつくのも遅くない?最近は共に食事もしていたはずだし、いくら会話がなくても同じ屋敷で暮らしていたのよ?

 それに学校でもすれ違うことだって度々、いやしつこいくらいあったわよね?いつも避けていたのに、学年も違うのに、誰かさんのおかげで!

 私が黙っていると、ダイガットの横で殿下が肩をポンっと叩くのが見えた。

「ダイガット、ここは王妃宮の庭園だ。あまり騒ぐことは好ましくない。理由が知りたければ侯爵夫人にもう一度頭を下げて聞くべきではないか?ビアンカ嬢の顔色も優れないし、ここは立ち去るべきだ」

 ふと周囲を見回すと誰もいない庭園のはずなのに、殿下の護衛達があちらこちらに散らばっているのがわかる。

 彼らは特に表情を変えているわけではないけど、ダイガットが一人で怒る姿を見ていた。

 もちろん守秘義務があるのでこの場の内容を口にすることはないけど、やはり人の目は気になるし、王妃様の耳に入るのは確実。

 殿下の幼馴染で卒業後、殿下の側近になることが決まっているダイガットの醜聞は殿下にとってもあまりいいものでもないし、殿下は私にチラッと目を向けて「すまなかった」と口だけ動かして謝るとまだ不満そうな顔をしたダイガットの腕を掴み去って行った。

 そろそろ屋敷へ戻らないといけない私……考えてしまう……帰ることはとても気が重い。

 せっかく美しい薔薇の庭園、青い空の下「はああ」とため息が溢れた。

 ベンチに座ったまましばらくぼうっと座り込んでいた。

「ハックション!」

 肌寒くなってきた。

 部屋に帰ろう。
 仕方なくベンチから立つと、殿下のせいで叱られた、あの花が咲いているのに気がついた。

『青い薔薇』

 幼い頃はただ青い花が綺麗で、殿下から『この花一本やるよ』と言われて素直に喜んだ。

 そういえばあの時、私が綺麗な花に夢中で見ていたので殿下が摘んでプレゼントしてくれたんだったな。

 叱られそうになって私のせいにしたけど。

 近くでその薔薇を見ていると「その花が欲しいのか?」と後ろから声が聞こえた。

「殿下?」

 振り返ると困った顔をした殿下が私の肩越しから青い薔薇を覗いていた。

「懐かしいな」

 ええ、とても。叱られたこと覚えてます?

 思わず訊いてみたくなった。







 








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